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14.アキードの目的
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アークの家に向かう途中、アークはアキードに疑問を投げました。
「アキードさんは何でアクリルさんを先に解放したの?」
アキードは苦笑しながらアークの頭に手を置きます。
「君はやはり度胸があるね」
アークは、はぐらかされた気分になったので詰め寄ります。
「答えになって無いよ!」
アキードは笑顔で答えます。
「君が、アクリル君と同じくらい人質として価値があると分かったからね」
その言葉にアークは顔が引きつります。
「僕・・・結構、危険な状況?」
アキードはニコニコ顔で答えます。
「もしも、アウルム君とアクリル君が逃げたら・・・」
アークの顔を両手でそっと包みますが、笑顔がとても恐ろしく思えました。
「君の想像を超えた結果が待っているよ?」
人間は想像できないものに恐怖を覚えるものです。
アークは冷や汗を流しながら、心の中で大丈夫と言い聞かせました。
心を落ち着かせたアークは歩き出しますが、足は少し震えていました。
「まぁ、私の推測が正しければその心配はないがね」
アキードは少し震えながら歩く少女の後をニコニコ顔でついていきました。
アークの家にある船着き場にはアウルムとアクリルが待っていました。
アークは人知れず、安堵のため息をつきました。
「さて、まずは自己紹介といこうか」
アキードはアークの用意した椅子に腰かけると、笑顔で自己紹介を始まました。
「私はアキード、知ってると思うが商人だ」
アウルムも自己紹介をします。
「俺はアウルム、海の神様に知恵と黄金の鱗を貰ったサメだ」
アウルムの自己紹介に、アキードは驚きましたがすぐに笑顔になりました。
「黄金のサメなんて聞いた事も無かったが・・・やはり海の神様か」
自己紹介が終わると、アキードは早速話を切り出します。
「単刀直入に聞くが、海の神様がどこにいるか知らないかね?」
アウルムは海の神様と出会った深海を思い出します。
「海の神様と出会ったのは、深くて暗い深海だった」
アウルムに続いてアクリルも答えます。
「私が海の神様に出会ったのはここより遠い海でした」
アキードは取り出したメモに何か書き込んでいきます。
「アウルム君は海の神様から知恵を貰ったのだね?」
アウルムが頷くとアキードの目が鋭く光ります。
「君は、海の神様についてどう思う?」
アキードの問いかけにアウルムは戸惑います。
今まで、海の神様について考えた事は無かったからです。
「祝福には感謝しているが、特に考えた事は無い」
アキードは、小さく息を吐いて遠い目をして言いました。
「私は世界中の海を回って商売をしているが、いつも思うのだよ」
アキードの鋭い瞳は、さらに険しくなっていきます。
「海はとても残酷だ、どんなに準備しても嵐一つで全てを失ってしまう」
アキードの言葉に、アクリルは昔の海を思い出します。
あの嵐が無ければ、アクリルは傷つく事も仲間を失う事もありませんでした。
アークも、何か思い当たるのか辛そうな表情をしています。
アキードは再びアウルムに問いかけます。
「海の神様は嵐をどう思っているのだろうね?」
アキードの言葉にアクリルの表情が凍り付きます。
アキードはアクリルの表情に満足そうに微笑みますが、眼は笑っていません。
「海の神が存在するのに、どうして嵐が起きるのだろうな?」
アウルムはアクリルの話を思い出しながら考えます。
(美しかった海も人間も魔物も魚も傷つくのに、神様は嵐を止めない?)
アクリルが不安そうにアウルムの鱗に触れました。
「アクリル君には何か心当たりがあるようだな?」
アウルムも、アクリルが嵐で仲間を失う事になった話を思い出しました。
「大丈夫?」
アウルムの言葉にアクリルは小さく頷きます。
アキードは手を空にかざしながら自分に問いかけるように話します。
「嵐から助かった者は"神に守られた"と言うが、本当に守られたのかな?」
アウルムは、アキードが何を言いたいのか少しだけ分かってきました。
「本当に神が守るつもりなら、そもそも嵐など起こさないと思うのだよ」
アウルムは黙って話を聞いています。
(海の神様は何か意図があって嵐を起こしているのだろうか?)
