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第二章 少年期編
突然の来訪者
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「いや、マジで分からん」
三人が転移する前に元いた場所。
宝箱のあった広間に揃って返されると、第一声ルカの口から漏れたのはそんな言葉だった。
「そうですね」
ルドルフもそのルカの発言に同意するところがあったのだろう、深く頷いた。
「そもそも、なに?あの空間。いきなり襲ってくるでもなく、ひたすら歩かせたと思ったら別空間にルゥを転移させてるし、普通にアイテムを渡せば良いのにあんな演出までして」
ダンジョンというものは、何者かによる創作物である。
そういう話をルカは書物で見た気がするが、確かに自然に出来たものがあんな変な仕様にはなり得ないだろう。
どこかでその創造者が、冒険者の右往左往する姿を見ながら楽しんでいるのではないか。
そんな考えが湧き起こるほど、イタズラ心と悪意を孕んでいた。
それらに大いに振り回されることになったルカとしては、愚痴のような言葉を吐いたとしても仕方ないだろう。
「いやぁ、ほんと。手強かったっすねぇ」
「「お前が言うな、お前が」」
原因の一端が何を、と鋭いツッコミが二方向から飛ぶ。
「しかし、あの罠で時間を使いすぎました。今日のところは一旦ここまでで切り上げて、また明日以降に来ましょう」
ジロリとルゥのほうに視線をやりながら、ルドルフが提案する。
ゔっと小さくルゥが呻いたが、追い打ちをかけるように彼女の方を向きながらルカも頷いた。
「そうだね、僕も疲れたよ」
ゔっと、もう一度ルゥが呻いたが、二人の催促するような視線に押され、先頭のルゥから歩き始めた。
疲れを感じさせるゆっくりとした足取りで三人はダンジョンを後にしたのだった。
◇
「ルカ様にお客様です」
「え?」
さて今日こそリベンジだ、と身支度をしていたルカの部屋にリーナが訪れる。
曰く、お客様が来たということらしい。
しかし、ルカは今日予定が入っていたという事など誰からも聞いていない。
唐突で心当たりのない来客に戸惑っていると、事情を察したリーナが補足した。
「ご記憶に無いのでしたら、飛び込みでしょう」
「飛び込み!?」
そんな保険会社の営業のような話があるのだろうかとルカは驚いた。
仮にリーナの言うように飛び込みだとして、何を求めての行為なのか。
「要件は?」
「仲間にしてほしい、と仰ってました」
仲間という事は、探索への同行をしたいという事だろう。
しかし、なぜ自分のところに。
確かにチートな成長薬のおかげで、同年代の子供と比較しても遥かに強力な力を持っていると思われる。
それでもその力を誰かに披露したのは、ごく少数の人の前でのみ。
強い子供がいる。
そんな話が広がるようにも思えなかった。
では、それ以外の何かなのか。
そうルカは思ったが、それこそ心当たりがない。
唯一、誰にも話していない-転生者である事-については両親にすら話していない。
どうやらこの世界の人達にとっては、転生という事象は信じられている事であり、漏れなくその転生者達が強力な能力を持っていることから、発見次第、その発見者は国に報告する義務が課されていると聞いてしまったからだ。
(それに自分の子供が転生前はオッサンだったなんて知りたく無いだろうしね)
真実を打ち明けた時の二人の複雑な表情が予想され、改めてこの事は胸に秘めておこうとルカは思った。
「あの……ルカ様?どうされましたか?事前のアポイントもございませんでしたので、都合が悪ければお帰りいただいても全く問題ないと思いますが」
「あ!ごめん、ごめん。大丈夫!とりあえず会ってみるよ」
心当たりは依然として全くなかったが、どんな理由にせよ、自分のような子供の所にきて仲間にして欲しいというのがどんな人物か興味が沸き、断りを入れるために去ろうとしたリーナを引き留めるルカ。
「案内してもらえる?」
なんとなく面白い人な気がする。
そんな根拠のない予感にうっすらと笑みを浮かべながら、ルカはリーナに案内をお願いした。
三人が転移する前に元いた場所。
宝箱のあった広間に揃って返されると、第一声ルカの口から漏れたのはそんな言葉だった。
「そうですね」
ルドルフもそのルカの発言に同意するところがあったのだろう、深く頷いた。
「そもそも、なに?あの空間。いきなり襲ってくるでもなく、ひたすら歩かせたと思ったら別空間にルゥを転移させてるし、普通にアイテムを渡せば良いのにあんな演出までして」
ダンジョンというものは、何者かによる創作物である。
そういう話をルカは書物で見た気がするが、確かに自然に出来たものがあんな変な仕様にはなり得ないだろう。
どこかでその創造者が、冒険者の右往左往する姿を見ながら楽しんでいるのではないか。
そんな考えが湧き起こるほど、イタズラ心と悪意を孕んでいた。
それらに大いに振り回されることになったルカとしては、愚痴のような言葉を吐いたとしても仕方ないだろう。
「いやぁ、ほんと。手強かったっすねぇ」
「「お前が言うな、お前が」」
原因の一端が何を、と鋭いツッコミが二方向から飛ぶ。
「しかし、あの罠で時間を使いすぎました。今日のところは一旦ここまでで切り上げて、また明日以降に来ましょう」
ジロリとルゥのほうに視線をやりながら、ルドルフが提案する。
ゔっと小さくルゥが呻いたが、追い打ちをかけるように彼女の方を向きながらルカも頷いた。
「そうだね、僕も疲れたよ」
ゔっと、もう一度ルゥが呻いたが、二人の催促するような視線に押され、先頭のルゥから歩き始めた。
疲れを感じさせるゆっくりとした足取りで三人はダンジョンを後にしたのだった。
◇
「ルカ様にお客様です」
「え?」
さて今日こそリベンジだ、と身支度をしていたルカの部屋にリーナが訪れる。
曰く、お客様が来たということらしい。
しかし、ルカは今日予定が入っていたという事など誰からも聞いていない。
唐突で心当たりのない来客に戸惑っていると、事情を察したリーナが補足した。
「ご記憶に無いのでしたら、飛び込みでしょう」
「飛び込み!?」
そんな保険会社の営業のような話があるのだろうかとルカは驚いた。
仮にリーナの言うように飛び込みだとして、何を求めての行為なのか。
「要件は?」
「仲間にしてほしい、と仰ってました」
仲間という事は、探索への同行をしたいという事だろう。
しかし、なぜ自分のところに。
確かにチートな成長薬のおかげで、同年代の子供と比較しても遥かに強力な力を持っていると思われる。
それでもその力を誰かに披露したのは、ごく少数の人の前でのみ。
強い子供がいる。
そんな話が広がるようにも思えなかった。
では、それ以外の何かなのか。
そうルカは思ったが、それこそ心当たりがない。
唯一、誰にも話していない-転生者である事-については両親にすら話していない。
どうやらこの世界の人達にとっては、転生という事象は信じられている事であり、漏れなくその転生者達が強力な能力を持っていることから、発見次第、その発見者は国に報告する義務が課されていると聞いてしまったからだ。
(それに自分の子供が転生前はオッサンだったなんて知りたく無いだろうしね)
真実を打ち明けた時の二人の複雑な表情が予想され、改めてこの事は胸に秘めておこうとルカは思った。
「あの……ルカ様?どうされましたか?事前のアポイントもございませんでしたので、都合が悪ければお帰りいただいても全く問題ないと思いますが」
「あ!ごめん、ごめん。大丈夫!とりあえず会ってみるよ」
心当たりは依然として全くなかったが、どんな理由にせよ、自分のような子供の所にきて仲間にして欲しいというのがどんな人物か興味が沸き、断りを入れるために去ろうとしたリーナを引き留めるルカ。
「案内してもらえる?」
なんとなく面白い人な気がする。
そんな根拠のない予感にうっすらと笑みを浮かべながら、ルカはリーナに案内をお願いした。
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