カラー・ロック

他島唄

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 「そういえば、歌どうする?」
 先輩の試験まであと1週間となった今日、明音が、私達が避けていた話題を切り出した。
 「普通はギターの人が歌うんじゃないの?紅葉先輩もそうだし。」
 私はてっきり千代さんだろうと思ってた。
 「別にギターが歌うなんて、決まってないわよ。ベースボーカルのバンドも結構あるし、ドラムが歌うこともあるわよ。」
 千代さんはあんまり歌いたくないようだ。

 「よし!そしたら、これからカラオケ行こう!」
 少しの静寂を閉じるように明音が、元気に提案する。
 「そうね。2人の歌も聞いてみたいし。」
 千代さんがのっかる。
 「……。」


 やって来ました。駅前のカラオケボックス。小学生の時、家族で来た以来だ。明音は、ガチャガチャと機械をいじってる。そもそも、人前で歌うなんて、いつ以来だろうか。そんな感じで私は固まっていた。
 「エントリーナンバー1番!橘明音。精一杯歌います!」
 明音は、ノリノリだ。彼女の宣誓が終わるとすぐに曲が始まる。曲は私も聞いたことがある清涼飲料水のCMソングだ。私の知っている、明音の性格とオレンジの声色と合い、まだ4月なのに夏を感じる。

 明音は、最後までパワフルに歌いきった。明音のイメージのまんまの歌だった。
 「次は千代さん行ってみよう!」
 どうやら、明音が司会のようだ。そして、私は最後みたいだ。
 「エントリーナンバー2番。鎌田千代。しっかり歌います。」
 どうやら、この宣誓も続くようだ。
 千代さんが選んだのは、まさかの洋楽だった。確か、アメリカのロックバンドだった気がする。少し古い曲だと思う。ゆっくりとした曲調に、千代さんの意外とかわいい声があわさり、天国のようだった。
 
 「洋楽とは、かっこカワイかったよ。」  
 明音が驚きながらも楽しそうに言う。
 「私も聞いたことある曲だった。意外と可愛かった。もっとクールかと。」
 私は思ったことを全て口に出していた。
 「…ありがとう。」
 千代さんは顔を真っ赤にして、恥ずかしがっている。ギターを弾いてるときや、歌ってるときは恥ずかしそうにしないのに、ホメられるのに弱いらしい。
 「さぁ最後はいろはの番だよ。」
 自分の話から逸らすように、千代さんは私に振る。ここでダダをこねても、どうにもならないだろう。そろそろ、決心するしかないようだ。

「エントリーナンバー3番。若葉いろは。緊張してるけど、頑張ります。」

 こうして、私の歌が始まった。私は、動画サイトでおすすめに流れてた曲を選んだ。女性ボーカルの曲だがかっこよくて気に入ってる。部屋とかで寝る前に聞いたりしてる曲なので、歌詞は全部覚えてる。歌ってる途中は、変じゃないかなとか、私の声と本物の声が違って違和感があったりしたが、意外と楽しく歌えた。

「いろは、意外とかっこいい系なんだね。」
 明音が、驚く。
「私もびっくりした。アイドルの曲かと思ってた。」
 千代さんも驚いていた。

 こうして、全員1回、歌い終わった。その後は、みんなで楽しくカラオケを満喫してしまっていた。
 帰り際になって、千代さんからボーカルの話が出た。明音は「うーん。」と唸っている。
 「あのさぁ…。」  
 私は、2人の歌を聞いて、そして私も歌ってみてから思ってた事を2人に話す。そしたら、2人ともその案にのってくれた。こうして、ボーカル論争は幕を閉じた。
  
 試験まであと1週間だ。
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