アキードは、意を決したように語ります。
「私はね、嵐は神が作り出した自作自演・・・自己満足だと思うのだよ」
アキードは震える両手を握りしめながら言葉を続けます。
その表情は、先ほどまでの笑顔と違ってとても険しくて恐ろしい顔でした。
「喜びも悲しみも、全て神の手のひらの上だと思うと気が狂いそうになる!」
アークはアキードの言葉に少し怯えながらも、恐る恐る手を上げます。
「でもそれは、アキードさんの想像なんだよね?」
アキードは肩の力を抜くと静かに言いました。
「確かに私の想像ではあるが、否定もできないのだよ」
アウルムもそう思いました。
それを否定できるとしたら、神様自身に聞かない限り不可能です。
そして、アキードの最初の質問の意図が分かりました。
「アキードは海の神様に会って、真実を聞きたいのか?」
アキードは深呼吸を一つすると、静かに頷きました。
「私の祖父は嵐の海で亡くなった・・・船を失い、職を失い家族は苦しんだ」
そうして、ポケットから小さなレリーフを取り出しました。
「祖父はいつも"海の神様に感謝しなさい"と言っていたが、私は分からない」
アークも悲しそうな顔をしてポツリとつぶやきました。
「その気持ちは少し分かるよ、僕も嵐が誰かの意思だったらと思うと怖い」
アクリルは両手を合わせて祈る様に目を閉じて、静かに話を聞いていました。
その後も、アキードは海の神様について色々聞きました。
アクリルの髪飾りを見せてもらうと慎重に調べながらメモを取ります。
「黄金に似ているが、とても軽くて硬い・・このヒビは新しいようだが?」
綺麗な三日月には小さなヒビがついていました。
アクリルも言われて気づきましたが、心当たりがありません。
すると、アウルムが申し訳なさそうに言いました。
「そのヒビは俺のせいなんだ」
アウルムはアクリルがいなくなった時に、傷をつけてしまったと謝ります。
海に沈みながら落ち込むアウルムに、アクリルは笑って許してくれました。
「大丈夫だよ、私の方こそアウルムを巻き込んでごめんね」
次にアキードは、アウルムの黄金の鱗を触らせてもらいました。
「これは凄いな、キメ細かくて滑らかに動くのに、鱗自体は非常に頑丈だ」
ぜひ、一枚だけでも鱗を貰えないかとお願いするアキードでしたが
アウルムの鱗はとても頑丈なので剥がせませんでした。
しょんぼりとするアキードでしたが、仕方ないと諦めました。
そして、アキードは一つため息をつくとアクリルに頭を下げました。
「とても良い話ができたよ、君には迷惑をかけて申し訳ない」
アクリルは少し落ち込みながらも、頷きました。
アウルムはアキードに問いかけます。
「何故、アクリルを攫ったんだ?」
アキードは真剣な表情で答えます。
「あの夜、彼女が君と一緒にいたから何か知ってると思ったのだよ」
アキードはアウルムの瞳に怒りの炎が見えたような気がしました。
アークが慌てて問いかけます。
「いきなり攫うなんて悪い事だと思うよ!」
アキードは少し申し訳なさそうに答えます。
「私が人間で、彼女が魔物だからね・・・」
アークもアクリルも寂しそうに言葉に詰まります。
人間と魔物は昔から敵同士で、ずっと戦っていた事を知っていたからです。
元々は魚であるアウルムも人間と魔物の両方から追われた事があります。
少しの間、重苦しい雰囲気が流れますがアークが元気に言いました。
「でも、アクリルとアウルムは敵じゃないって分かったでしょ?」
アキードは苦笑しながら答えます。
「確かにそうだね、魔物と取引している人間もいるらしいが納得したよ」
アウルムは少し考えてから答えます。
「俺も、人間が嫌いだったけど、アークは嫌いじゃない」
アークはそれを聞いて喜びます。
アキードは悪戯っぽく笑うと問いかけます。
「ちなみに、私はどうですか?」
アウルムは即答で答えます。
「アキードは嫌いだ」
アキードは肩をすくめながら笑います。
「これは手厳しい取引相手だ」
アークもアクリルもつられて笑います。
その中で、アウルムは少し戸惑っていました。
(アキードは嫌いだけど、アクリルとアークが笑っているのは嫌いじゃない)
