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第一話:天笠弥咲
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それは九月も終わりに差しかかった頃だった。西から東へたなびく雲が、縁をぼかしながら鈍い黄熱色を含んでゆっくりと流れていく。空気は少し乾いている。火鶴の羽が空の青さを散らしていきながら、秋風が木々の葉先をそっと撫でて揺らす。
太陽が家屋に飲み込まれるように沈んでいくのを眺めながら、あぁ。今日もまた一日が終わるんだな、そんなことをぼんやり考えていた。
店先を掃いている私にしゃがれた気配が近づいてきた。
「坊っちゃん、今日の夕暮れはなんだか不気味じゃあないかねぇ?」
そう言って私の箒を止めたのは、もにょもにょと聞き取りづらい話し方をする老婆だ。まず先に目が行ったのは歯。不揃いで汚らしい茶黄色な歯だろうか。茶渋でも塗っているのかと疑う程だ。それから着物は真っ黒で、所々破れているし、裾に至っては千切れてぼろ布のようになっている。まるで夜中の墓場から這い出てきたかのような出で立ちである。
一瞬ぎょっとしてから、おずおずと老婆の問いかけに答えることにした。
「私にはいつもと変わらない普通の夕暮れだと……」老婆は驚いた顔で、まじまじと私を見つめてきた。
そして何かを悟ったかのように目を細めて笑った。見透かされているようで肌に泡が立っていく。なんて、なんて――気持ち悪い!!
「んっ。良い運が舞い込んでるよ坊ちゃん……人に良いことしなぁ」老婆は牛蒡の様な人差し指を、私と私の店に立てて言っているのだ。
「……それはつまり、閑古鳥の巣と化した私の店――天笠螺湮城骨董店の商売繫盛。将来繁盛と予言しているのですか?」
私が聞くと、老婆は大きく笑ってから言った。
「いいや違うさぁね。ただ……今よりずっと面白い事が起こるだろうって意味かねぇ」
何のことか分からずに考えてしまう。人に良いことするだけで運が舞い込むというのなら……「あの、お夕飯を一緒に。あれ?」
その老婆はどこかへ消えてしまった。本当に幽霊のように忽然と姿を消してしまったのだ。まぁきっと私が驚いている様子を愉快そうに見て、何処かへと去って行っただけだろう。うん。そうだ。
私は自分に言い聞かせるように呟いて掃除を再開させた。日が完全に沈みきり、薄暗闇になった頃に私はようやく店を閉めた。外灯もないこの界隈では月明かりだけが唯一の頼りとなる時間帯だ。店の扉を開けると、店内へ涼やかな風と共に虫の音が流れ込んできた。秋口の澄み切った夜は、なんとも心地が良いものだ。それにしてもさっきの老婆は何者だったのだろうか? 気になりながらも考えることはしなかった。考えても仕方ない。そんなものよりも明日は何を売ろうかと考えなければ。そう思い直して、私は再び仕事を始めることにする。
「……さてと。明日は仕入れをしなくては……。いや。明日は休みにして、明後日にするべきだろうか?」
二階の部屋に足を踏み入れてから、ふとあることに気が付いた。鍵をかけた記憶が無いのだ。普段戸締りをしっかりしている筈なのに、今日に限って何故。私は慌てて玄関の方へ駆け出した。扉に手を掛けた時だった。突然目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。
そこから赤黒い手が伸びてきて、私の胸ぐらを力強く掴んできた。あまりの衝撃に思わず息が出来なくなる。
「お前は誰だ!?」私は必死になって抵抗するが、相手は力が強く振りほどけない。声も出せずにいると、相手の顔が見えてきた。苦しくて仕方ない中、視線だけを上に向けるとそこには瘦せこけた男の顔があった。年齢は五十半ばといったところか。私を見下ろして、こう言ってきた。
「なんでも良いから飯を恵んでくれ」
「何を――」状況は変わることなく、むしろ悪化していくばかり。男は相変わらず私を掴んだまま離さない。どうしたものかと考えていると、視界の端で動くものがあった。先程の老婆がいつの間にかそこに立っていたのだ。老婆は無表情のまま私達を見つめている。私は老婆に助けを求めることにした。だが、老婆は何も言わずに立ち去ってしまった。その背中に向かって声をかけるが、振り返ってくれることは無かった。老婆の後ろ姿は直ぐに闇夜に溶け込んでしまい、見失ってしまう。
