9 / 15
9.軍艦への潜入
しおりを挟む
アウルムは潜るとアークの真下に隠れます。
足の裏にアウルムの鱗の感触を感じながら、アークは深呼吸を一つします。
ランタンに石を入れて海水をかけると、石はぼんやりと青く輝きました。
すると、不思議な事にアークの周りに青い光が一つ、また一つと輝きます。
青い光は少しづつ増えて行くと、周りは青く輝く海になりました。
それは、小さなイカの大群でした。
小さなイカの触手の先が青く輝いているのです。
「ヒカリイカ?」
ヒカリイカはアウルムも知っています。
アウルムが暮らしていた深海でも青く輝いていた事を思い出します。
「そうだよ、産卵の為に水面近くに出て来て青く光るんだ」
アークがランタンをゆっくりと回すと、上からロープが下りてきます。
アークはロープに大きな袋をしっかりと結びつけます。
「よし・・」
ランタンを再びゆっくり回すと、ロープはゆっくりと引き上げられます。
アークは引き上げられる大きな袋にしがみつくとランタンを海に沈めます。
海の中でもぼんやりと青く光るランタンをアウルムがくわえます。
船から離れていく青いランタンを見ながらアークは大きな船を見上げます。
「船長室はあそこだね」
船尾につけられた豪華な窓を見つけると、小さなナイフを取り出します。
金属で補強されていない木材の隙間にナイフを差し込んで足場にします。
小さなナイフですが、魚の硬い骨もさばける頑丈なナイフはアークを支えます。
「よっと」
引き上げられていく袋から離れると、窓からそっと部屋の中をのぞき込みます。
中には燭台の炎が揺れていますが、人はいないようです。
しかし、燭台の火がついていると言う事は部屋の主は起きているようです。
窓の鍵は簡単な留め金だったので、隙間から針金を差し込んで開けました。
風で燭台の炎を揺らさないように、慎重に部屋の中に入り込みます。
僅かに入った風で炎が揺れるとアークは心臓が止まりそうになりました。
炎は直ぐに揺れが収まりましたが、アークの心臓は激しく鼓動します。
「軍艦に侵入なんて、見つかったら死刑かも・・・」
震える手で窓を閉めて、入り口の扉をじっと見つめながら姿勢を低くします。
アークは恐怖に震える手をしっかりと押さえると落ち着いて耳を澄ませます。
上の方から怒鳴り声が聞こえてきますが、あのアキードかもしれません。
船が揺れて木材が軋む音に混じって、水が跳ねる音が聞こえます。
「この音は・・・?」
音は入り口とは別の扉から聞こえてきます。
アークは、周りを注意深く確認しながら部屋の中を移動します。
本の詰まった本棚の影が、生き物のように揺れています。
アークにはまるで自分を何かがじっと見ている気がして震えます。
(大丈夫・・・大丈夫・・・)
扉に鍵はかかっていませんでした。
そっと扉に耳を付けて、中の音を探ります。
水が跳ねる音と硬い物が擦れる音が聞こえます。
アークは覚悟を決めて、そっと扉を少し開けて中を覗き込みます。
中は明かりが無く、真っ暗でした。
アークは猫のように両手と両足で四つん這いになると、部屋に忍び込みます。
真っ暗な部屋の中を音のする方へゆっくりと近づくと、指先に何か触れます。
(水?)
部屋の中は水浸しでした。
(ここだけ嵐でも入り込んだみたいだ。)
更に進むと、硬い物に触れました。
それは金属の板の様でしたが、よく見えないアークには何か分かりません。
それでも、しっとりと湿った金属の板をなぞる様に触れていきます。
(水が入った金属の箱・・・いや水槽かな?)
少しづつ目が慣れてくると、金属の箱は予想以上の大きさでした。
高さはアークより少し高い程度ですが、幅は部屋の半分はありそうでした。
(アクリルさんがこの中に居るのかな?)
部屋にこんな水の入った金属の箱を置く理由はそれ以外思いつきません。
アークがアクリルの名を呼ぼうと口を開いた瞬間でした。
「まったく、兵士達にも困ったものだ!」
入り口の方からアキードの大声と足音が聞こえてきます。
アークは全身から血の気が引いて、慌てます。
(どうしよう!どうしよう!)
