68 / 84
扇町中学編
中学最後の夏
しおりを挟む
中3の夏休みは、テニス部も引退したので、暇な時間が多かった。
思い起こせば、楽で新聞配達とも両立できるからという理由で選んだ軟式テニス部だったが、大量の入部者の人数を減らすために、急にハードな練習になってしまい、面食らったのは笑い話だった。
そしてそのしごきに耐えた根性ある少年たちが10人ほど。その中に入れた僕とクマはさらにきついテニス部を思い知ることとなった。
休みはテスト期間の5日前から。月一の日曜日だけが定休日というハードな部活になり、ずる休みをすると、他のメンバーからの叱咤が飛んでくる。おかげで鍛えられたものの、クマとジョニー以外には気を許せなかったのはまた悲しい現実だった。なんとか続けられたのは、クマのおかげだったと言うべきか。クマは成績は振るわない反面、あまり人間関係で悩まない男だった。そんなクマが僕の相棒でいてくれた事は、幸せだった。
しかし、埼玉時代から続けている新聞配達は中2ごろからだんだん日数を減らし、テニスの引退直前に辞めてしまった。今は臨時のヘルプのみになった。でも、仕方ない、部活も遠泳大会の練習も忙しかった。そしてジョニーの相手もあった。
テニス部引退後の夏休みは、ジョニーの提案で、広島の原爆ドームの前で、観光客の外国人に英語で無料でガイドをする事にした。ジョニーは英語が堪能で、最初のうちは僕は彼の話す英語を聞いているだけだったが、そのうちに慣れていき、かなりブロークンな英語だが、夏休みの終わりには少しだけど話せるようになった。ジョニーを家に呼んだことがあったが、母親がとても喜んでくれたのを覚えている。
「孝典に、埼玉の時のような友達ができて嬉しいわ。」
ちょっと引っかかるようなコメントで、母はジョニーの事を歓迎した。母は頭のいい子が大好きだった、という事だろうか…。
これから、どこの高校を受けるんだろうか。ジョニーも僕も。
深川は、名門の元町高校一本に絞っているようだ。僕はそこまで上の高校は望めないので、広島仁志高校辺りかな、と漠然と考えている。それでも広島市では3番目ぐらいの学校だ。
気になるのは、公立中学に戻ってきた杉原だった。元町高校なら、附属中の生徒も受ける学校だ。国立中学は、エスカレーター式で上の高校に進むという進路だけでなく、外部の高校を受けることも可能のようだ。
『またあの女どもが一緒になるのか』
仲の悪い女同士が同じ高校に行くのは、ちょっと心配だった。春田と杉原の例もある。
水軍のお嬢、村上はどうやら広島仁志高校を志望しているようだ。体育はじめ実技教科は得意なので、いかにして主要5教科を上げていくかが課題のようだ。親は水産高校を勧めているようだが、本人は『天下を取る』のが目標なので、普通科高校を希望するようだ。
夏休みの終わり。8月31日、僕とジョニーは原爆ドーム前での自発的なボランティアを終え、2人で打ち上げ会を行った。このおかげで英語力も上がった?と思われるが、いかがなものだろうか。
思い起こせば、楽で新聞配達とも両立できるからという理由で選んだ軟式テニス部だったが、大量の入部者の人数を減らすために、急にハードな練習になってしまい、面食らったのは笑い話だった。
そしてそのしごきに耐えた根性ある少年たちが10人ほど。その中に入れた僕とクマはさらにきついテニス部を思い知ることとなった。
休みはテスト期間の5日前から。月一の日曜日だけが定休日というハードな部活になり、ずる休みをすると、他のメンバーからの叱咤が飛んでくる。おかげで鍛えられたものの、クマとジョニー以外には気を許せなかったのはまた悲しい現実だった。なんとか続けられたのは、クマのおかげだったと言うべきか。クマは成績は振るわない反面、あまり人間関係で悩まない男だった。そんなクマが僕の相棒でいてくれた事は、幸せだった。
しかし、埼玉時代から続けている新聞配達は中2ごろからだんだん日数を減らし、テニスの引退直前に辞めてしまった。今は臨時のヘルプのみになった。でも、仕方ない、部活も遠泳大会の練習も忙しかった。そしてジョニーの相手もあった。
テニス部引退後の夏休みは、ジョニーの提案で、広島の原爆ドームの前で、観光客の外国人に英語で無料でガイドをする事にした。ジョニーは英語が堪能で、最初のうちは僕は彼の話す英語を聞いているだけだったが、そのうちに慣れていき、かなりブロークンな英語だが、夏休みの終わりには少しだけど話せるようになった。ジョニーを家に呼んだことがあったが、母親がとても喜んでくれたのを覚えている。
「孝典に、埼玉の時のような友達ができて嬉しいわ。」
ちょっと引っかかるようなコメントで、母はジョニーの事を歓迎した。母は頭のいい子が大好きだった、という事だろうか…。
これから、どこの高校を受けるんだろうか。ジョニーも僕も。
深川は、名門の元町高校一本に絞っているようだ。僕はそこまで上の高校は望めないので、広島仁志高校辺りかな、と漠然と考えている。それでも広島市では3番目ぐらいの学校だ。
気になるのは、公立中学に戻ってきた杉原だった。元町高校なら、附属中の生徒も受ける学校だ。国立中学は、エスカレーター式で上の高校に進むという進路だけでなく、外部の高校を受けることも可能のようだ。
『またあの女どもが一緒になるのか』
仲の悪い女同士が同じ高校に行くのは、ちょっと心配だった。春田と杉原の例もある。
水軍のお嬢、村上はどうやら広島仁志高校を志望しているようだ。体育はじめ実技教科は得意なので、いかにして主要5教科を上げていくかが課題のようだ。親は水産高校を勧めているようだが、本人は『天下を取る』のが目標なので、普通科高校を希望するようだ。
夏休みの終わり。8月31日、僕とジョニーは原爆ドーム前での自発的なボランティアを終え、2人で打ち上げ会を行った。このおかげで英語力も上がった?と思われるが、いかがなものだろうか。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
青天のヘキレキ
ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ
高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。
上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。
思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。
可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。
お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。
出会いは化学変化。
いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。
お楽しみいただけますように。
他コンテンツにも掲載中です。
田辺さんと沢村さん
クトルト
青春
高校2年の冬
田辺は自分に何の才能があるのか、やりたいことがなんなのか、見つけられないでいた。
ある日の放課後、窓からグラウンドを眺めると、女子ソフト部が練習をしていた。
その中に、周りの足を引っ張っている、才能の欠片もない女子がいた。
その女子は田辺と目が合うと、田辺の事をにらみつけた。
以前アップしていたものを修正して、再アップしました。
水曜日のパン屋さん
水瀬さら
ライト文芸
些細なことから不登校になってしまった中学三年生の芽衣。偶然立ち寄った店は水曜日だけ営業しているパン屋さんだった。一人でパンを焼くさくらという女性。その息子で高校生の音羽。それぞれの事情を抱えパンを買いにくるお客さんたち。あたたかな人たちと触れ合い、悩み、励まされ、芽衣は少しずつ前を向いていく。
第2回ほっこり・じんわり大賞 奨励賞
大好きな志麻くんに嫌われるための7日間
真霜ナオ
青春
琴葉ノ学園の学園祭では、『後夜祭で告白すると幸せになれる』というジンクスがあった。
高校最後の学園祭を終えた嶋 千綿(しま ちわた)は、親友の計らいで片想い相手の藤岡志麻(ふじおか しま)と二人きりになる。
後夜祭の時間になり、志麻から告白をされた千綿。
その直後、偶発的な事故によって志麻が目の前で死亡してしまう。
その姿を見た千綿は、ただこう思った。
――……ああ、"またか"。
※ホラー作品に比べてまろやかにしているつもりですが、一部に多少の残酷描写が含まれます。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる