君との距離は声より近い

SS

大学に合格したとき

無事、志望校に合格した時のこと。
前々から、受験に合格した暁には、どこか好きなところへ連れていってくれる、とは言われていて。
勉強に勉強を重ねて、久しく家に篭りきりだったから、駄々をこね始めた俺に見かねて、ショーイチはそう激励してくれていた。

そして、合格が決まってのこのことショーイチの家を訪ねてみれば。

「ほら、これ。」
「ん？これなに？」
「合格祝い。」
「え、どっか連れてってくれるんちゃうん？」

いいから手ェ出せ、と言われて出せと言われるまま、はい、と手のひらを差し出せば、何かを握らされる。
あれ、これって…

「これ・・・。」
「俺いないときでも来ていいから。」　

それは、ショーイチの家の合鍵で。

「一緒に暮らすのは、もう少し先でも良いか、って。
だから、とりあえず…何で泣いてんだよ」
「ショーイチ」

ショーイチは、一度ため息をついてから、泣きじゃくる俺を、ソファに座るショーイチの膝の上へ抱き上げた。

「大好き。大好きやで。」
「俺も愛してるよ。」

よく頑張ったな、と抱きしめられれば、それは旅行へ行く約束を忘れてしまいそうなほど、二人だけの甘い時間の始まりだった。