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日常

第14話 どこまで暴いても

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 先ほどまでよりも、幾らか深くに先端が嵌まり込んでいる。
 腰を引かずにそのまま揺さぶる。俺の腕だけで支えられた腰ががくがくと揺れた。

「ッあうぅう! っゃめ、ぇっ! ヒッ、そ、れッ、っだめ、だ、ッンぅあ……っ!」

 思わずといった声音の制止が零れれば、また揺さぶるのをやめる。

「~~ッや、あ゛ア……っ! あき、ぃ゛ゥっ、ヒッ、ぁ゛、ついぃィッ……!」

 一瞬旭陽の反応が薄れ、すぐにさっきよりも苦しげな悲鳴が上がった。

 イかされ続けるのはつらくても、腸壁を擦られていないと敏感になりすぎた粘膜が疼いて耐えられないのかも。
 狙った反応だとはいえ、あんまり激しく泣くものだから心配になってくる。
 喉が潰れちゃったりしないかな、これ。

「ひゃうゥウッッ! ゃっ、ぁ゛、ぁああー!」

 慰めるつもりで前に触れると、白や透明の液体でどろどろのペニスがまたぼたぼたと精液を吐き出した。
 指先でそっと撫でてみると、手に茎を擦り付けようとしてくる。
 俺がもう一方の手で旭陽の腰を掴んでいるから、動かすに動かせないみたいだけど。

「旭陽、これもいや?」
「ッや、あッ、ゃっ……だ、ぁっあっ? ちがっ、ッひう! っは、あっ、も……っと、ちゃ……っんと、ぉっ……!」

 触れられるのを待ち侘びて震えている亀頭を、くるくると柔らかくなぞっていく。
 触れるか触れないかといった弱すぎる感触に、旭陽が強く首を振った。

「こっちは? もっ、う、要らない?」
「っひぐッ!」

 上擦る呼吸を飲み込んで、押し付けている腰を少し突き出す。
 痛いと訴えていた場所を進もうとする力に、俺の手の中で男の腰が跳ねた。

「ッぃ、らな、っあ! ッそ、っちは、いらね……っ!」

 未知の場所を怖がって逃げようとする体を押さえ込んで、口端から垂れている唾液を舐め取る。

「ならやっぱり、もう終わりにしよっか?」

 腹の中で渦巻く熱塊を宥めながら、にっこりと笑いかけた。
 ひゅっと息を飲んで、泣き濡れた瞳が見上げてくる。

「ッゃ……!」
「じゃあ、旭陽のここに、俺を受け入れてくれる?」

 快感に蕩けた頭でもぼんやりと二度目の放置が想像できたらしく、旭陽が紅潮した頬を僅かに青褪めさせた。

 がちゃがちゃと煩い手枷の音を聞きながら、割れた腹筋を指先でなぞる。
 つつと指を上へ動かしてみせると、男が身を震わせて黙り込んだ。

 正直今は、旭陽がどれだけ嫌がろうが否定しようが、無理矢理捻じ伏せて犯すことは簡単だ。
 でも、旭陽自身に求められる驚喜を知ってしまったから――もっともっとと求めてしまう気持ちが止まらない。

 じっと見つめていれば、旭陽の視線が俺から外れた。
 快感と飢えに歪んだ黄金が、頼りなくふらふらと虚空を彷徨う。
 白濁で汚れた黒髪を撫でる。びくりと揺れた瞳が瞼の奥に隠れてから、緩慢な速度で俺の方へと視線を戻した。

「旭陽?」

 声をかけると、躊躇いに震えながら唇が開く。

「……ぃ……」
「ん?」
「ッ――っぜ……んぶッ、挿れてい、からっ……! も、つら、い……っはやく、あきらぁっ……!」

 微かな声に促しを返せば、旭陽が唇を噛んでから悲鳴じみた掠れ声で叫んだ。

 かつて、俺を組み敷く際に出していた、語尾を伸ばす甘ったるい呼び方で俺の名を紡いで。
 早く全部犯してくれと、既に俺の雄を飲み込んでいる体をなおも差し出してきた。


 ぶわりと、目の前が真っ赤に染まる。

「っ゛、ッ、~~~っァ゛、がッ――、~~~ッ゛、っぁ゛ああアぁあ゛あ゛ッッ!」

 旭陽の体をシーツに押さえ付けて、加減なく奥を貫いた。
 行き止まりだった壁を強引に抉じ開けて、その更に奥まで熱を捻じ込む。

 全身を弓なりにしならせた旭陽が、シーツから背筋に浮かせた体勢で固まった。
 すぐに体が震え始め、俺を振り落としそうなほどに震えが大きくなっていく。
 大きく開いた口から、咆哮じみた悲鳴が迸った。

「っあさ、ひっ…………!」
「ッ、~~~~かっ、ぁ゛ッ――――ッ、っ、ッ゛ッ゛……!!」

 人間離れした凶暴な性器が、根元まで全て旭陽の中に収まっている。
 あまりの気持ち良さに、俺も意識が追い付くより先に熱い奔流を吐き出していた。

 鋭く息を飲んだ旭陽が、呼吸を取り戻せずに声もなくがたがたと震えている。
 噴水のように噴き上がった潮が、互いの体とシーツを新たに濡らしていった。

 逃げようとする体を押さえ付けて、完全に嵌まり込んでいた場所から雄を引き抜く。

「ッァひっ!」

 がくりと跳ねた体に、また腰を叩き付ける。

「っあ゛うぅうッ!」

 びしゃ、と音を立てて透明の精液が広がった。

「ヒッ、ぁ゛っ、あー! あ゛あぁあアーーッ! ひぐっ、ぅっ、ゃアあ゛……っ! ッぁ゛、ひっ、ィ~~~ッ゛、っ!!」

 奥の壁――結腸を抉じ開けて貫き、入口近くまで引いてはまた捻じ込む。
 何度も繰り返すと、ぼたぼたと涙を落とす目を見開いて旭陽がシーツの上でのたうち回った。

 片手で腰を捕まえて逃げられないように押さえ、もう一方で結合部に指を押し込んでみる。

「ッぁぐ!」

 ぷしゃりと噴き上がった潮が、旭陽の胸元に飛んだ。
 とんでもない質量を飲み込んでいる場所は、放置していた間に蕩けきっていたのが幸いしたらしい。
 僅かな余裕もなく広がりきっているが、辛うじて裂けていなかった。

 真っ赤に尖った乳首にかかった透明を舐め取り、小さな粒を口の中に入れる。

「ヒゃうぅっ! ひゃめ、ゃうぅぅっ! ゃ、ぁああー!」

 舌で乳首を押し潰しては吸い上げる行為を繰り返せば、今度は何も出さずに後ろを締め付ける力が増した。
 力が入らない腰をがくがくと痙攣させて、旭陽が新たに増えた快感に泣きじゃくっている。

「ッは、はあッ! あ、さひ、もっ、いらない?」
「ッゃ、あ゛あッッ! ぃ、るっ、いぅ゛、ひゃ、ら、ぁっ」

 興奮のあまりこっちまで呼吸を忘れそうになりながら、俺も完全に乱れきった息の下でまた尋ねた。
 壊れた精嚢から精液を大量に吐き出し続けながら、呂律が回っていない旭陽が条件反射のように首を振る。

「っなら、きもちいって、言って……!」
「ッち、ぃ、ぁきッ、ぃイッ! ひくっ、ぅんあっ……! っ、ハッ、きも、ちいっ、ッァあああっ!」

 強請れば、その通りの言葉が返ってくる。


 ――じゃあ。好きって、言って。

 ふと口から零れ落ちそうになった言葉を、唇を噛み締めることで飲み込んだ。

「っぁ、ぁあぅっ……! ぁっ、ぁ゛、き、ら゛ぁ……っ……?」

 淫靡に染まりきっていた黄金に、ほんの僅かな正気の光が瞬く。
 ああ――こんな時ばかり気付くのか、お前は。

 そうか、そうだったな。
 どれだけ分かりやすく嫌がっていても、一切目もくれないような男のくせに。泣いて許しを乞うても笑うばかりだったくせに。
 俺が本気で苦しいと思った時、親も友人も気付かなくとも、旭陽だけは必ず気付いていた。
 何をしてくれるわけでもなくて、むしろ事態をぶち壊すための前準備みたいなものだった。
 楽しそうに笑って俺の傷を聞き出そうとしてきた。
 聞き出す方法は最低だったし、新たに嬲る手段のきっかけになるものでしかなかった。

 でも聞いている間だけは、気紛れに離れもせずに側にいてくれた。
 そういうところも、数多の人間に心酔されていた理由の一つだったんだろうか。

 膨大な興奮に、強い苛立ちが交じり込む。
 最後の後押しだった。細い糸のようだった理性が焼き切れる。


 何も考えたくない。この熱だけに溺れていたい。

 物言いたげな瞳で見上げてくる男の首に牙を立てれば、旭陽もまた絶頂の渦の中へ引き戻されて行った。
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