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15.ずっと支えてくれていたもの
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――私は、本当の家族に必要とされなかった……。
ラルドリスたちが宿を発って一日が過ぎ……その後もなお、メルは目覚めずにいた。
閉ざした心が生んだ夢の片隅に座り込み、これまでの色々なことを思い返していた。
物心がつくころには、自分から興味を失くしてしまった両親。
上辺だけの感情が交わされ、どこか無機質で、温かみの感じられない貴族の家。
容姿、頭脳、そして人心掌握のいずれにも優れ、唯一の拠り所であった姉。
しかしそれにも見放され、メルの心には少しずつ、他人への興味が失われていった。声をかけようとしても、間に見えない壁があって、想いが決して伝わらないような気がした。
――花は、草木は、自然は好きだ。彼らは、私につらい気持ちを向けてこない。ここにいてもいいと、受け入れてくれる気がする。
庭に出ているのが好きだった。
日がな一日、ぼんやりと美しい自然を眺めているのが。
決して彼らと、心を触れ合わせることは出来ないけれど。
なにも言ってはくれないのだけれど……その静かなたたずまいが、優しく感じられて。
――この家に、居たくない……。
いつしか、そう思い始めた頃。必然の様に、そこで事件は起きた。
ある意味願い通りに追放されたメルは、そこですべてを失い……。
そして、救われた。祖母に。
『ここがお前の家だよ、メルや』
祖母は心の開き方を知らないメルに寄り添い、その孤独を癒してくれた。まだ小さかったメルと手を繋ぎ、あるいはその曲がり始めた背中にメルを負ぶり、色々なことを教えてくれた。
しかし、それも永遠には続かなかった。
……失われること。
いつかは必ず待っている別れに対してメルは抗い方も、受け入れ方もわからなくて。
手で受けた水が、隙間から漏れ出してゆくように――幸せがすり抜けてゆくのを、なすがままでいることしかできなかった。逃げるように目を逸らし、すべてが時に流されるのを待っていることしか。
――いつもそうだ。私は、つらいことから逃げてる。
自分を捨てた姉と戦うこともなく。祖母の死について……運命を呪うこともなく。
そして今回も、怖ろしいものが立ち塞がった途端、目を塞いだ。逃げ出した。
――もういい。
このまま目覚めたくないと思った。どうせ抗ったとて、徒労――苦しむだけに終わるのだから。それよりも、この安らかな気持ちを抱いたまま、朝日に飲まれる影のように消えてしまえたら。
すべてを、忘れてしまいたい。
闇夜に揺らめく灯火のように微かに浮かぶ多くの記憶たち。
魔女として交流のあったサンチノの街の人々や、旅の間に出会ったべネアやハーシア、そしてシーベルなどの姿が遠ざかる。そして、なによりも大切であった、祖母の記憶さえもが……小さくなってゆく。
しかし、それでもメルはもう動けなかった。
悲しいと思う気持ちは湧き上がってくるのに。
まるで感情と体が切り離されてしまったかのように、涙すら出てくれない。ひとつひとつ、明かりのように灯る光が闇に萎んでいく。
すべてが飲み込まれようとしている中で、メルは見つけた。
――あれは……?
朱色。金と赤の混じったような……一粒の光を。
それはとても遠くに見えた。けれどそれだけが、存在をはっきりと主張するようにメルの元へと届いた。深く刻まれた、鮮烈な赤光を放つ宝石のような記憶が、彼女の瞳をそこへ導いたのだ。
『――傍にいて俺を手伝ってくれないか。メル』
耳に新しい言葉に強く意識が惹かれ、闇の中真っ直ぐこちらを見つめる青年の姿が浮かんでいる。
そして、それだけではなく……。
(……おばあちゃん?)
隣でうっすらと、温かい気配を感じた。それは、ぼんやりとした輪郭だけで、はっきりはしない幻のようなものだったけれど。
なんとなくメルにはそれが祖母なのだと感じられた。
それは手を持ち上げると、遠くに立つラルドリスの方を指差す。そして。
『行っておあげ。勇気を出して』
そんな声が聞こえた気がした。
――うん。
その言葉に背を押され、メルは不確かな闇の中一歩を踏み出す。居心地のいい虚無から……元の世界へと戻るために。
本当はもっと、祖母と話をしたい。いや、話なんてできなくてもいいから、傍にいたい。
けれど、こんな自分を求めてくれる人が、待っている。
それに他ならぬ彼女がずっと教えてくれていたのだ。怖くても傷付いても、胸に抱いた想いを誰かに伝え、行動すること――自分を信じることの、大切さを。
――お婆ちゃん、私、やってみるから。
メルは一度だけ振り返り、祖母の姿を見つめた。
表情もなにもない、のっぺりした影のような姿だ。けれど、どこかそれは……喜んでいるようで。
――行ってきます。
気付けば進むほどに闇は、メルの目の前で夜明けの様に薄まり始めていて。
朱色の光に手を触れた瞬間。
放たれた虹のような煌きが身体を通り抜けると、背中の後ろに燻っていた闇を薄め――……。
「――あっ! お、起きたんだね、あんた。よかったねぇ」
メルの視界に、色づいた世界が映り込んでいる。
「――っ、ここは!?」
ベッドから跳ね起きたメルに驚いたのは、確かこの宿のおかみさんだ。人のよさそうなふっくらした顔に付くふたつの目がぱちくりと見開かれている。
と、同時に頭の上から何かがころころ転がった。
「キュィ……?」
チタだ、どうやらメルの頭の辺りで一緒に眠っていたらしい。つぶらな瞳の彼に触れ、現実に戻ったことを実感すると、メルはおかみさんに勢い込んで尋ねる。
「あ、あのっ! い、今はいつですか……!? 私が倒れてからどのくらい経ってます!? ラルっ……つ、連れの人たちは」
「ちょいと、起きたばっかりだから大人しくしてなきゃだけだよ! あんたが担ぎ込まれてから一日半くらいかねぇ……。連れのほら、背の高い男前の兄さんが、急ぐ旅だからあんたのことをよろしくって頼んだのさ」
「先に出たんですか!?」
「こら、寝てなって!」
「大丈夫ですっ! それより、私行かなきゃ!」
こうしてはいられない。メルはおかみさんの制止も聞かずに気よくベッドから飛び出すと、黒ローブを引っ張り出し頭を突っ込んだ。
「あ、あんたねぇ……。ったく」
そのただならない焦りようにおかみさんは渋い顔で部屋から出て行くと、一通の手紙と包みを持ってきた。
「ほら。あの兄さんがあんたが起きたら渡してくれってさ。こっちは飯。よくわかんないけど宿代ももらってるし、出たいんだったら勝手にしな」
「……ありがとう」
メルはその手紙を確認すると、おかみさんが用意してくれたサンドイッチと一緒に鞄に突っ込んで、彼女に礼を言った。
それには、ラルドリスたちが王都までに辿る道筋が詳細に書かれている。
彼ももしかしたらと、メルが眠りから覚め、合流しようとする可能性を考えていてくれたのだ。
「それじゃ行ってきます! お世話になりました!」
「徒歩じゃ追いつけないよ! 馬屋は宿を出た通りの北側にあるから――!」
玄関まで見送り出てありがたい忠告をくれたおかみさんだったが、移動手段はメルには必要ない。祖母から受け継いだ、とっておきの魔法があるのだから。
宿を出ると、もう日は煌々と辺りを照らしており、とっくに昼は過ぎている。今から彼らの後を追っても王都までに追いつけるかどうか……。
だが、今は後先考えず、心の望むままに動きたい。メルは近くにあった食料雑貨店(グロッサリー)に駆け込むと、パイプをふかした店番のおじさんに怒鳴った。
「おじいさん、そこのぴっかぴかのナスくださいっ!」「あん? ほらよ、一個銅貨一枚……って嬢ちゃん! おい待てこれ金貨だぞ! 釣りは!? 釣りよ、釣りー!!」
「要らないですっ! 『……悍馬の霊よ――』!」
メルはナスを引っ掴みおじさんに金貨を放り投げると、通りで人目もはばからずまじないを叫ぶ。
「わぁっ、一体なんだっ!?」
「いきなりデッケェ馬が!?」
「すみませ~ん、皆さんどいてっ!」
大袈裟な煙の上に見事な黒馬がいきり立ち、周りの人やおじさんが腰を抜かした。
それには目もくれず、メルは跨ると通りを走り、街を飛び出していく。
向くは東。あの我儘王子をもう一度、絶対に捕まえてやるんだ……そんな気持ちでメルは一路、まだ陰も見えない王都への道のりを猛進した。
ラルドリスたちが宿を発って一日が過ぎ……その後もなお、メルは目覚めずにいた。
閉ざした心が生んだ夢の片隅に座り込み、これまでの色々なことを思い返していた。
物心がつくころには、自分から興味を失くしてしまった両親。
上辺だけの感情が交わされ、どこか無機質で、温かみの感じられない貴族の家。
容姿、頭脳、そして人心掌握のいずれにも優れ、唯一の拠り所であった姉。
しかしそれにも見放され、メルの心には少しずつ、他人への興味が失われていった。声をかけようとしても、間に見えない壁があって、想いが決して伝わらないような気がした。
――花は、草木は、自然は好きだ。彼らは、私につらい気持ちを向けてこない。ここにいてもいいと、受け入れてくれる気がする。
庭に出ているのが好きだった。
日がな一日、ぼんやりと美しい自然を眺めているのが。
決して彼らと、心を触れ合わせることは出来ないけれど。
なにも言ってはくれないのだけれど……その静かなたたずまいが、優しく感じられて。
――この家に、居たくない……。
いつしか、そう思い始めた頃。必然の様に、そこで事件は起きた。
ある意味願い通りに追放されたメルは、そこですべてを失い……。
そして、救われた。祖母に。
『ここがお前の家だよ、メルや』
祖母は心の開き方を知らないメルに寄り添い、その孤独を癒してくれた。まだ小さかったメルと手を繋ぎ、あるいはその曲がり始めた背中にメルを負ぶり、色々なことを教えてくれた。
しかし、それも永遠には続かなかった。
……失われること。
いつかは必ず待っている別れに対してメルは抗い方も、受け入れ方もわからなくて。
手で受けた水が、隙間から漏れ出してゆくように――幸せがすり抜けてゆくのを、なすがままでいることしかできなかった。逃げるように目を逸らし、すべてが時に流されるのを待っていることしか。
――いつもそうだ。私は、つらいことから逃げてる。
自分を捨てた姉と戦うこともなく。祖母の死について……運命を呪うこともなく。
そして今回も、怖ろしいものが立ち塞がった途端、目を塞いだ。逃げ出した。
――もういい。
このまま目覚めたくないと思った。どうせ抗ったとて、徒労――苦しむだけに終わるのだから。それよりも、この安らかな気持ちを抱いたまま、朝日に飲まれる影のように消えてしまえたら。
すべてを、忘れてしまいたい。
闇夜に揺らめく灯火のように微かに浮かぶ多くの記憶たち。
魔女として交流のあったサンチノの街の人々や、旅の間に出会ったべネアやハーシア、そしてシーベルなどの姿が遠ざかる。そして、なによりも大切であった、祖母の記憶さえもが……小さくなってゆく。
しかし、それでもメルはもう動けなかった。
悲しいと思う気持ちは湧き上がってくるのに。
まるで感情と体が切り離されてしまったかのように、涙すら出てくれない。ひとつひとつ、明かりのように灯る光が闇に萎んでいく。
すべてが飲み込まれようとしている中で、メルは見つけた。
――あれは……?
朱色。金と赤の混じったような……一粒の光を。
それはとても遠くに見えた。けれどそれだけが、存在をはっきりと主張するようにメルの元へと届いた。深く刻まれた、鮮烈な赤光を放つ宝石のような記憶が、彼女の瞳をそこへ導いたのだ。
『――傍にいて俺を手伝ってくれないか。メル』
耳に新しい言葉に強く意識が惹かれ、闇の中真っ直ぐこちらを見つめる青年の姿が浮かんでいる。
そして、それだけではなく……。
(……おばあちゃん?)
