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Knock my Heart
Knock my Heart⑥
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「ありがとうございましたー。」
私たちが聞き入っていたバンドの演奏が終わる。演奏は15分くらいだろうか、それ以上に短く感じるくらい熱中して見ていた。
「かっこいい人たちだったね。なんて言うかアダルトだった!」
明音が目を輝かせている。
「うん。そうだね。あんなステージ...立ってみたい。」
ポロっと私の口からこぼれた思いは、誰かに聞こえているのか分からない。それでも、今、彼女たちの演奏を見て確かに思ったことだ。
「......私も。」
私の思いは千代さんに聞こえていたようだ。そして、彼女が同意してくれたことが、私はとても嬉しかった。
「それなら、出ちゃおう!」
私は声に導かれるように振り返る。そこには、紅葉先輩がいた。
「え...。紅葉先輩!!どうしてここに?」
千代さんがこれまで聞いたことないような、大きな声で言う。
「あれ。渚と香音から聞いてない?私たち、これからステージ出るんだけど...。」
千代さんの問いに答えたのは麻衣先輩だった。麻衣先輩の言葉を聞き、私たちは横にいた渚先輩と香音先輩の方を見る。2人ともばつの悪そうな顔をしている。そっくりだ。私は、今日の「意外な渚先輩」というイメージがあって、すっかり「普段の渚先輩」を忘れていたのだ。そう。渚先輩も香音先輩も直感型で抜けているんだった。
「お二人とも、いらしてたんですね。」
麻衣先輩からしっかり怒られている渚先輩と香音先輩を横目に、私は紅葉先輩に話しかける。
「うん。私と麻衣は、朝からステージの手伝いしてたんだ。だから、昼は渚と香音に任せてたんだけど...」
また紅葉先輩が2人に呆れている。普段の先輩たちだ。
「それはそうと、先輩たちこれから演奏なんですか?楽器は?」
明音が矢継ぎ早に問う。まだビックリしているようだ。
「1時間後に演奏だよ。楽器はあの2人の分も預けてあるよ。」
紅葉先輩は飄々と答える。私たちがアワアワしているのが馬鹿みたいだ。
「それで...。ステージに出れるんですか!?」
千代さんが待ちきれない様子で、目をキラキラさせながら、紅葉先輩に聞く。私も、一気に色んなことがあり、忘れていた。そうだ。ステージに出れるかもしれないんだ。そう思うと、体を石のように硬直させる緊張と、今日1日で1番の興奮が同時にやってくる。
「少しだけなら、大丈夫でしょ!」
紅葉先輩が明るく答える。
「でも、どうやって?楽器もないし...。」
今度は私が紅葉先輩に聞く。
「楽器は部室の持ってきてあるよー。千代のはいつもと違うのになっちゃうけど。」
紅葉先輩は、また明るく答える。何とも準備がいい。
「それは...大丈夫です。」
千代さんは小さな声で答える。少し自信がなさそうだ。
「それに、運営さんにはコネで何とかする。まぁ最後は麻衣が何とかするでしょ。」
紅葉先輩が、またまた明るく答える。一気に不安になった。
「まぁ3人とも準備しててよ。」
紅葉先輩はそう言い残すと、麻衣先輩の方に走っていった。
・・・麻衣先輩に怒られるのが3人になった。
「とにかく、準備しましょう。」
千代さんは、私と明音に練習を促す。怒られている3人を他所に、私たちは麻衣先輩から楽器のある場所を聞き、練習場に行く。
「やるのは、あの曲だよね。」
私は2人に問いかける。すると、2人は言葉には出さないがしっかりと頷く。まだベースを始めて1か月くらいで、こんな大きなステージでできるのは奇跡だと思う。アニメや漫画の物語のようだ。私は、先輩たちの前での演奏よりも上手くやろうと、強く決心した。
控室で少し練習をしていると、麻衣先輩から出演時間を教えてもらった。本当に出演できることになったようだ。私たちの出演は1曲分の時間だ。そして、出演は20分後だと聞いた。もうすぐだ。
