1 / 1
1話 嫌われ者
しおりを挟む
僕の家は代々黒魔術を継承している。
皆、「黒魔術」という言葉を聞くと、怖い印象だとか、いけないことをしているように聞こえるかもしれない。
黒色が悪いイメージを持っているのだろうか、魔術が自分にとって、何をするかわからないからだろうか。
それとも、黒と魔術が合わさるから、きっと良くないもののように、思えるのかもしれない。
けれど、僕にとって黒色は最高に格好良い色だ。
お気に入りのマントだって、いつも履いていく靴だって、それから髪の毛だって黒色だ。
僕のお気に入りを、他の人がどうこう言うからという理由で、変えたいとは思わない。
そんな権利、誰だって持ってはいない。
魔術だって、そう。
「燃え盛れ、焔の踊り!フレイムラッシュ!」
お父さんがその呪文を唱えれば、まるで炎の精霊がダンスを踊るように、真っ暗だった辺り一体の松明に火をつけて、どんなに先の見えない場所も明るく照らしてくれる。
火の使いみちは僕たち人が決める。
火の魔法を使って火事が起きた時、じいちゃんはそう教えてくれた。
だから、僕たち黒魔術士はいつどこで魔術を使うか、よく考えなければいけない。
「波よ打ち寄せ、大海を鎮めよ!アクアブリーズ!」
これは海の近くでないと効果が発揮できない、ちょっと唱えどころにコツが必要な呪文だ。
でもお母さんは、この呪文を使って、海で溺れかけている人を助けたことがある。
その場にいた人が、皆黒魔術士なら良かったのに。
助けた人の家族の人からは、とっても感謝された。それは僕も嬉しかった。
でも、人魚の逆燐には触れた。
「自然を、何より海を穢すとは、いつかその魔術は災いを呼ぶであろう」だって。
人魚の王様はそう言った。
僕はすごく腹がたった。
お母さんがしたことは、正しいことなのに。
誰かが亡くなることよりも、その手段を僕らは持っているのに、助けることを選ぶことが正しくないだなんて。
それ以来、お母さんは海に近づくことを禁じられた。
飲まなければ、僕ら魔術士全員がそれに該当するって。
お母さんは、僕らのため、その誰かのために禁を受けた。
僕は悔しかった。
お母さんは「仕方がない」と笑っていた。
けれど、その横顔はどこか寂しそうだったことを、今でも覚えている。
お母さんは次の瞬間には、しゃがんで僕と目と目を合わせてからこう言った。
「誰も恨んではダメよ」
恨むってどういうことだろう。
僕が疑問に思っていると、お母さんはえくぼを浮かべて、もう寂しさなんか微塵も残っていないと、僕に伝えるかのようにニコッと笑った。
「それに…自由なる風よ、旅人の道しるべとなれ。エアウィスパー」
柔らかい風は僕らを包むと、身体が宙に浮いていた。
「わぁ…」
「なにも、海がダメだからといって、お空がダメなんて聞いてないわ」
お母さんは、シーッと口に手を当てて、ウインクをした。
それからふっとして、風も止んだ。
「あなたは、自由に生きなさい」
お母さんは、凛とした目で僕にそう告げた。
僕たち黒魔術士は、きっと誰もが黒魔術士になる道を選んできたのだろう。
最初「継承」と、まるでしなければならないことを、仕方がなくしているように聞こえたかもしれないけれど、
僕は、黒魔術士の家系に生まれたことが、とても誇らしかった。
皆、「黒魔術」という言葉を聞くと、怖い印象だとか、いけないことをしているように聞こえるかもしれない。
黒色が悪いイメージを持っているのだろうか、魔術が自分にとって、何をするかわからないからだろうか。
それとも、黒と魔術が合わさるから、きっと良くないもののように、思えるのかもしれない。
けれど、僕にとって黒色は最高に格好良い色だ。
お気に入りのマントだって、いつも履いていく靴だって、それから髪の毛だって黒色だ。
僕のお気に入りを、他の人がどうこう言うからという理由で、変えたいとは思わない。
そんな権利、誰だって持ってはいない。
魔術だって、そう。
「燃え盛れ、焔の踊り!フレイムラッシュ!」
お父さんがその呪文を唱えれば、まるで炎の精霊がダンスを踊るように、真っ暗だった辺り一体の松明に火をつけて、どんなに先の見えない場所も明るく照らしてくれる。
火の使いみちは僕たち人が決める。
火の魔法を使って火事が起きた時、じいちゃんはそう教えてくれた。
だから、僕たち黒魔術士はいつどこで魔術を使うか、よく考えなければいけない。
「波よ打ち寄せ、大海を鎮めよ!アクアブリーズ!」
これは海の近くでないと効果が発揮できない、ちょっと唱えどころにコツが必要な呪文だ。
でもお母さんは、この呪文を使って、海で溺れかけている人を助けたことがある。
その場にいた人が、皆黒魔術士なら良かったのに。
助けた人の家族の人からは、とっても感謝された。それは僕も嬉しかった。
でも、人魚の逆燐には触れた。
「自然を、何より海を穢すとは、いつかその魔術は災いを呼ぶであろう」だって。
人魚の王様はそう言った。
僕はすごく腹がたった。
お母さんがしたことは、正しいことなのに。
誰かが亡くなることよりも、その手段を僕らは持っているのに、助けることを選ぶことが正しくないだなんて。
それ以来、お母さんは海に近づくことを禁じられた。
飲まなければ、僕ら魔術士全員がそれに該当するって。
お母さんは、僕らのため、その誰かのために禁を受けた。
僕は悔しかった。
お母さんは「仕方がない」と笑っていた。
けれど、その横顔はどこか寂しそうだったことを、今でも覚えている。
お母さんは次の瞬間には、しゃがんで僕と目と目を合わせてからこう言った。
「誰も恨んではダメよ」
恨むってどういうことだろう。
僕が疑問に思っていると、お母さんはえくぼを浮かべて、もう寂しさなんか微塵も残っていないと、僕に伝えるかのようにニコッと笑った。
「それに…自由なる風よ、旅人の道しるべとなれ。エアウィスパー」
柔らかい風は僕らを包むと、身体が宙に浮いていた。
「わぁ…」
「なにも、海がダメだからといって、お空がダメなんて聞いてないわ」
お母さんは、シーッと口に手を当てて、ウインクをした。
それからふっとして、風も止んだ。
「あなたは、自由に生きなさい」
お母さんは、凛とした目で僕にそう告げた。
僕たち黒魔術士は、きっと誰もが黒魔術士になる道を選んできたのだろう。
最初「継承」と、まるでしなければならないことを、仕方がなくしているように聞こえたかもしれないけれど、
僕は、黒魔術士の家系に生まれたことが、とても誇らしかった。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる