平成寄宿舎ものがたり

藤沢 南

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元倉家の子ども達

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   うちの家族、元倉もとくら家は1人の親に5人の子供がいる。元々は父親もいたので7人家族だったのだが、父が31歳の時に交通事故で亡くなり、残された5人の子を母親が女手一つで育てている。そんな家族で育った兄貴と姉貴は、中卒後、家を出て、独り立ちを始めた。5人兄妹きょうだいの真ん中の私も、当然そのしっかりした兄姉の背中を見て育った。中学卒業後、就職に役立つ勉強ができる学校を探した。そして家を出て手に職をつけようと考えていた。しかし、兄貴は反対した。
「尚美は勉強ができるんだから、お前はまともな道を進め。」
私に言わせれば兄貴こそまともな道を進んでいる。兄貴の見つけてきた専門学校は、3年で卒業すれば、高校卒業資格に加えて、専門学校の設立主である大手自動車会社の正社員の資格ももらえるのだ。しかも専門学校は全寮制でお金がほとんどかからない。それに加え、毎月給料までもらえるのだ。そんなシステムの学校があるのが驚きだった。以上のように学生にとって至れり尽くせりだが、いい事ばかりではない。寮生活は5人相部屋で3年間過ごすのと、専門学校では勉強と運動で徹底的にしごかれるらしい。兄貴はそのスパルタ教育に耐えて、ついに3年目に入った。最終学年となり、いろいろ寮生活や学校内での責任も大きいようだ。家族としてのひいき目もあるかもしれないが、私にとっては尊敬すべき自慢の兄貴だ。兄貴からの仕送りが母に毎月送られていることは私も知っていたが、母は
「もったいなくて使えないよ。一大事の時に備えて貯金している。」
と私に語った。私も、そのお金を滑り止めの私立高校受験の受験料に使わせてくれとは言えず、高校は川越第一女子だけしか受けなかった。もし一女いちじょ(川越第一女子高校の略称:以後、この略称表記と併用する)に落ちたら、家から近くて交通費のかからない公立高校の2次募集、もしくは定時制高校に申し込むつもりだった。
そんな背水の陣で挑んだ高校受験。私は兄、姉、母の期待を追い風にして、この埼玉県の名門校に合格した。
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