砂場のおねえさん

はんとれす

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生きた夢

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小さい時、おねえさんが砂場で遊んでくれた。
そうはっきりとひとつひとつの情景を覚えてるわけではないけど、おねえさんの記憶はあたたかくって心地いい。
おねえさんは優しい。優しいし気を遣ってるとかもないから緊張もせずにありのまま遊べるから、一緒に遊ぶのが好きだった。
そう頻繁に来れるわけではないらしいのが、凄く残念に感じていた。
砂場で遊ぶ時にはいつも一人で遊びながら待っていた。
暫くして、もう来ないことが分かると泣きたくなるくらい悲しかったし、なんだか裏切られたような気持がした。
約束なんてしてないのに。
そう、おねえさんは絶対約束はしなかった。
「また明日ね」
なんて絶対言わなかった。
ある程度大人になってからは、おねえさんが正しいと思う。
当時もなんとなく理解してたと思うけど、まだ小さい子供だったから自分の期待や失望なんかの気持ちの方がずっと上だった。
でも、次の日にはそんな気持ちもすっかり薄れて、またおねえさんのことをずっと待ってたんだ。
今日は来るかな。
あの横断歩道の向こうから、こちらへやってくる姿がないかって、しきりに僕は見てた。

でもその日も、結局来なかった。
あくる日も来なかった。
その次の日も。その次も。

こんなに来ないことが今までにはなかったから、とても不安になった。
そして、どうすればいいのか分からなかった。
おねえさんはもう来ないのかもしれない。

いやおそらくもう来ないだろう。
何故か僕は確信めいた直観があった。

おねえさんはもう来ないのだ。
そう、もう来ない。
来れないのではなく、来ない。
そこにはちゃんとした意志みたいなものが感じられた。

今になってそのことを考えると、僕はとても哀しくなる。

しばらくそこで幼少期を過ごしてから僕は引っ越して別のところで小中高を過ごした。
その間に関して特筆するべきことはあまりないので割愛させていただくことにする。
それからは大学へ進み、アルバイトをしながら一人暮らしをしていた。
そしていつからだったか、その砂場のおねえさんの夢をよく見るようになった。

なんて表現していいのか難しいが、それは「生きた夢」だった。
しっかり「今」に根付き、時間の流れを感じる生きた夢だった。
風は滑らかにそよぎ、木々を揺らし雲を穏やかに運んでゆく夢だった。

これから語るのはそんな生きた夢、砂場のおねえさんがこの世界と僕にもたらす物語だ。
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