隣でうっすらと、温かい気配を感じた。それは、ぼんやりとした輪郭だけで、はっきりはしない幻のようなものだったけれど。
なんとなくメルにはそれが祖母なのだと感じられた。
それは手を持ち上げると、遠くに立つラルドリスの方を指差す。そして。
『行っておあげ。勇気を出して』
そんな声が聞こえた気がした。
――うん。
その言葉に背を押され、メルは不確かな闇の中一歩を踏み出す。居心地のいい虚無から……元の世界へと戻るために。
本当はもっと、祖母と話をしたい。いや、話なんてできなくてもいいから、傍にいたい。
けれど、こんな自分を求めてくれる人が、待っている。
それに他ならぬ彼女がずっと教えてくれていたのだ。怖くても傷付いても、胸に抱いた想いを誰かに伝え、行動すること――自分を信じることの、大切さを。
――お婆ちゃん、私、やってみるから。
メルは一度だけ振り返り、祖母の姿を見つめた。
表情もなにもない、のっぺりした影のような姿だ。けれど、どこかそれは……喜んでいるようで。
――行ってきます。
気付けば進むほどに闇は、メルの目の前で夜明けの様に薄まり始めていて。
朱色の光に手を触れた瞬間。
放たれた虹のような煌きが身体を通り抜けると、背中の後ろに燻っていた闇を薄め――……。
「――あっ! お、起きたんだね、あんた。よかったねぇ」
メルの視界に、色づいた世界が映り込んでいる。
「――っ、ここは!?」
ベッドから跳ね起きたメルに驚いたのは、確かこの宿のおかみさんだ。人のよさそうなふっくらした顔に付くふたつの目がぱちくりと見開かれている。
と、同時に頭の上から何かがころころ転がった。
「キュィ……?」
チタだ、どうやらメルの頭の辺りで一緒に眠っていたらしい。つぶらな瞳の彼に触れ、現実に戻ったことを実感すると、メルはおかみさんに勢い込んで尋ねる。
「あ、あのっ! い、今はいつですか……!? 私が倒れてからどのくらい経ってます!? ラルっ……つ、連れの人たちは」
「ちょいと、起きたばっかりだから大人しくしてなきゃだけだよ! あんたが担ぎ込まれてから一日半くらいかねぇ……。連れのほら、背の高い男前の兄さんが、急ぐ旅だからあんたのことをよろしくって頼んだのさ」
「先に出たんですか!?」
「こら、寝てなって!」
「大丈夫ですっ! それより、私行かなきゃ!」
こうしてはいられない。メルはおかみさんの制止も聞かずに気よくベッドから飛び出すと、黒ローブを引っ張り出し頭を突っ込んだ。
「あ、あんたねぇ……。ったく」
そのただならない焦りようにおかみさんは渋い顔で部屋から出て行くと、一通の手紙と包みを持ってきた。
「ほら。あの兄さんがあんたが起きたら渡してくれってさ。こっちは飯。よくわかんないけど宿代ももらってるし、出たいんだったら勝手にしな」
「……ありがとう」
メルはその手紙を確認すると、おかみさんが用意してくれたサンドイッチと一緒に鞄に突っ込んで、彼女に礼を言った。
それには、ラルドリスたちが王都までに辿る道筋が詳細に書かれている。
彼ももしかしたらと、メルが眠りから覚め、合流しようとする可能性を考えていてくれたのだ。
「それじゃ行ってきます! お世話になりました!」
「徒歩じゃ追いつけないよ! 馬屋は宿を出た通りの北側にあるから――!」
玄関まで見送り出てありがたい忠告をくれたおかみさんだったが、移動手段はメルには必要ない。祖母から受け継いだ、とっておきの魔法があるのだから。
宿を出ると、もう日は煌々と辺りを照らしており、とっくに昼は過ぎている。今から彼らの後を追っても王都までに追いつけるかどうか……。
だが、今は後先考えず、心の望むままに動きたい。メルは近くにあった食料雑貨店(グロッサリー)に駆け込むと、パイプをふかした店番のおじさんに怒鳴った。
「おじいさん、そこのぴっかぴかのナスくださいっ!」「あん? ほらよ、一個銅貨一枚……って嬢ちゃん! おい待てこれ金貨だぞ! 釣りは!? 釣りよ、釣りー!!」
「要らないですっ! 『……悍馬の霊よ――』!」
メルはナスを引っ掴みおじさんに金貨を放り投げると、通りで人目もはばからずまじないを叫ぶ。
「わぁっ、一体なんだっ!?」
「いきなりデッケェ馬が!?」
「すみませ~ん、皆さんどいてっ!」
大袈裟な煙の上に見事な黒馬がいきり立ち、周りの人やおじさんが腰を抜かした。
それには目もくれず、メルは跨ると通りを走り、街を飛び出していく。
向くは東。あの我儘王子をもう一度、絶対に捕まえてやるんだ……そんな気持ちでメルは一路、まだ陰も見えない王都への道のりを猛進した。
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