108 / 111
1987年3月24日金曜 終業式 その9
しおりを挟む 僕達は帝都に戻って直ぐに皇后の部屋に案内された。すんなり案内されたのは勇者であるアルバートのお陰だろう。勇者の特権を受けられるのは有り難い。僕は宰相に喧嘩を売った反逆者みたいなものだからね。
ベットで寝ている女性が皇后か? 国政が忙しいので皇帝も宰相も不在……まぁ、僕にとっては都合が良いのだけど。だけど、付き添っているのがアリシア姫だけなのは少し悲しいな。アリシア姫が僕に向かって真剣な眼差しを向けてくる。言わなくても分かっているさ、キャプテン・ヴァージャスの名に於いて約束したからな。
「リアン!」
僕は契約した光の精霊リアンを呼び出す。10cm程度の身長の光の翼を生やした女性が僕の胸前に現れる。リアンは出会った時とは異なり、小柄な精霊には不釣り合いなプレートメイルを着ている。僕が好みの服を全く言わないので、一緒にいるクロエの騎士姿が僕の好みだって勝手に思いこんだせいなのだけどね。
「伝説の戦乙女みたいですねっ!」
アリシア姫が興奮して叫ぶ。姫は素直で良いな……クロエには鎧フェチってからかわれたからね。
僕が好きなのは鎧じゃないのに……って余計な事を考えている場合ではない。
皇后にかけられた呪いを解くにはどうすればよい? 光の精霊の力を使うといっても僕は魔法使いではない。リアンが持つ光の力を使いこなすイメージを想像する。
思い出したのは、ガルファダ王国で目にした圧倒的な命の光ーー邪悪な目的に使われた生命活性魔法『アクティベーション・グリッター』
それは仲間であったヨーゼフの死の原因となった悲しい思い出の魔法である。だが、生命を活性させる偉大な癒しの力である事には違いはなかった。僕は思い浮かべる。
ヴェロニカさんが放った生命の輝きを……
ヨーゼフが自らの命を光と変えた姿を……
それと頼むよヴァージャス!
僕が胸前で拳を合わせモスト・マスキュラーのポーズをとると同時に筋肉が爆発的にバルクアップする。
そして、リアンが僕めがけて飛び込み大胸筋に溶け込む。リアンの光の力が全身に行き渡り筋肉がテカリ始める。
あの日見た生命の光の様に……輝けっ! 僕の命よ!
『マッスル・グリッター!!』
僕の筋肉が放つ緑の光が皇后の部屋を満たす。
呪いなど一片の欠片も残さない様に全てを塗りつぶせっ! 筋肉の輝きよ!
これで皇后の呪いは解けただろうか?僕は解呪の成果を確認する為に、呪いについて詳しそうなアルバートに視線を送る。
「何をしているんだいケン?」
予想外の返答をするアルバート。えっ、何って何だろう? いやっ確かに解呪って感じに見えないポーズなのは分かるけど……呪いが解けたかどうかは分かるよね普通は?
「何って、皇后の呪いを解こうとしただけですけど……」
アルバートの不思議そうな顔を見ていると、段々自信がなくなってくる。依頼内容は皇后の呪いを解くであってるよな?
「ケン、光の精霊を捕まえるのが依頼だよ。わざわざ光らなくても良いのに」
えっ、まさかアルバートは依頼内容を理解していない? 念のために確認してみるか。
「依頼内容は光の精霊の力で皇后にかけられた呪いを解く事ですよね?」
「なんだ、そんな依頼だったのか。光の精霊を捕まえて欲しいしか聞いてなかったよ。呪いを解くだけなら僕の聖剣ウィッシュ・グランターでも出来る事だよ。ストレートに呪いを解いてって言ってくれれば良かったのに」
なんだよソレ。あんまりじゃないか! ショウはため息をついているし、クロエは腹を抱えて笑っているじゃないか。
「全く意味がなかったじゃないか! アルバートは天然すぎるよ!」
「ははっ、意味はあるよ。ケンがパワーアップしたじゃないか。それに可愛い奥さんも出来たしね」
いやいやっ、確かに色々な意味でパワーアップしたけどね。それに奥さんは余計だよ……伴侶とか言ってたのはリアンの精霊ジョークだよ……きっと。はぁっ、張り切って筋肉テカらせた僕の身にもなってくれ。
「お母様っ!」
声の方向を見るとアリシア姫が皇后に飛びついていた。アルバートと残念な会話をしている間に皇后が目を覚ましたようだ。どうやら僕の筋肉のテカリで呪いが解けたみたいだな。格好悪いけど目的が果たせたなら問題ない。
「呪いが解けても直ぐに体力が回復する訳ではないわ。休ませてあげましょうね」
クロエの提案を聞いてアリシア姫が皇后から離れる。そして……
「凄いですケン様!!」
アリシア姫が僕に飛びつく。まったく……誰構わず飛びつくとはね。皇后にも飛びついてたし、アリシア姫の性格なんだろうけど、男の僕に飛びついたら勘違いされるよ。
「あらっ、ケンが浮気してる!」
「何よこの女っ! 気安く近づかないでっ!」
ほらっ、クロエとリアンが面倒な事を言い始めているじゃないか。まぁ仕方がないかな。母親が呪われて、ずっと不安な思いをしていたのだ。不安を払拭するのもスーパーヒーローの役目さ。だからアリシア姫を片手で抱き抱えて高らかに宣言する。
「もう大丈夫だ! キャプテン・ヴァージャスがここにいる!」
僕は空いた手で自身の大胸筋を指す。
