平成寄宿舎ものがたり

藤沢 南

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い号の先輩

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  寄宿舎は、一女の校舎の隅に立っていた。木造3階建の古臭い建物だった。
「新入生は、1階の部屋。たまたま空いているからね。」

1階は寒いが、仕方がない。今は両隣の部屋を空き部屋にするという配置になっており、木造だがそれほど音は響かないとの事。1970年代は入舎希望者のピークで、2人相部屋でしかも空き部屋はなかったから、騒音のトラブルは多かったらしい。

「もし、上の階が良かったら、2年生や3年生がいなくなったら、その部屋に移りなさい。引っ越しが面倒なら、3年間同じ部屋に住むというのもいいわね。でも、時々だけど、卒業以外の退宿生もいるから。とにかく、どんな形でも空き部屋ができれば、移ることもできるから。」

「今年はいなかったけど、2年生や3年生になってから寄宿舎に入ろうという生徒もたまにいるの。その子たちは、寄宿舎内では、前から入っていた下級生より後輩にあたるから、その辺は学校と異なるところかしら。」

  大石先生は、寄宿舎内を案内しながら、思いつく事を片っ端から喋っていたようだった。その間に、寄宿舎生とすれ違った。
「あ、大石先生。その子たちは。」
「新一年生よ。仲良くしてあげてね。」
「はーい。」
ポニーテールが似合う、快活な感じの女の子だった。

「一年生?私、寄宿舎3階い号の三浦真知子みうらまちこ。2年生。よろしくね。」
「はい、1年の元倉です。」「同じく相田です。」
「元倉さんに相田さん?大石先生の話が終わったら、大広間においで。みんなに紹介するから。」
『はい。』
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