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お出かけ禁止②
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働き始めてはや一年。
今日は勤務先の学校の新しく赴任される先生方の歓迎会だった。
昨年は迎え入れてもらう側であったが、今年は贈り返す側になれたわけで。
飲み会があまり得意なタチでもないけれど、居場所を与えてもらえることは、幾つになっても嬉しい。
歳を経るごとにそれは増すのかもしれない。
歓迎会のセッティングから任されていた俺は、張り切って準備をした。
そこまでは、良かった、けれど。
「昔告白してきた女が居る飲み会に行くだなんて、ふてぇじゃねぇか、圭太」
行為が終わった後、横で肘をついて寝転がったショーイチがそう言った。
腰に回される手は、情欲もそれから怒りも孕んでいなかった。
どうやら許してもらえたらしい。
「やから、誤解やって」
既に手首に巻かれたタオルは外されていて、見ても当然赤くはなっておらず痛みもなかった。
「でも、行ったんだろ?」
「うぅ~」
「…行ったんじゃねぇか」
そう寂しそうに口を尖らせるショーイチに少し胸が痛んだ。
けれど、歓迎会のセッティングを任されていた立場のため、人数は聞かされていたが、誰が赴任してくるかまでは本当の本当に直前まで知らなかったのだ。
知っていたとしても、断れる立場ではなかったかもしれないが、多少なりとも配慮はできたかもしれない。
それこそ、事前にショーイチに告げておくだとか。
帰ってきた時、隣に座る女性から香った香水が、自分に移るだとか夢にも思わなかったのだ。
『なんだか、綺麗になったね、圭太くん』
もう、俺とは比べ物にならないくらい彼女も大人になっていたが、俺からはもちろん、彼女からも恋愛感情など微塵も感じられず、ついうっかり最初に配置した座席のまま、随分長い時間話し込んでしまったことが原因だろう。
「おかえり、お疲れさん」
「ただいま、ショーイチ」
やましいことなど何一つなかったため、遅くまで帰りを待っていてくれたショーイチの胸に飛び込めば、首筋に顔を埋めるショーイチが眉を顰めたことが事の始まりだったように思う。
後は、疑われたくないあまりに全てを話しすぎてしまったがため、冒頭に至る次第だ。
正直、小さい頃からショーイチの隣が当たり前で、この当然を奪われたくなくて、
隣にいることがあたたかすぎて今が在る俺にとって、どんな女性だって、もちろん男だって、ショーイチにとって不安材料にはなりはしない。
それがもっと伝わったら良いのに。
「ショーイチ」
俺は触れるだけのキスをした。
「圭」
「俺の一番は、何があってもショーイチやから
…せやから、そんな不安にならんとって?」
「…」
「こんなに好きやのに、寂しいやんか」
そっと身を寄せれば、回る腕に力が込められるのが分かる。
ほっ、これで一件落着…と思ったが、俺は甘かった。
もしかすると、俺はいつもそうなのかもしれない。
「…分かってない」
「え?」
「お前は分かってない」
「分かってない?」
え?やって、ショーイチの不安は…
「お前が可愛すぎるのが問題なんだよ!」
どうやらそれだけは、俺にはどうすることもできないらしかった。
今日は勤務先の学校の新しく赴任される先生方の歓迎会だった。
昨年は迎え入れてもらう側であったが、今年は贈り返す側になれたわけで。
飲み会があまり得意なタチでもないけれど、居場所を与えてもらえることは、幾つになっても嬉しい。
歳を経るごとにそれは増すのかもしれない。
歓迎会のセッティングから任されていた俺は、張り切って準備をした。
そこまでは、良かった、けれど。
「昔告白してきた女が居る飲み会に行くだなんて、ふてぇじゃねぇか、圭太」
行為が終わった後、横で肘をついて寝転がったショーイチがそう言った。
腰に回される手は、情欲もそれから怒りも孕んでいなかった。
どうやら許してもらえたらしい。
「やから、誤解やって」
既に手首に巻かれたタオルは外されていて、見ても当然赤くはなっておらず痛みもなかった。
「でも、行ったんだろ?」
「うぅ~」
「…行ったんじゃねぇか」
そう寂しそうに口を尖らせるショーイチに少し胸が痛んだ。
けれど、歓迎会のセッティングを任されていた立場のため、人数は聞かされていたが、誰が赴任してくるかまでは本当の本当に直前まで知らなかったのだ。
知っていたとしても、断れる立場ではなかったかもしれないが、多少なりとも配慮はできたかもしれない。
それこそ、事前にショーイチに告げておくだとか。
帰ってきた時、隣に座る女性から香った香水が、自分に移るだとか夢にも思わなかったのだ。
『なんだか、綺麗になったね、圭太くん』
もう、俺とは比べ物にならないくらい彼女も大人になっていたが、俺からはもちろん、彼女からも恋愛感情など微塵も感じられず、ついうっかり最初に配置した座席のまま、随分長い時間話し込んでしまったことが原因だろう。
「おかえり、お疲れさん」
「ただいま、ショーイチ」
やましいことなど何一つなかったため、遅くまで帰りを待っていてくれたショーイチの胸に飛び込めば、首筋に顔を埋めるショーイチが眉を顰めたことが事の始まりだったように思う。
後は、疑われたくないあまりに全てを話しすぎてしまったがため、冒頭に至る次第だ。
正直、小さい頃からショーイチの隣が当たり前で、この当然を奪われたくなくて、
隣にいることがあたたかすぎて今が在る俺にとって、どんな女性だって、もちろん男だって、ショーイチにとって不安材料にはなりはしない。
それがもっと伝わったら良いのに。
「ショーイチ」
俺は触れるだけのキスをした。
「圭」
「俺の一番は、何があってもショーイチやから
…せやから、そんな不安にならんとって?」
「…」
「こんなに好きやのに、寂しいやんか」
そっと身を寄せれば、回る腕に力が込められるのが分かる。
ほっ、これで一件落着…と思ったが、俺は甘かった。
もしかすると、俺はいつもそうなのかもしれない。
「…分かってない」
「え?」
「お前は分かってない」
「分かってない?」
え?やって、ショーイチの不安は…
「お前が可愛すぎるのが問題なんだよ!」
どうやらそれだけは、俺にはどうすることもできないらしかった。
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