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第64話 閑話_3 蟲使い系のスキルはチート過ぎます。

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銀行の中では、五人の男が占拠していた。

「早くしやがれ!さっさと金入れねえと目に見える奴からぶっ殺すぞ!」

「ひ、ひぃ!わかりました!」

銀行の支店長は、バッグに現金を詰め込んでいく。

「こ、これで全部になります…。」

「これだけだと!?ふざけんじゃねえ!もっとあるだろうが!」

現金の少なさに激昂する強盗犯。

「そ、そういわれましても銀行自体にはそんなに現金を置いては無く…。」

「ふざけやがって!!」

「ぐえっ!」

銀行の支店長を殴る強盗犯。
支店長は体が浮くほどの強い勢いで殴り飛ばされた。

強盗犯はステータスを獲得していたのだ。
ステータスを獲得しているのは、殴った強盗犯だけでなく五人の強盗犯全員だ。

「おい、どうなってやがる!銀行を襲っちまえば大金が手に入るんじゃなかったのか!?」

「話がちげえじゃねえか!」

思ったよりも少ない現金に強盗犯達は動揺する。
それもそうだ。大きいバッグを三つ準備したのにもかかわらず、一つ目のバッグにしか現金が入っていないのだから。
しかもそのバッグも半分以上余りがある。

「チッ、仕方ねえ。めんどくせえがここのやつら全員人質にして身代金でも請求するか。」

「おお!なるほどな、それなら金も手に入るだろう。」

「大丈夫か?もたもたしていると、俺らみたくレベルが上がっているサツが来るんじゃねえのか?」

「レベル上がってようが人質取ってりゃなにもできねーよ!問題ねえ!」

強盗犯は次の手について仲間と話していた。
その近くには小さな一匹の蠅がいた。
蠅は飛び立ち通気口から外に出て、人のいない道へと飛んで行った。


蒼汰の指には先ほど通気口から出て行った蠅が止まっている。

「…そっか。人質を取って身代金を手に入れるつもりなんだね。」

蒼汰は、蠅から情報を聞いた。
蟲使いは蟲と意思が疎通できる為、このように情報収集に関しても活躍ができる職業なのだ。

「そっか~。早く行かないとだね~。」

「…そうだね、向かおうか。僕は通気口から入って強盗犯を攪乱するよ。」

「わかった~。奏はてきとうなところから入るね~。」

「…大丈夫?」

奏の「てきとうなところ」とは一体どこの事なのだろうと気になった蒼汰。

「大丈夫だよ~!奏は蒼汰のお姉ちゃんなんだから!」

胸を張ってお姉ちゃん振る奏。
それを見た蒼汰は余計に心配になったが、とりあえず人質を優先せねばと気持ちを切り替える。

「…じゃあ、行ってくるよ。」

そう言うと、蒼汰の体の一部がどんどん崩れていった。
崩れた部分は複数の蜂となっていく。
最終的に蒼汰の体すべてが蜂の大群と化し、銀行の通気口へと向かっていった。

「わ~。蒼汰凄いスキルもってるね~。奏も負けてられない!」

奏は人にばれないよう、銀行へと向かった。

その頃、強盗犯は警察と電話していた。

「人質を殺されたくなかったら、10億用意しろ!早く用意しねえと人質を殺していくからな!…なんだと?用意するのに時間がかかる?話にならねえな。それじゃあ人質を殺されても良いってことか。よし、見せしめに数人殺してやるよ。」

警察に金を用意するのに時間がかかると言われて苛立った強盗犯は、集められている人質のもとへ向かう。

「おいてめえら、警察はてめえらの事を見放したようだ!これから選別して殺していくから覚悟しろ。」

まだ、警察との電話は繋がっており、あえて警察に聞こえるように人質に話す強盗犯。

「や、やだ!死にたくない!」

「け、警察は本当に私たちを見放したのか…。」

人質となった人たちは、強盗犯の言葉に絶望する。

「は!サツの野郎、焦って何か言ってるが構いやしねえ。何人か殺してやれ!」

「おうよ!」

別の強盗犯が人質の方に向かおうとするが…。

ブブブブ…

「あ?何の音…いてぇ!」

「どうした!外のサツの野郎か!?」

突然、痛みを訴えた仲間に驚く強盗犯。

「違う!くっそ、蜂だ!なんでこんなところに…。」

蜂に刺された強盗犯は、周りを見渡す。

ブブブブブ…。

「お、おい。なんだ、ここら辺に蜂の巣でもあるのか?…なんでこんなに蜂が?」

蜂は数十匹ほど周りを飛んでおり、どんどんと数を増やしていく。

「消火器だ!消火器で追い払え!」

「ま、まて、何か変だぞ…。」

強盗犯は消火器を使って追い払おうとしたが、蜂はおかしな行動を取る。
蜂は大量に集まり、人のような形を作っているのだ。
強盗犯だけでなく、人質となった人たちも蜂に目を奪われる。

蜂たちは完璧に密集する。
そして密集すると同時に蜂は蜂でなくなった…人となったのだ。

「人?仮面…黒い狐の仮面をしているぞ!」

「い、いったい何が起こってやがる!?」

強盗犯も人質も皆一様に動揺する。




「…あ、お邪魔します…。」

蒼汰のその一言に皆の時は止まったのであった。
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