「なんでも良いから飯を恵んでくれ。取引として貴様に異国の本を差し出す」
「おぁ!?」
そう言って力尽きたのか。男はそのまま前のめりに倒れてきた。どしんと身体中に響き渡る。――さっきの歪みは何だったんだ。あの老婆は私の幻覚か? 何も変わらない私の店の玄関。男の体重に押しつぶされたせいで、体が痛むがなんとか立ち上がることが出来た。男は意識を失っているようだったが、微かに寝息を立てていた。私は恐る恐る男の肩を揺すりながら声を掛けた。しかし起き上がることはない。私は男がこのまま死んでしまうのではないかと不安になった。死んでしまっては困る。
「起きてくれ、意識はあるか? この店は私が妹に借金して買った――」
「――なんンでも、良いカら飯を恵んでくれぇ……」
同じ言葉しか繰り返さない男。一体どんな生活をしていたのだろうか。もしや餓死寸前なのではないか。それならば何かしら食べさせてやりたいが……そう考えている内に段々と空腹を感じてくる自分がいた。もう夕飯を食べなくてもいいかと思ったのだが、今にも死にそうな人を前にしてそんな無慈悲なことを言えるわけがない。
「あの……お夕飯は沢庵と麦飯、お豆腐の味噌汁ですよ」
次に軽く頬を叩きつつ、献立を言うと男が僅かに反応を示した。どうやら食い意地が、いや失礼生きているようだ。
良かった。そう思い、一安心すると気が緩んでしま……いけない! 私はこれが夢ではないことを確かめる為に、店の扉に手を掛け鍵をきちんと掛ける。こんな場所で野垂れ死にされては困るので店に置いてあった救急箱を持ち出し、男を店の椅子に座らせた。
救急箱の中には実家から盗ってきた薬や包帯だらけ。妹の小言が綴られた紙切れを取り出してから男の傷の手当てを始めた。と言っても手先、特に爪が割れて剝がれかけているくらいだ。きっと金槌の扱いが下手くそなんだろう。消毒して、塗り薬を塗った後に包帯を巻いた。これで良し。次は――お夕飯だ。
■
「もう目が覚めましたか? あの、お夕食べますか?」
私は台所から二人分のお茶碗と箸をのせた漆器のお盆を片手に聞いた。こんもりと盛り上がっていた布団が微かに動くので、近くにより男を見る。男はぼんやりとした眼差しで私を見ていた。まだどこか虚ろげだが一応微かに返事をする。目を開けた男は上半身を起こす。
男の目の前にはご飯と味噌汁と少しばかりの漬物が載ったちゃぶ台があった。……麦飯はちゃんと炊けているだろうか? 何気に私は麦飯を炊くのが昔から嫌いだった。 不安になったが、匂いは大丈夫……大丈夫だよな。
「あぁ……ありがとう、食べる」
水を飲んだ男は少し元気になったらしく、はっきりとした声で答えてくれた。
「お口に合えば良いんですけど……」
「頂きます……」
微かに震えていた指先は麦飯を一口、口へ含ませると収まった。咀噛する様子はまるでリスみたいで可愛らしい。ふと、男は思い出したようにこう言った。
「俺は……佐川梅夫だ」そういえば自己紹介がまだだった。佐川とは……この当たりでは決して聞かぬ名字だ。身なりは古臭く錆びた金属の匂いを纏っている。よく見れば男の顔には細かい傷がいくつもついている。あの力強さはどこから来ていたのか、私といい勝負をする程の細く弱々しい腕。
「私は天笠弥咲と言いまして――」私の名前を聞くなり、男は目を大きくさせた。
「天笠弥咲……? 天笠?」
そう言うと男は、私の名前を繰り返して呟いていた。
「私の名前をご存知で?」
「天笠と言ったら、もう……そうか。俺を助けてくれたアンタが四神家の一つ天笠家の坊っちゃんとは。いやすまない命の恩人に対して無作法な事を」
先程までの口調は何処かへ消え失せてしまったのか。それともこれがこの男の素なのか分からない。ただひとつだけ分かったことがある。――この男、変人だ。私のことを天笠家の者と知った途端に、先程まで死にかけだった男が嘘のように饒舌になる。それに……どう見ても今の私が坊っちゃんと呼ばれるような身分でない事は確かだ。そもそもこんな薄汚れた浪人を助けた事を妹や近隣の者に知られたら、恥晒しも良いところだ。
太陽が家屋に飲み込まれるように沈んでいくのを眺めながら、あぁ。今日もまた一日が終わるんだな、そんなことをぼんやり考えていた。
店先を掃いている私にしゃがれた気配が近づいてきた。
「坊っちゃん、今日の夕暮れはなんだか不気味じゃあないかねぇ?」
そう言って私の箒を止めたのは、もにょもにょと聞き取りづらい話し方をする老婆だ。まず先に目が行ったのは歯。不揃いで汚らしい茶黄色な歯だろうか。茶渋でも塗っているのかと疑う程だ。それから着物は真っ黒で、所々破れているし、裾に至っては千切れてぼろ布のようになっている。まるで夜中の墓場から這い出てきたかのような出で立ちである。
一瞬ぎょっとしてから、おずおずと老婆の問いかけに答えることにした。
「私にはいつもと変わらない普通の夕暮れだと……」老婆は驚いた顔で、まじまじと私を見つめてきた。
そして何かを悟ったかのように目を細めて笑った。見透かされているようで肌に泡が立っていく。なんて、なんて――気持ち悪い!!
「んっ。良い運が舞い込んでるよ坊ちゃん……人に良いことしなぁ」老婆は牛蒡の様な人差し指を、私と私の店に立てて言っているのだ。
「……それはつまり、閑古鳥の巣と化した私の店――天笠螺湮城骨董店の商売繫盛。将来繁盛と予言しているのですか?」
私が聞くと、老婆は大きく笑ってから言った。
「いいや違うさぁね。ただ……今よりずっと面白い事が起こるだろうって意味かねぇ」
何のことか分からずに考えてしまう。人に良いことするだけで運が舞い込むというのなら……「あの、お夕飯を一緒に。あれ?」
その老婆はどこかへ消えてしまった。本当に幽霊のように忽然と姿を消してしまったのだ。まぁきっと私が驚いている様子を愉快そうに見て、何処かへと去って行っただけだろう。うん。そうだ。
私は自分に言い聞かせるように呟いて掃除を再開させた。日が完全に沈みきり、薄暗闇になった頃に私はようやく店を閉めた。外灯もないこの界隈では月明かりだけが唯一の頼りとなる時間帯だ。店の扉を開けると、店内へ涼やかな風と共に虫の音が流れ込んできた。秋口の澄み切った夜は、なんとも心地が良いものだ。それにしてもさっきの老婆は何者だったのだろうか? 気になりながらも考えることはしなかった。考えても仕方ない。そんなものよりも明日は何を売ろうかと考えなければ。そう思い直して、私は再び仕事を始めることにする。
「……さてと。明日は仕入れをしなくては……。いや。明日は休みにして、明後日にするべきだろうか?」
二階の部屋に足を踏み入れてから、ふとあることに気が付いた。鍵をかけた記憶が無いのだ。普段戸締りをしっかりしている筈なのに、今日に限って何故。私は慌てて玄関の方へ駆け出した。扉に手を掛けた時だった。突然目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。
そこから赤黒い手が伸びてきて、私の胸ぐらを力強く掴んできた。あまりの衝撃に思わず息が出来なくなる。
「お前は誰だ!?」私は必死になって抵抗するが、相手は力が強く振りほどけない。声も出せずにいると、相手の顔が見えてきた。苦しくて仕方ない中、視線だけを上に向けるとそこには瘦せこけた男の顔があった。年齢は五十半ばといったところか。私を見下ろして、こう言ってきた。
「なんでも良いから飯を恵んでくれ」
「何を――」状況は変わることなく、むしろ悪化していくばかり。男は相変わらず私を掴んだまま離さない。どうしたものかと考えていると、視界の端で動くものがあった。先程の老婆がいつの間にかそこに立っていたのだ。老婆は無表情のまま私達を見つめている。私は老婆に助けを求めることにした。だが、老婆は何も言わずに立ち去ってしまった。その背中に向かって声をかけるが、振り返ってくれることは無かった。老婆の後ろ姿は直ぐに闇夜に溶け込んでしまい、見失ってしまう。
「なんでも良いから飯を恵んでくれ。取引として貴様に異国の本を差し出す」
「おぁ!?」
そう言って力尽きたのか。男はそのまま前のめりに倒れてきた。どしんと身体中に響き渡る。――さっきの歪みは何だったんだ。あの老婆は私の幻覚か? 何も変わらない私の店の玄関。男の体重に押しつぶされたせいで、体が痛むがなんとか立ち上がることが出来た。男は意識を失っているようだったが、微かに寝息を立てていた。私は恐る恐る男の肩を揺すりながら声を掛けた。しかし起き上がることはない。私は男がこのまま死んでしまうのではないかと不安になった。死んでしまっては困る。
「起きてくれ、意識はあるか? この店は私が妹に借金して買った――」
「――なんンでも、良いカら飯を恵んでくれぇ……」
同じ言葉しか繰り返さない男。一体どんな生活をしていたのだろうか。もしや餓死寸前なのではないか。それならば何かしら食べさせてやりたいが……そう考えている内に段々と空腹を感じてくる自分がいた。もう夕飯を食べなくてもいいかと思ったのだが、今にも死にそうな人を前にしてそんな無慈悲なことを言えるわけがない。
「あの……お夕飯は沢庵と麦飯、お豆腐の味噌汁ですよ」
次に軽く頬を叩きつつ、献立を言うと男が僅かに反応を示した。どうやら食い意地が、いや失礼生きているようだ。
良かった。そう思い、一安心すると気が緩んでしま……いけない! 私はこれが夢ではないことを確かめる為に、店の扉に手を掛け鍵をきちんと掛ける。こんな場所で野垂れ死にされては困るので店に置いてあった救急箱を持ち出し、男を店の椅子に座らせた。
救急箱の中には実家から盗ってきた薬や包帯だらけ。妹の小言が綴られた紙切れを取り出してから男の傷の手当てを始めた。と言っても手先、特に爪が割れて剝がれかけているくらいだ。きっと金槌の扱いが下手くそなんだろう。消毒して、塗り薬を塗った後に包帯を巻いた。これで良し。次は――お夕飯だ。
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私は台所から二人分のお茶碗と箸をのせた漆器のお盆を片手に聞いた。こんもりと盛り上がっていた布団が微かに動くので、近くにより男を見る。男はぼんやりとした眼差しで私を見ていた。まだどこか虚ろげだが一応微かに返事をする。目を開けた男は上半身を起こす。
男の目の前にはご飯と味噌汁と少しばかりの漬物が載ったちゃぶ台があった。……麦飯はちゃんと炊けているだろうか? 何気に私は麦飯を炊くのが昔から嫌いだった。 不安になったが、匂いは大丈夫……大丈夫だよな。
「あぁ……ありがとう、食べる」
水を飲んだ男は少し元気になったらしく、はっきりとした声で答えてくれた。
「お口に合えば良いんですけど……」
「頂きます……」
微かに震えていた指先は麦飯を一口、口へ含ませると収まった。咀噛する様子はまるでリスみたいで可愛らしい。ふと、男は思い出したようにこう言った。
「俺は……佐川梅夫だ」そういえば自己紹介がまだだった。佐川とは……この当たりでは決して聞かぬ名字だ。身なりは古臭く錆びた金属の匂いを纏っている。よく見れば男の顔には細かい傷がいくつもついている。あの力強さはどこから来ていたのか、私といい勝負をする程の細く弱々しい腕。
「私は天笠弥咲と言いまして――」私の名前を聞くなり、男は目を大きくさせた。
「天笠弥咲……? 天笠?」
そう言うと男は、私の名前を繰り返して呟いていた。
「私の名前をご存知で?」
「天笠と言ったら、もう……そうか。俺を助けてくれたアンタが四神家の一つ天笠家の坊っちゃんとは。いやすまない命の恩人に対して無作法な事を」
先程までの口調は何処かへ消え失せてしまったのか。それともこれがこの男の素なのか分からない。ただひとつだけ分かったことがある。――この男、変人だ。私のことを天笠家の者と知った途端に、先程まで死にかけだった男が嘘のように饒舌になる。それに……どう見ても今の私が坊っちゃんと呼ばれるような身分でない事は確かだ。そもそもこんな薄汚れた浪人を助けた事を妹や近隣の者に知られたら、恥晒しも良いところだ。
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