七十五日戦争

Iris

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七十五日戦争

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これは、日本ではない、
どこか遠い国のお話。
もしかすると、夢なのかもしれません。

『オーホッホッホッホ!
パンがないなら、ケーキを食べれば良いじゃない?』

おや?
国のまん中にポツンと立ったお城の中で、
ひとり笑っている、おんなの人がいます。
うーん。
どこかで聞いたセリフですね。

おんなの人は、この国の女王でした。
しかし、彼女は、女王でありながら、
女王ではありませんでした。

なぜなら、女王が愛していた王子も、
そばに仕えていた近衛(このえ)兵たちも、
たくさんの兵士たちも、
城から出て行ってしまったからです。

いつもは、
ニコニコふるまっていた女王の顔が、
みるみる険しく、しわくちゃになってしまったのは、
王子が、村ムスメと結婚するために、
城を出て行ってしまった、
ということを知った、
その、すぐ後でした。

女王は、寝室(しんしつ)で、ひとり泣きました。
くる晩、くる晩。
毎日、毎日。
王子が帰ってくることを信じて。

しかし、王子は帰ってきませんでした。

それから、女王はすっかり変わり果て、

『いいかい、お前たち。
あの女が出身の村を、女ごと、
根絶やしにしてやるんだよ…』

家来に、そう言い放ちました。

家来たちは、

『女王さまにさからえば、ナニをされるか分からない』

『もし、言うことを聞いたら、ご褒美がもらえるかもしれない』

『ま、皆に合わせておこう』

そう、おのおのが思いながら、
けっして女王に、

『そんなヒドいことは止めよう』

と言う、勇気あるものは、だれもおりませんでした。


それから、『戦争』は始まったのです。
女王は、たくさんの刺客を村ムスメに送りました。
くる日も。くる日も。

ところが、女王が驚くことに、
村ムスメは、王子と、その仲間たちとともに、
女王からの手先を、全て倒してしまったのです。

『おお、鏡よ。教えておくれ。
どうして、王子は私の元に帰ってこないの?
どうして、あの女に、私は勝てないの?』

困った女王は、家に古くから置かれている、
話しかけるとこたえてくれる、
フシギなフシギな鏡に、そう問いかけました。

『女王サマ、ソイツは、アナタが、
ブサイクだからじゃないですカ?』

鏡は、カタコトながら、そう答えました。

『なんですって!!!』

自分のうつくしさに、
誇り(ほこり)を抱いていた女王は、
怒りのあまり、鏡を叩きつけました。

『女王サマ、ワタシは、そんなことでは、
こわれませんヨ』

鏡は、笑いながら、そう答えました。

『私の一体、どこがいけないの?!?!』

女王は、また、泣いていました。
それを見た鏡は、なぜだか自分も、
カナシイきもちになりました。

『ワタシには、ワカリマセン』

もう女王は、笑うしかありませんでした。


そうして、女王は壊れてしまったのです。
そして、家来たちは、
しだいに城から、離れていってしまいました。
この先、どうすれば良いかも分からず、
途方(とほう)にくれながら。


この物語は後に、
『七十五日戦争』と呼ばれることと、
なりました。

しかし、そのことを知っているのは、
村ムスメと、その王子と、その仲間たち、
そして、アタシだけ。

あら?
『わたし』が誰かって?
それは、カミのみぞ知る。
なんちゃって。
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