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告白
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「それから転校の話は、うちのお父さんとお母さんが、話をしていたのを、私、たまたま寝室で聞いてしまったの。」
『となりの係の、津山くんの転勤が決まった。』『あら、じゃ、あの事の御礼をあらためてさせてもらった方がいいんじゃないですか。津山さんの息子さんは、侑子の同級生ですし』『まぁ、昔の話だから、先方も戸惑われるのではないかな』『じゃ、侑子に、息子さんへ、何か渡してもらえば』『侑子も難しい年頃だ。もし、津山君の息子さんと仲が悪かったらどうする?』『そうですねぇ』『俺から、津山くんを通して、息子さん宛になんか贈ろう。津山くんは隣の係だから。』『それなら悪くないですね』
とある日の寝付けない夜、布団の中で、満川侑子は、隣の部屋から聞こえる父と母の会話を震えながら聞いていた。津山くんが、転校する…
来年も同じクラスで、図書委員会が出来ると思っていたのに。修学旅行だって同じ班になれるかもしれない。スイミングで津山くんは、7級になったらしい。もう少し頑張って5級になれば、私と同じクラスで泳げるのに。とはいえ、2学期に入ってからはほとんど話をしていない。1組で、津山くんが私の事を好きだといううわさは流れていたけど、なんとなく消えたし。今は昔のように、中井さんや星野さんといつもしゃべっている。本当にあの4年3組トリオは、仲が良いな。
…まぁ、このまま3月の終業式が来てしまっても、「去年は図書委員会で、仲良くしてくれた男の子がいたなー。」ぐらいで忘れてしまうのかもしれない。満川侑子は、この時はそういう気持ちになるのかどうか分からなかった。ただ、私は、津山くんの転校を知ってしまった。
…なんで私ばかり、津山くんの秘密をいちいち知ってしまうのだろう。新聞配達のことといい。でも、今回の転校の話はもっと強烈だった。転勤族の社宅暮らしの子にとっては、ものすごく重大な事だ。ある意味、彼が第三小学校からいなくなるという事より、自分だけがこの事を知っているという事の方が怖かった。満川侑子は、この震えはそこからくる事だと気づいた。
『機会を見つけて、津山くん本人に、聞いてみよう。中井さんはもう知っているのかな。』
『となりの係の、津山くんの転勤が決まった。』『あら、じゃ、あの事の御礼をあらためてさせてもらった方がいいんじゃないですか。津山さんの息子さんは、侑子の同級生ですし』『まぁ、昔の話だから、先方も戸惑われるのではないかな』『じゃ、侑子に、息子さんへ、何か渡してもらえば』『侑子も難しい年頃だ。もし、津山君の息子さんと仲が悪かったらどうする?』『そうですねぇ』『俺から、津山くんを通して、息子さん宛になんか贈ろう。津山くんは隣の係だから。』『それなら悪くないですね』
とある日の寝付けない夜、布団の中で、満川侑子は、隣の部屋から聞こえる父と母の会話を震えながら聞いていた。津山くんが、転校する…
来年も同じクラスで、図書委員会が出来ると思っていたのに。修学旅行だって同じ班になれるかもしれない。スイミングで津山くんは、7級になったらしい。もう少し頑張って5級になれば、私と同じクラスで泳げるのに。とはいえ、2学期に入ってからはほとんど話をしていない。1組で、津山くんが私の事を好きだといううわさは流れていたけど、なんとなく消えたし。今は昔のように、中井さんや星野さんといつもしゃべっている。本当にあの4年3組トリオは、仲が良いな。
…まぁ、このまま3月の終業式が来てしまっても、「去年は図書委員会で、仲良くしてくれた男の子がいたなー。」ぐらいで忘れてしまうのかもしれない。満川侑子は、この時はそういう気持ちになるのかどうか分からなかった。ただ、私は、津山くんの転校を知ってしまった。
…なんで私ばかり、津山くんの秘密をいちいち知ってしまうのだろう。新聞配達のことといい。でも、今回の転校の話はもっと強烈だった。転勤族の社宅暮らしの子にとっては、ものすごく重大な事だ。ある意味、彼が第三小学校からいなくなるという事より、自分だけがこの事を知っているという事の方が怖かった。満川侑子は、この震えはそこからくる事だと気づいた。
『機会を見つけて、津山くん本人に、聞いてみよう。中井さんはもう知っているのかな。』
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