ちょうど最後の合わせが終わった時に、スタッフさんに呼ばれた。ステージの下で待機するようにとのことだった。私たちは、スタッフさんの案内に従い、ステージ下手へと移動した。
私たちが聞き入っていたバンドの演奏が終わる。演奏は15分くらいだろうか、それ以上に短く感じるくらい熱中して見ていた。
「かっこいい人たちだったね。なんて言うかアダルトだった!」
明音が目を輝かせている。
「うん。そうだね。あんなステージ...立ってみたい。」
ポロっと私の口からこぼれた思いは、誰かに聞こえているのか分からない。それでも、今、彼女たちの演奏を見て確かに思ったことだ。
「......私も。」
私の思いは千代さんに聞こえていたようだ。そして、彼女が同意してくれたことが、私はとても嬉しかった。
「それなら、出ちゃおう!」
私は声に導かれるように振り返る。そこには、紅葉先輩がいた。
「え...。紅葉先輩!!どうしてここに?」
千代さんがこれまで聞いたことないような、大きな声で言う。
「あれ。渚と香音から聞いてない?私たち、これからステージ出るんだけど...。」
千代さんの問いに答えたのは麻衣先輩だった。麻衣先輩の言葉を聞き、私たちは横にいた渚先輩と香音先輩の方を見る。2人ともばつの悪そうな顔をしている。そっくりだ。私は、今日の「意外な渚先輩」というイメージがあって、すっかり「普段の渚先輩」を忘れていたのだ。そう。渚先輩も香音先輩も直感型で抜けているんだった。
「お二人とも、いらしてたんですね。」
麻衣先輩からしっかり怒られている渚先輩と香音先輩を横目に、私は紅葉先輩に話しかける。
「うん。私と麻衣は、朝からステージの手伝いしてたんだ。だから、昼は渚と香音に任せてたんだけど...」
また紅葉先輩が2人に呆れている。普段の先輩たちだ。
「それはそうと、先輩たちこれから演奏なんですか?楽器は?」
明音が矢継ぎ早に問う。まだビックリしているようだ。
「1時間後に演奏だよ。楽器はあの2人の分も預けてあるよ。」
紅葉先輩は飄々と答える。私たちがアワアワしているのが馬鹿みたいだ。
「それで...。ステージに出れるんですか!?」
千代さんが待ちきれない様子で、目をキラキラさせながら、紅葉先輩に聞く。私も、一気に色んなことがあり、忘れていた。そうだ。ステージに出れるかもしれないんだ。そう思うと、体を石のように硬直させる緊張と、今日1日で1番の興奮が同時にやってくる。
「少しだけなら、大丈夫でしょ!」
紅葉先輩が明るく答える。
「でも、どうやって?楽器もないし...。」
今度は私が紅葉先輩に聞く。
「楽器は部室の持ってきてあるよー。千代のはいつもと違うのになっちゃうけど。」
紅葉先輩は、また明るく答える。何とも準備がいい。
「それは...大丈夫です。」
千代さんは小さな声で答える。少し自信がなさそうだ。
「それに、運営さんにはコネで何とかする。まぁ最後は麻衣が何とかするでしょ。」
紅葉先輩が、またまた明るく答える。一気に不安になった。
「まぁ3人とも準備しててよ。」
紅葉先輩はそう言い残すと、麻衣先輩の方に走っていった。
・・・麻衣先輩に怒られるのが3人になった。
「とにかく、準備しましょう。」
千代さんは、私と明音に練習を促す。怒られている3人を他所に、私たちは麻衣先輩から楽器のある場所を聞き、練習場に行く。
「やるのは、あの曲だよね。」
私は2人に問いかける。すると、2人は言葉には出さないがしっかりと頷く。まだベースを始めて1か月くらいで、こんな大きなステージでできるのは奇跡だと思う。アニメや漫画の物語のようだ。私は、先輩たちの前での演奏よりも上手くやろうと、強く決心した。
控室で少し練習をしていると、麻衣先輩から出演時間を教えてもらった。本当に出演できることになったようだ。私たちの出演は1曲分の時間だ。そして、出演は20分後だと聞いた。もうすぐだ。
ちょうど最後の合わせが終わった時に、スタッフさんに呼ばれた。ステージの下で待機するようにとのことだった。私たちは、スタッフさんの案内に従い、ステージ下手へと移動した。
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