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ハレルヤの響き
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「ハーレルヤ、ハーレルヤ、ハレルヤ、ハレィルヤ…」
入学式、体育館の中に鳴り響く新入生歓迎のハレルヤコーラスに、この高校の一員となった喜びを感じた。私ぐらいだろう、この学校の寄宿舎に憧れて川越第一女子高校に入ったのは。私の周りを見ても、みんな良家の聡明なお嬢さんたちで、私の家のように口減らしで娘を寄宿舎に入れようとする家はないはずだ。
もともと、うちの家はお金に余裕はない。2つ年上の兄貴は、中卒後愛知県の自動車会社の専門学校で寮生活を送りながら働いている。勉強が好きになれず、でも生きていくために手に職をつけるべく、愛知県の大手自動車会社直営の専門学校に入った。兄貴の専門学校は寮生活が義務付けられていて、5人一部屋で寝食を共にする。結構大変なようだったが、もともと人間というものが好きな兄貴はそれほど悩みもなく楽しく暮らしているようである。
1つ年上の姉貴は、少しは勉強を頑張れるようで、中卒後全寮制の看護学校に入った。卒業すると准看護師の資格が取れるそうだ。その後3年間働けば、看護学校の学費を返済する義務がなくなるということである。兄も姉も、なかなかしっかりしていると思う。私は中3の時に、自分の進路を兄と姉に電話で相談した。上2人の兄姉に比べて中学の勉強の成績がいい私は、兄にも姉にも普通の高校に入ることを勧められた。もっと勉強をしたかったら大学を目指してもいいし、あるいは高卒で大きな会社か、公務員試験を受けてみたら、とアドバイスをもらった。
「でも、私も、兄貴や姉貴みたいに自分の力を信じて頑張ってみる。」
こうして、元倉家3番目の子である私も、中学卒業後、名門高校の寄宿舎に入舎し、家を出る事となった。確かに上2人の兄姉に比べると、一般的な普通の高校生になれた気がする。私の高校での肩書きは、川越第一女子高校普通科1年生かつ寄宿舎生という珍妙な肩書きになった。
「尚美は、俺たちの自慢の妹だな。」
「今のところはそうね。ただ、これから道を外したらタダじゃおかないからね。」
川越第一女子に受かった後、愛知に住む兄と、神奈川に住む姉が家に帰ってきて、お祝いをくれた。兄貴が4万、姉貴が1万出してくれた。彼らにとっても慎ましい生活の中、本当にうれしかった。
「これで、元倉家の子どもはあと2人か。巣立つ時まで、母さんを大事にするんだぞ。」
兄貴は、弟と妹の頭を撫でた。小さな手にお小遣いを握らせて、兄貴は愛知に帰っていった。
入学式、体育館の中に鳴り響く新入生歓迎のハレルヤコーラスに、この高校の一員となった喜びを感じた。私ぐらいだろう、この学校の寄宿舎に憧れて川越第一女子高校に入ったのは。私の周りを見ても、みんな良家の聡明なお嬢さんたちで、私の家のように口減らしで娘を寄宿舎に入れようとする家はないはずだ。
もともと、うちの家はお金に余裕はない。2つ年上の兄貴は、中卒後愛知県の自動車会社の専門学校で寮生活を送りながら働いている。勉強が好きになれず、でも生きていくために手に職をつけるべく、愛知県の大手自動車会社直営の専門学校に入った。兄貴の専門学校は寮生活が義務付けられていて、5人一部屋で寝食を共にする。結構大変なようだったが、もともと人間というものが好きな兄貴はそれほど悩みもなく楽しく暮らしているようである。
1つ年上の姉貴は、少しは勉強を頑張れるようで、中卒後全寮制の看護学校に入った。卒業すると准看護師の資格が取れるそうだ。その後3年間働けば、看護学校の学費を返済する義務がなくなるということである。兄も姉も、なかなかしっかりしていると思う。私は中3の時に、自分の進路を兄と姉に電話で相談した。上2人の兄姉に比べて中学の勉強の成績がいい私は、兄にも姉にも普通の高校に入ることを勧められた。もっと勉強をしたかったら大学を目指してもいいし、あるいは高卒で大きな会社か、公務員試験を受けてみたら、とアドバイスをもらった。
「でも、私も、兄貴や姉貴みたいに自分の力を信じて頑張ってみる。」
こうして、元倉家3番目の子である私も、中学卒業後、名門高校の寄宿舎に入舎し、家を出る事となった。確かに上2人の兄姉に比べると、一般的な普通の高校生になれた気がする。私の高校での肩書きは、川越第一女子高校普通科1年生かつ寄宿舎生という珍妙な肩書きになった。
「尚美は、俺たちの自慢の妹だな。」
「今のところはそうね。ただ、これから道を外したらタダじゃおかないからね。」
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「これで、元倉家の子どもはあと2人か。巣立つ時まで、母さんを大事にするんだぞ。」
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