胸にはヴァージャススーツの黄色いVとJの文字が誇らしげに輝いていた。
ベットで寝ている女性が皇后か? 国政が忙しいので皇帝も宰相も不在……まぁ、僕にとっては都合が良いのだけど。だけど、付き添っているのがアリシア姫だけなのは少し悲しいな。アリシア姫が僕に向かって真剣な眼差しを向けてくる。言わなくても分かっているさ、キャプテン・ヴァージャスの名に於いて約束したからな。
「リアン!」
僕は契約した光の精霊リアンを呼び出す。10cm程度の身長の光の翼を生やした女性が僕の胸前に現れる。リアンは出会った時とは異なり、小柄な精霊には不釣り合いなプレートメイルを着ている。僕が好みの服を全く言わないので、一緒にいるクロエの騎士姿が僕の好みだって勝手に思いこんだせいなのだけどね。
「伝説の戦乙女みたいですねっ!」
アリシア姫が興奮して叫ぶ。姫は素直で良いな……クロエには鎧フェチってからかわれたからね。
僕が好きなのは鎧じゃないのに……って余計な事を考えている場合ではない。
皇后にかけられた呪いを解くにはどうすればよい? 光の精霊の力を使うといっても僕は魔法使いではない。リアンが持つ光の力を使いこなすイメージを想像する。
思い出したのは、ガルファダ王国で目にした圧倒的な命の光ーー邪悪な目的に使われた生命活性魔法『アクティベーション・グリッター』
それは仲間であったヨーゼフの死の原因となった悲しい思い出の魔法である。だが、生命を活性させる偉大な癒しの力である事には違いはなかった。僕は思い浮かべる。
ヴェロニカさんが放った生命の輝きを……
ヨーゼフが自らの命を光と変えた姿を……
それと頼むよヴァージャス!
僕が胸前で拳を合わせモスト・マスキュラーのポーズをとると同時に筋肉が爆発的にバルクアップする。
そして、リアンが僕めがけて飛び込み大胸筋に溶け込む。リアンの光の力が全身に行き渡り筋肉がテカリ始める。
あの日見た生命の光の様に……輝けっ! 僕の命よ!
『マッスル・グリッター!!』
僕の筋肉が放つ緑の光が皇后の部屋を満たす。
呪いなど一片の欠片も残さない様に全てを塗りつぶせっ! 筋肉の輝きよ!
これで皇后の呪いは解けただろうか?僕は解呪の成果を確認する為に、呪いについて詳しそうなアルバートに視線を送る。
「何をしているんだいケン?」
予想外の返答をするアルバート。えっ、何って何だろう? いやっ確かに解呪って感じに見えないポーズなのは分かるけど……呪いが解けたかどうかは分かるよね普通は?
「何って、皇后の呪いを解こうとしただけですけど……」
アルバートの不思議そうな顔を見ていると、段々自信がなくなってくる。依頼内容は皇后の呪いを解くであってるよな?
「ケン、光の精霊を捕まえるのが依頼だよ。わざわざ光らなくても良いのに」
えっ、まさかアルバートは依頼内容を理解していない? 念のために確認してみるか。
「依頼内容は光の精霊の力で皇后にかけられた呪いを解く事ですよね?」
「なんだ、そんな依頼だったのか。光の精霊を捕まえて欲しいしか聞いてなかったよ。呪いを解くだけなら僕の聖剣ウィッシュ・グランターでも出来る事だよ。ストレートに呪いを解いてって言ってくれれば良かったのに」
なんだよソレ。あんまりじゃないか! ショウはため息をついているし、クロエは腹を抱えて笑っているじゃないか。
「全く意味がなかったじゃないか! アルバートは天然すぎるよ!」
「ははっ、意味はあるよ。ケンがパワーアップしたじゃないか。それに可愛い奥さんも出来たしね」
いやいやっ、確かに色々な意味でパワーアップしたけどね。それに奥さんは余計だよ……伴侶とか言ってたのはリアンの精霊ジョークだよ……きっと。はぁっ、張り切って筋肉テカらせた僕の身にもなってくれ。
「お母様っ!」
声の方向を見るとアリシア姫が皇后に飛びついていた。アルバートと残念な会話をしている間に皇后が目を覚ましたようだ。どうやら僕の筋肉のテカリで呪いが解けたみたいだな。格好悪いけど目的が果たせたなら問題ない。
「呪いが解けても直ぐに体力が回復する訳ではないわ。休ませてあげましょうね」
クロエの提案を聞いてアリシア姫が皇后から離れる。そして……
「凄いですケン様!!」
アリシア姫が僕に飛びつく。まったく……誰構わず飛びつくとはね。皇后にも飛びついてたし、アリシア姫の性格なんだろうけど、男の僕に飛びついたら勘違いされるよ。
「あらっ、ケンが浮気してる!」
「何よこの女っ! 気安く近づかないでっ!」
ほらっ、クロエとリアンが面倒な事を言い始めているじゃないか。まぁ仕方がないかな。母親が呪われて、ずっと不安な思いをしていたのだ。不安を払拭するのもスーパーヒーローの役目さ。だからアリシア姫を片手で抱き抱えて高らかに宣言する。
「もう大丈夫だ! キャプテン・ヴァージャスがここにいる!」
僕は空いた手で自身の大胸筋を指す。
胸にはヴァージャススーツの黄色いVとJの文字が誇らしげに輝いていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる