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Knock my Heart
Knock my Heart⑦
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「頑張ろうね。」
私は小さな声で、でも2人に聞こえるように言う。2人はコクリと小さく頷く。みんな、緊張しているのだろう。その緊張している2人の姿を見ると、私だけではないという安心感を得る。
「君たち―。緊張してるねー。」
私たちがステージ下で待機していると、知らない女性が声を掛けてきた。長い黒髪にスラっと伸びた手足、キリっとした目に大人っぽがにじみ出ている。
「...そうですね。」
私が小さな声で答える。
「初々しいねー。若さだよ。まぁ楽しんでやりなよ。演奏が全てなんだからさ。」
お姉さんはバーッと言いたいことを言って、手を振りながら去っていった。
「何だったんだろうね?知ってる人?」
お姉さんが去って行ったあと、ずっと黙っていた明音が呟いた。
「私は、知らない。」
千代さんがまず答える。
「私も知らないかな。」
私は答える。
「そっかぁ。でも・・・」
「出番でーす。ステージにお願いします。」
スタッフさんの声に遮られて、明音の言葉の最後は聞き取れなかった。
ステージに上がり、ベースをアンプにつなぐ。そして、一度3人で真ん中に集まる。
「最初、なんて言えばいいかな?盛り上がれーとか?」
明音が言う。
「流石にそれは...。バンド名とか?」
私は、そこでバンド名を付けてなかったことに気づく。
「そっか。終わったら決めようか。今日は適当にあいさつしようか。」
千代さんからの提案に私と明音は頷く。
「おっけー。じゃあ頑張ろうか。」
私たちのバンドでは、こんな感じで、明音が仕切ってくれている。そんな明音の号令で、私たちは位置に着く。
「今日は1曲だけやります。よろしくお願いします!」
明音が芯の通った声で言い、リズムをとる。そして、演奏が始まった。
前奏が始まるところで、私はふと前を見る。お客さんは少なかったが、それでもみんなが私の方を見ている。一瞬、私は足がすくんでしまう。それでも、「もっと上手に」という決意から、食いしばる。食いしばり、周りの音をよく聞く。明音のドラムに合わせて、ベースを弾いていく。
ここからは私の歌の番だ。私は少し息を吸う。そして、もう一度、私はお客さんの方を見る。さっきまでのお客さんと感じが違う。時間は夕焼け時だ。そのオレンジが、お客さんの後ろから輝いている。そう見えていた一瞬、オレンジは大きくなっていき、水のように広がっていく。会場は、プールのようになり、オレンジの水で満たされていく。水位はどんどんと上がっていき、私の腰まで来た。
ふと、私は歌わないといけないと気づき、再び息を吸い、声を出す。声を出してから、私は気が付く。声が小さく、全然張れていない。もっと声を出そうと、大きく息を吸い込もうとする。それでも、もう胸くらいまで来ている水に押され、息をちゃんと吸い込めない。それでも、私は小さな声で歌う。オレンジ色の水に口までつかる。恐る恐る、私は水中で息を吸う。ほとんど空気はない。それで、もう一度、私は観客を見る。視線が刺さる。さっきまで、夕焼けと重なっているようで、少し暖かいとまで感じていた観客が、今では冬の水の中のように冷たく感じる。そして、私の歌パートは終わってしまった。
私は小さな声で、でも2人に聞こえるように言う。2人はコクリと小さく頷く。みんな、緊張しているのだろう。その緊張している2人の姿を見ると、私だけではないという安心感を得る。
「君たち―。緊張してるねー。」
私たちがステージ下で待機していると、知らない女性が声を掛けてきた。長い黒髪にスラっと伸びた手足、キリっとした目に大人っぽがにじみ出ている。
「...そうですね。」
私が小さな声で答える。
「初々しいねー。若さだよ。まぁ楽しんでやりなよ。演奏が全てなんだからさ。」
お姉さんはバーッと言いたいことを言って、手を振りながら去っていった。
「何だったんだろうね?知ってる人?」
お姉さんが去って行ったあと、ずっと黙っていた明音が呟いた。
「私は、知らない。」
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私は答える。
「そっかぁ。でも・・・」
「出番でーす。ステージにお願いします。」
スタッフさんの声に遮られて、明音の言葉の最後は聞き取れなかった。
ステージに上がり、ベースをアンプにつなぐ。そして、一度3人で真ん中に集まる。
「最初、なんて言えばいいかな?盛り上がれーとか?」
明音が言う。
「流石にそれは...。バンド名とか?」
私は、そこでバンド名を付けてなかったことに気づく。
「そっか。終わったら決めようか。今日は適当にあいさつしようか。」
千代さんからの提案に私と明音は頷く。
「おっけー。じゃあ頑張ろうか。」
私たちのバンドでは、こんな感じで、明音が仕切ってくれている。そんな明音の号令で、私たちは位置に着く。
「今日は1曲だけやります。よろしくお願いします!」
明音が芯の通った声で言い、リズムをとる。そして、演奏が始まった。
前奏が始まるところで、私はふと前を見る。お客さんは少なかったが、それでもみんなが私の方を見ている。一瞬、私は足がすくんでしまう。それでも、「もっと上手に」という決意から、食いしばる。食いしばり、周りの音をよく聞く。明音のドラムに合わせて、ベースを弾いていく。
ここからは私の歌の番だ。私は少し息を吸う。そして、もう一度、私はお客さんの方を見る。さっきまでのお客さんと感じが違う。時間は夕焼け時だ。そのオレンジが、お客さんの後ろから輝いている。そう見えていた一瞬、オレンジは大きくなっていき、水のように広がっていく。会場は、プールのようになり、オレンジの水で満たされていく。水位はどんどんと上がっていき、私の腰まで来た。
ふと、私は歌わないといけないと気づき、再び息を吸い、声を出す。声を出してから、私は気が付く。声が小さく、全然張れていない。もっと声を出そうと、大きく息を吸い込もうとする。それでも、もう胸くらいまで来ている水に押され、息をちゃんと吸い込めない。それでも、私は小さな声で歌う。オレンジ色の水に口までつかる。恐る恐る、私は水中で息を吸う。ほとんど空気はない。それで、もう一度、私は観客を見る。視線が刺さる。さっきまで、夕焼けと重なっているようで、少し暖かいとまで感じていた観客が、今では冬の水の中のように冷たく感じる。そして、私の歌パートは終わってしまった。
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