サメと魔物と人間は夜遅くまで話していました。
「アキードさんは何でアクリルさんを先に解放したの?」
アキードは苦笑しながらアークの頭に手を置きます。
「君はやはり度胸があるね」
アークは、はぐらかされた気分になったので詰め寄ります。
「答えになって無いよ!」
アキードは笑顔で答えます。
「君が、アクリル君と同じくらい人質として価値があると分かったからね」
その言葉にアークは顔が引きつります。
「僕・・・結構、危険な状況?」
アキードはニコニコ顔で答えます。
「もしも、アウルム君とアクリル君が逃げたら・・・」
アークの顔を両手でそっと包みますが、笑顔がとても恐ろしく思えました。
「君の想像を超えた結果が待っているよ?」
人間は想像できないものに恐怖を覚えるものです。
アークは冷や汗を流しながら、心の中で大丈夫と言い聞かせました。
心を落ち着かせたアークは歩き出しますが、足は少し震えていました。
「まぁ、私の推測が正しければその心配はないがね」
アキードは少し震えながら歩く少女の後をニコニコ顔でついていきました。
アークの家にある船着き場にはアウルムとアクリルが待っていました。
アークは人知れず、安堵のため息をつきました。
「さて、まずは自己紹介といこうか」
アキードはアークの用意した椅子に腰かけると、笑顔で自己紹介を始まました。
「私はアキード、知ってると思うが商人だ」
アウルムも自己紹介をします。
「俺はアウルム、海の神様に知恵と黄金の鱗を貰ったサメだ」
アウルムの自己紹介に、アキードは驚きましたがすぐに笑顔になりました。
「黄金のサメなんて聞いた事も無かったが・・・やはり海の神様か」
自己紹介が終わると、アキードは早速話を切り出します。
「単刀直入に聞くが、海の神様がどこにいるか知らないかね?」
アウルムは海の神様と出会った深海を思い出します。
「海の神様と出会ったのは、深くて暗い深海だった」
アウルムに続いてアクリルも答えます。
「私が海の神様に出会ったのはここより遠い海でした」
アキードは取り出したメモに何か書き込んでいきます。
「アウルム君は海の神様から知恵を貰ったのだね?」
アウルムが頷くとアキードの目が鋭く光ります。
「君は、海の神様についてどう思う?」
アキードの問いかけにアウルムは戸惑います。
今まで、海の神様について考えた事は無かったからです。
「祝福には感謝しているが、特に考えた事は無い」
アキードは、小さく息を吐いて遠い目をして言いました。
「私は世界中の海を回って商売をしているが、いつも思うのだよ」
アキードの鋭い瞳は、さらに険しくなっていきます。
「海はとても残酷だ、どんなに準備しても嵐一つで全てを失ってしまう」
アキードの言葉に、アクリルは昔の海を思い出します。
あの嵐が無ければ、アクリルは傷つく事も仲間を失う事もありませんでした。
アークも、何か思い当たるのか辛そうな表情をしています。
アキードは再びアウルムに問いかけます。
「海の神様は嵐をどう思っているのだろうね?」
アキードの言葉にアクリルの表情が凍り付きます。
アキードはアクリルの表情に満足そうに微笑みますが、眼は笑っていません。
「海の神が存在するのに、どうして嵐が起きるのだろうな?」
アウルムはアクリルの話を思い出しながら考えます。
(美しかった海も人間も魔物も魚も傷つくのに、神様は嵐を止めない?)
アクリルが不安そうにアウルムの鱗に触れました。
「アクリル君には何か心当たりがあるようだな?」
アウルムも、アクリルが嵐で仲間を失う事になった話を思い出しました。
「大丈夫?」
アウルムの言葉にアクリルは小さく頷きます。
アキードは手を空にかざしながら自分に問いかけるように話します。
「嵐から助かった者は"神に守られた"と言うが、本当に守られたのかな?」
アウルムは、アキードが何を言いたいのか少しだけ分かってきました。
「本当に神が守るつもりなら、そもそも嵐など起こさないと思うのだよ」
アウルムは黙って話を聞いています。
(海の神様は何か意図があって嵐を起こしているのだろうか?)
