君との距離は声より近い

番外編

後日談①

結局午前中チェックアウトギリギリまで部屋でのんびり過ごした後、ショーイチと俺は、俺の実家に向かった。しかもショーイチはスーツ着用で。
つまり、最初から俺の家に挨拶しに行くつもりで持ってきていたらしいんだけど、どこまで用意周到なのか。しかもアポイントまでとってきているときた。母さん、昨日そんなこと一言も言わなかったのに…。
何度もお互いの家は行き来しているからか、いつもとは違う正装の彼が、自分の家にいるのは相当異質な光景だった。
しかも、俺の隣であのお決まりのセリフの「娘さんを僕にください」が如く、「圭太さんを僕にください」と言われては、顔から火が出そうだった。赤くなった顔を身内に晒したくなくて「お願いします。」と呟いてから、一緒になって頭を下げた。

「やぁねぇ、将一くん。今更やない。なんとなく覚悟はしてたわよ…
不束な息子ですけど、どうぞもらってやって。」

放任主義な母親だからか、もうすぐ兄の方で甥っ子が生まれそうだからか、一つ返事で承認を得てしまった。
横を見やると、案の定間の抜けた顔をした彼の顔があった。拍子抜けしたショーイチの顔が面白くって、今度は別の意味で顔があげられなくなってしまったのは、また別の話。