カラー・ロック

他島唄

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Find our color

Find our color③

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次の日、高校最初の授業は数学からだった。明音と登校している時から憂鬱ではあった。受験の時から数学は苦手で、明音に教えてもらっていたのだ。そんな憂鬱な気持ちの隣には、早く部活に行きたいというワクワクがあり、入学式の日よりも足取りは軽やかだった。そして、数学の授業は初っ端からテストだった。そんなテンションの下がる朝を乗り越え、昼食後の眠気に襲われながらも放課後を迎えた。

「1年生、集合―。」
 それぞれのパートに分かれて練習をしているとき、麻衣先輩が声掛けをした。
 「「「はーい。」」」
 軽音部の緩い雰囲気が早くも馴染み始めていた私たちは、そこそこの返事をした。
 「これから皆にはある曲の動画を見てもらうよ。よく見ててね。」
 麻衣先輩はバッグからタブレット端末を取り出し、私たちの前に置いた。
 「始まるよ。」
 麻衣先輩が動画の再生ボタンを押した。
 真っ暗な画面にスポットライトで照らされたステージが現れた。そこには3人組の制服を着たバンドの姿があった。私たちと同じ制服だったが、顔は知らない。
 「1,2,3,4」
 ドラムの掛け声に合わせて演奏が始まる。
 先輩たちがデモンストレーションの時に演奏していた曲に似ている。というか、歌詞は一緒のようだ。
 しかし、彼女たちの演奏が作る絵はあの時とは全く別物だった。先輩たちの演奏は、紅葉先輩の真っ赤な歌声を中心に、他のパートがそれを支える色をだす演奏だった。動画の演奏は、それぞれのパートが自分の個性を前面に押し出していた。しかし、それがぶつかることなく纏まっている色彩豊かな演奏だった。その色彩は、サビに入った瞬間にあたり一面を色づける。スポットライトは当たっていないはずなのに、明るくなる。紅葉先輩たちとは違った明るさだ。そして、余韻を残すように曲が終わる。

 「いつ見てもすごいね。」
 紅葉先輩が少し悔しそうに言った。
 「ホント、上手いよねー。」
 渚先輩もそれに乗っかる。
 「まぁ、私たちには私たちの演奏があるから...。」
 麻衣先輩が悔しそうに負け惜しみのようなことを言った。
 「まだ、追いつけないね。いつかは...。」
 紅葉先輩は悔しそうだ。

 「さぁ1年生諸君。君たちにもこの曲を演奏してもらいます。」
 渚先輩が場の雰囲気を変えるように、明るく宣言した。
 「え...?」
 私は驚きのあまり言葉を失った。
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