アキードは、意を決したように語ります。
「私はね、嵐は神が作り出した自作自演・・・自己満足だと思うのだよ」
アキードは震える両手を握りしめながら言葉を続けます。
その表情は、先ほどまでの笑顔と違ってとても険しくて恐ろしい顔でした。
「喜びも悲しみも、全て神の手のひらの上だと思うと気が狂いそうになる!」
アークはアキードの言葉に少し怯えながらも、恐る恐る手を上げます。
「でもそれは、アキードさんの想像なんだよね?」
アキードは肩の力を抜くと静かに言いました。
「確かに私の想像ではあるが、否定もできないのだよ」
アウルムもそう思いました。
それを否定できるとしたら、神様自身に聞かない限り不可能です。
そして、アキードの最初の質問の意図が分かりました。
「アキードは海の神様に会って、真実を聞きたいのか?」
アキードは深呼吸を一つすると、静かに頷きました。
「私の祖父は嵐の海で亡くなった・・・船を失い、職を失い家族は苦しんだ」
そうして、ポケットから小さなレリーフを取り出しました。
「祖父はいつも"海の神様に感謝しなさい"と言っていたが、私は分からない」
アークも悲しそうな顔をしてポツリとつぶやきました。
「その気持ちは少し分かるよ、僕も嵐が誰かの意思だったらと思うと怖い」
アクリルは両手を合わせて祈る様に目を閉じて、静かに話を聞いていました。
その後も、アキードは海の神様について色々聞きました。
アクリルの髪飾りを見せてもらうと慎重に調べながらメモを取ります。
「黄金に似ているが、とても軽くて硬い・・このヒビは新しいようだが?」
綺麗な三日月には小さなヒビがついていました。
アクリルも言われて気づきましたが、心当たりがありません。
すると、アウルムが申し訳なさそうに言いました。
「そのヒビは俺のせいなんだ」
アウルムはアクリルがいなくなった時に、傷をつけてしまったと謝ります。
海に沈みながら落ち込むアウルムに、アクリルは笑って許してくれました。
「大丈夫だよ、私の方こそアウルムを巻き込んでごめんね」
次にアキードは、アウルムの黄金の鱗を触らせてもらいました。
「これは凄いな、キメ細かくて滑らかに動くのに、鱗自体は非常に頑丈だ」
ぜひ、一枚だけでも鱗を貰えないかとお願いするアキードでしたが
アウルムの鱗はとても頑丈なので剥がせませんでした。
しょんぼりとするアキードでしたが、仕方ないと諦めました。
そして、アキードは一つため息をつくとアクリルに頭を下げました。
「とても良い話ができたよ、君には迷惑をかけて申し訳ない」
アクリルは少し落ち込みながらも、頷きました。
アウルムはアキードに問いかけます。
「何故、アクリルを攫ったんだ?」
アキードは真剣な表情で答えます。
「あの夜、彼女が君と一緒にいたから何か知ってると思ったのだよ」
アキードはアウルムの瞳に怒りの炎が見えたような気がしました。
アークが慌てて問いかけます。
「いきなり攫うなんて悪い事だと思うよ!」
アキードは少し申し訳なさそうに答えます。
「私が人間で、彼女が魔物だからね・・・」
アークもアクリルも寂しそうに言葉に詰まります。
人間と魔物は昔から敵同士で、ずっと戦っていた事を知っていたからです。
元々は魚であるアウルムも人間と魔物の両方から追われた事があります。
少しの間、重苦しい雰囲気が流れますがアークが元気に言いました。
「でも、アクリルとアウルムは敵じゃないって分かったでしょ?」
アキードは苦笑しながら答えます。
「確かにそうだね、魔物と取引している人間もいるらしいが納得したよ」
アウルムは少し考えてから答えます。
「俺も、人間が嫌いだったけど、アークは嫌いじゃない」
アークはそれを聞いて喜びます。
アキードは悪戯っぽく笑うと問いかけます。
「ちなみに、私はどうですか?」
アウルムは即答で答えます。
「アキードは嫌いだ」
アキードは肩をすくめながら笑います。
「これは手厳しい取引相手だ」
アークもアクリルもつられて笑います。
その中で、アウルムは少し戸惑っていました。
(アキードは嫌いだけど、アクリルとアークが笑っているのは嫌いじゃない)
サメと魔物と人間は夜遅くまで話していました。
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