足の裏にアウルムの鱗の感触を感じながら、アークは深呼吸を一つします。
ランタンに石を入れて海水をかけると、石はぼんやりと青く輝きました。
すると、不思議な事にアークの周りに青い光が一つ、また一つと輝きます。
青い光は少しづつ増えて行くと、周りは青く輝く海になりました。
それは、小さなイカの大群でした。
小さなイカの触手の先が青く輝いているのです。
「ヒカリイカ?」
ヒカリイカはアウルムも知っています。
アウルムが暮らしていた深海でも青く輝いていた事を思い出します。
「そうだよ、産卵の為に水面近くに出て来て青く光るんだ」
アークがランタンをゆっくりと回すと、上からロープが下りてきます。
アークはロープに大きな袋をしっかりと結びつけます。
「よし・・」
ランタンを再びゆっくり回すと、ロープはゆっくりと引き上げられます。
アークは引き上げられる大きな袋にしがみつくとランタンを海に沈めます。
海の中でもぼんやりと青く光るランタンをアウルムがくわえます。
船から離れていく青いランタンを見ながらアークは大きな船を見上げます。
「船長室はあそこだね」
船尾につけられた豪華な窓を見つけると、小さなナイフを取り出します。
金属で補強されていない木材の隙間にナイフを差し込んで足場にします。
小さなナイフですが、魚の硬い骨もさばける頑丈なナイフはアークを支えます。
「よっと」
引き上げられていく袋から離れると、窓からそっと部屋の中をのぞき込みます。
中には燭台の炎が揺れていますが、人はいないようです。
しかし、燭台の火がついていると言う事は部屋の主は起きているようです。
窓の鍵は簡単な留め金だったので、隙間から針金を差し込んで開けました。
風で燭台の炎を揺らさないように、慎重に部屋の中に入り込みます。
僅かに入った風で炎が揺れるとアークは心臓が止まりそうになりました。
炎は直ぐに揺れが収まりましたが、アークの心臓は激しく鼓動します。
「軍艦に侵入なんて、見つかったら死刑かも・・・」
震える手で窓を閉めて、入り口の扉をじっと見つめながら姿勢を低くします。
アークは恐怖に震える手をしっかりと押さえると落ち着いて耳を澄ませます。
上の方から怒鳴り声が聞こえてきますが、あのアキードかもしれません。
船が揺れて木材が軋む音に混じって、水が跳ねる音が聞こえます。
「この音は・・・?」
音は入り口とは別の扉から聞こえてきます。
アークは、周りを注意深く確認しながら部屋の中を移動します。
本の詰まった本棚の影が、生き物のように揺れています。
アークにはまるで自分を何かがじっと見ている気がして震えます。
(大丈夫・・・大丈夫・・・)
扉に鍵はかかっていませんでした。
そっと扉に耳を付けて、中の音を探ります。
水が跳ねる音と硬い物が擦れる音が聞こえます。
アークは覚悟を決めて、そっと扉を少し開けて中を覗き込みます。
中は明かりが無く、真っ暗でした。
アークは猫のように両手と両足で四つん這いになると、部屋に忍び込みます。
真っ暗な部屋の中を音のする方へゆっくりと近づくと、指先に何か触れます。
(水?)
部屋の中は水浸しでした。
(ここだけ嵐でも入り込んだみたいだ。)
更に進むと、硬い物に触れました。
それは金属の板の様でしたが、よく見えないアークには何か分かりません。
それでも、しっとりと湿った金属の板をなぞる様に触れていきます。
(水が入った金属の箱・・・いや水槽かな?)
少しづつ目が慣れてくると、金属の箱は予想以上の大きさでした。
高さはアークより少し高い程度ですが、幅は部屋の半分はありそうでした。
(アクリルさんがこの中に居るのかな?)
部屋にこんな水の入った金属の箱を置く理由はそれ以外思いつきません。
アークがアクリルの名を呼ぼうと口を開いた瞬間でした。
「まったく、兵士達にも困ったものだ!」
入り口の方からアキードの大声と足音が聞こえてきます。
アークは全身から血の気が引いて、慌てます。
(どうしよう!どうしよう!)
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
灯りの点る小さな家
サクラ
児童書・童話
「私」はいじめられっ子。
だから、いつも嘘を家族に吐いていた。
「楽しい1日だったよ」
正直に相談出来ないまま、両親は他界。そんな一人の「私」が取った行動は……。
いじめられたことのある人、してしまったことのある人に読んでほしい短編小説。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる