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暗雲

第29話 僥倖

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「血ィ飲まなきゃ良いんだろ。お前、元々全身噛み回ってるじゃねえか」

 憤慨している俺を眺めていた旭陽が、やがて笑いながら告げた。
 血を……そうか。牙以外の歯で噛むのは問題ない、か。それもそうだ。
 そっか。全部我慢する必要はなかったな。

 気付いて少しだけ頭がすっきりする。
 ん? 旭陽、俺が普通に噛むのも駄目だって勘違いしてたことに気付いてただろうに。
 わざわざ教えてくるって、どういう心境なんだ。

「噛んで欲しいのか?」
「噛みたくねえのか?」

 思わず問い質せば、あっさりと質問を返された。こいつ……

 すりすりと項に指先を擦り付けられる。
 ぞわぞわと快感が走り、熱が甦ってくる。
 雄が膨らむのを感じながら、自分の噛み跡の上にがぶりと歯を立てた。

「っぐ、ぅ……っ」

 びくりと旭陽の体が跳ねる。
 その上に乗り上げながら、破いてしまわないうちに書類を床に落とした。
 ぱさりと乾いた音が小さく空気を揺らす。

「ンッ、ぁ、はあ……っ」

 舌で歯型をなぞれば、旭陽の呼吸が甘さを増していく。
 最近感じてることだけど、旭陽ってキスされるのと舐められるのが一番好きなのかもしれない。
 舌を這わせてるだけでいつもイきそうになってるし、気持ち良さそうな声も一番リラックスしてる。
 全身を舐め回した時なんか、数えきれないくらいイってたしその後の乱れようも凄かった。

「はっ、ぁ、んぅっ……」

 肩を上下させながら、膝を立てて俺の脇腹を擽ってくる。
 その足を掴んで顔を寄せ、堅い膝にもがぷりと噛み付いた。

「んっ!」
 驚いたように跳ねた声を聞きながら、薄く残った歯型を濡らしていく。

「っぁ、は、っ、ふ……」
 いつもよりも穏やかな、それでいて確かに性感が宿った甘い声。

「ッあ、っ」

 軽く下肢を揺らして、熱い性器を男の腹に擦り付ける。
 俺の足に当たった旭陽の欲も、熱を宿して硬くなってきていた。
 ああ、もう我慢できない。

 膝下から手を離し、腰を掴んだ。
 旭陽は驚く様子を見せずに、自ら両足を広げてみせる。
 色付いた頬が持ち上がるのを見て、不安に押し留められていた興奮が一気に噴き出した。

「ッ、ぐっ……! ぅっ、ぁぐっ、ッっィあ゛あアぁッッ! ぁっ、はっ、ぁあーッ!」

 まだ柔らかい場所に先端を押し付けて、一息に奥まで押し込んだ。
 催淫効果が抜けきっていない体は、かなり乱暴な挿入にも感じてびしゃりと精液を飛び散らせる。

 いつもほど我を失った悲鳴ではない、苦悶と快感の交じり合う嬌声が甘く鼓膜を揺らした。
 微かな困惑も混じっているように聞こえる。

「っはぁッ、くっアッ、ひっ! ぃッ゛、っ――! ッデ……っ、カ、す……ぎ、ぃッ……!」

 まだ動いていないのに、旭陽の喉が慄いて何度も呻き声を漏らしている。

 強すぎる快感で誤魔化されていた、強烈な圧迫感。
 慣らされた体はともかく、いつもより思考能力が残った頭が付いていかないのかもしれない。

 多分、もう旭陽の体はその苦しさすら快感に繋がっている。
 でもそれを理性が残っている状態で飲み込めるかといえば、また別問題だ。
 気持ち良すぎて苦しいのはともかく、苦しいのも気持ちが良いっていうのはな。普通だと有り得ないことだから。

「旭陽、……あさひ、大丈夫か?」
「ッヒ、っ……ぅ゛っ、ぅ……ッ……!」

 ぼろりと溢れた涙を舐め取りながら声をかけると、かくかくと頭が小さく上下に振られる。
 否定ではなく、肯定。やめて欲しいわけじゃないようだ。
 喋る余裕がないんだろう。

 俺の背中に、旭陽が腕を回す。とにかく目の前のものに縋り付く勢いで、震える体に引き寄せられた。

 ……はじめてだ。最中に、旭陽から縋られるの。
 そういえば、意識がはっきりしている時に拘束せず挿入したのって、初めてじゃなかったか。
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