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異世界転生編
ヤンキー レベルアップする
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《レベルが上がりました》
確かにそう拳の頭の中で響いた日本語。
しかし、それは人が発したものとはことなり抑揚がなく、機械から発せられているかのように無機質だった。
拳は声の主を探すためにその場で首を巡らせたが、辺りには誰もおらず、先程自分が倒したゴブリン達が転がっているだけだった。
「おい!さっきのは誰だ!?」
訳が分からず大声を上げる拳。
ザーーーーーーー。
返事はなく、穏やかな風の音だけが拳の耳をくすぐる。
草原でひとり、誰もいない空間に向かって問いかける様は、かなりシュールな光景だった。
都会で見かければまず避けて歩かれる事案である。
「チッ。マジでなんなんださっきの」
レベルという意味は拳にも分かる。
それが今の戦闘で上がったのだろうという事も分かった。
ただ、ゲームや流行りの転生ものの小説を好まなかった拳には、まず生きている人とは思えない機械的な何かに、唐突にそれを告げられたことに気持ち悪さを感じていた。
仮にそういったコンテンツが好物な人種が今のアナウンスを聞いたら、小躍りして喜んでいただろう。
すぐに必死にステータス画面を開こうとしたかも知れない。
しかし、拳にはそんなことも分からない。
唯一わかったことと言えば、先ほどよりも何か力が湧き出るような感覚がある。
その程度だった。
そのためレベルアップについて深く調べる事もなく、拳は直ぐに先程の声について無視することにし、目の前の事を整理することにした。
ゴブリンの死体と広大な草原。
穏やかな風景に物騒なモンスターの死骸が追加されただけだったが、およそ地球では見たことのない生物。
「異世界ってやつか」
以前に学校のオタク連中が話しているのを聞いた、地球ではないどこか。
剣と魔法の世界。
ファンタジーの産物。
「まぁ、バカが考えても仕方ないわな」
拳は眉間にシワを寄せ今の状況どうするか考えようとしたが、早々に諦めた。
「さて、んじゃ仕切り直してこっちに行くか」
そう言ってゴブリンの登場で中断された丘の向こうへの移動を再開した。
◇
「今度はあいつら出なかったな」
残念そうな色を滲ませながら拳は呟くと、ようやく辿り着いた丘の頂上から眼下を見下ろした。
「お?」
視界は相変わらず草の緑で埋め尽くされていたが、かなり先にその緑を絶つかのように細い道が上下に走っていた。
その道をさらに上のほうにたどって行くと、明らかに人工物と思われる木の柵が見えた。
「だりぃな。遠すぎだろ、あれ」
目標にできるものを見つけた嬉しさはあったが、歩いて行けるか怪しいくらいの距離に思わずげんなりした声が漏れる。
「あーーーーーー」
身体に溜まった何かを吐き出すように、天を仰いで声を上げる拳。
「歩くか」
ひとしきり声を出すと、ついさっき落ち込んだテンションが嘘のようにスッキリとした顔で歩き出した。
◇
「ふぅ」
丘を下ること1時間程度。
ようやく道に辿り着いた。
本当は距離的にももっと早く着けたが、途中何度もゴブリンを見つけ、その都度立ち止まって倒していったため、余計に時間が掛かってしまっていた。
さきほど丘の上から見た時は何かがいるとは確認できず、ゴブリンとの距離が数メートル程度になってやっと分かるといった具合だったため不思議に思った拳だったが、草の上に倒れているゴブリンを見ていると彼らの体色と草の色が保護色になっていることに気付いた。
「タコみたいな奴らだな」
思わずその時は呟いたが、この辺りの人たちの間ではわりと常識の事であり、その特性を活かしてゴブリン達が草むらに潜み、狩りをする事も同じようによく知られている事だった。
グリーンゴブリン。
安直な名前だが、人々はこの種類のゴブリンをそう呼んでいた。
そんな特性や名前を当然知りもしない拳にとっては、本来彼らは脅威になるはずだったが、実際には拳のほうが先にゴブリン達を見つけ倒して回っていた。
野生の勘とも言えるようなその感覚は、暗い夜の路地裏で敵を探るうちに身についた能力だった。
およそ普通の日本人には必要のない能力。
だが、それのおかげで今はゴブリンの先手を取れ、彼らの死体を量産していた。
「そういえば、また何回かレベルアップしてたな」
機械的な音声が告げるレベルアップ。
それも都合4回ほど、丘を降りるうちに聞こえてきていた。
1回目のレベルアップの時も、拳は身体能力の上昇を感じ取っていたが、さらに4回もレベルが上がると自分の事ながら別人かと思うくらい身体の動きが違ってきていた。
「それにこれも明らかにおかしいよな」
拳は手に持った金属バットの先端を空に掲げ、不思議そうに眺めた。
何の変哲もないどこにでもある安物。
しかし先程からゴブリンを何度も殴打したそれには全くの劣化がみられなかった
「まぁ、便利だからいいか」
得意の思考放棄である。
「よし、じゃあ行くか!」
丘の上で見た集落の方を目指して、拳は歩みを再開した。
確かにそう拳の頭の中で響いた日本語。
しかし、それは人が発したものとはことなり抑揚がなく、機械から発せられているかのように無機質だった。
拳は声の主を探すためにその場で首を巡らせたが、辺りには誰もおらず、先程自分が倒したゴブリン達が転がっているだけだった。
「おい!さっきのは誰だ!?」
訳が分からず大声を上げる拳。
ザーーーーーーー。
返事はなく、穏やかな風の音だけが拳の耳をくすぐる。
草原でひとり、誰もいない空間に向かって問いかける様は、かなりシュールな光景だった。
都会で見かければまず避けて歩かれる事案である。
「チッ。マジでなんなんださっきの」
レベルという意味は拳にも分かる。
それが今の戦闘で上がったのだろうという事も分かった。
ただ、ゲームや流行りの転生ものの小説を好まなかった拳には、まず生きている人とは思えない機械的な何かに、唐突にそれを告げられたことに気持ち悪さを感じていた。
仮にそういったコンテンツが好物な人種が今のアナウンスを聞いたら、小躍りして喜んでいただろう。
すぐに必死にステータス画面を開こうとしたかも知れない。
しかし、拳にはそんなことも分からない。
唯一わかったことと言えば、先ほどよりも何か力が湧き出るような感覚がある。
その程度だった。
そのためレベルアップについて深く調べる事もなく、拳は直ぐに先程の声について無視することにし、目の前の事を整理することにした。
ゴブリンの死体と広大な草原。
穏やかな風景に物騒なモンスターの死骸が追加されただけだったが、およそ地球では見たことのない生物。
「異世界ってやつか」
以前に学校のオタク連中が話しているのを聞いた、地球ではないどこか。
剣と魔法の世界。
ファンタジーの産物。
「まぁ、バカが考えても仕方ないわな」
拳は眉間にシワを寄せ今の状況どうするか考えようとしたが、早々に諦めた。
「さて、んじゃ仕切り直してこっちに行くか」
そう言ってゴブリンの登場で中断された丘の向こうへの移動を再開した。
◇
「今度はあいつら出なかったな」
残念そうな色を滲ませながら拳は呟くと、ようやく辿り着いた丘の頂上から眼下を見下ろした。
「お?」
視界は相変わらず草の緑で埋め尽くされていたが、かなり先にその緑を絶つかのように細い道が上下に走っていた。
その道をさらに上のほうにたどって行くと、明らかに人工物と思われる木の柵が見えた。
「だりぃな。遠すぎだろ、あれ」
目標にできるものを見つけた嬉しさはあったが、歩いて行けるか怪しいくらいの距離に思わずげんなりした声が漏れる。
「あーーーーーー」
身体に溜まった何かを吐き出すように、天を仰いで声を上げる拳。
「歩くか」
ひとしきり声を出すと、ついさっき落ち込んだテンションが嘘のようにスッキリとした顔で歩き出した。
◇
「ふぅ」
丘を下ること1時間程度。
ようやく道に辿り着いた。
本当は距離的にももっと早く着けたが、途中何度もゴブリンを見つけ、その都度立ち止まって倒していったため、余計に時間が掛かってしまっていた。
さきほど丘の上から見た時は何かがいるとは確認できず、ゴブリンとの距離が数メートル程度になってやっと分かるといった具合だったため不思議に思った拳だったが、草の上に倒れているゴブリンを見ていると彼らの体色と草の色が保護色になっていることに気付いた。
「タコみたいな奴らだな」
思わずその時は呟いたが、この辺りの人たちの間ではわりと常識の事であり、その特性を活かしてゴブリン達が草むらに潜み、狩りをする事も同じようによく知られている事だった。
グリーンゴブリン。
安直な名前だが、人々はこの種類のゴブリンをそう呼んでいた。
そんな特性や名前を当然知りもしない拳にとっては、本来彼らは脅威になるはずだったが、実際には拳のほうが先にゴブリン達を見つけ倒して回っていた。
野生の勘とも言えるようなその感覚は、暗い夜の路地裏で敵を探るうちに身についた能力だった。
およそ普通の日本人には必要のない能力。
だが、それのおかげで今はゴブリンの先手を取れ、彼らの死体を量産していた。
「そういえば、また何回かレベルアップしてたな」
機械的な音声が告げるレベルアップ。
それも都合4回ほど、丘を降りるうちに聞こえてきていた。
1回目のレベルアップの時も、拳は身体能力の上昇を感じ取っていたが、さらに4回もレベルが上がると自分の事ながら別人かと思うくらい身体の動きが違ってきていた。
「それにこれも明らかにおかしいよな」
拳は手に持った金属バットの先端を空に掲げ、不思議そうに眺めた。
何の変哲もないどこにでもある安物。
しかし先程からゴブリンを何度も殴打したそれには全くの劣化がみられなかった
「まぁ、便利だからいいか」
得意の思考放棄である。
「よし、じゃあ行くか!」
丘の上で見た集落の方を目指して、拳は歩みを再開した。
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