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1つ目の国内

第三の相談:鍛冶屋の悩み(相談編5)

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ふと誘われるように立ち寄った鍛冶屋でまさかの話を聞いてしまった俺たち…


いやぁ…世間ってやつは狭いもんですねぇ…


「…職人にとって、自分の作品ってのは特別なもんだ。特に1番初めの品とかはな……それを自分の仕事用具で潰しちまったとありゃ……」


「…精神的ショックは計り知れないだろうねぇ…」


「…あぁ…結果、あの子は武具を作るのをやめちまった……そもそも、作る事が精神的にも物理的にも不可能になっちまったからなんだが…」


「…ん?。物理的にも?」


「…あの子は少し特殊でな…“鍛冶神の加護”を持ってんだよ」


「ほぅっ…!……鍛冶神の加護をっ……なるほどなるほど…それなら、若いながらもその域に達せたのも納得ですわ」


「…ルート殿…鍛冶神の加護とは?」


「あぁレアスキルの1つでね、沢山の鍛冶士達が憧れるスキルだ。名前の通り鍛冶の神からの恩恵を受ける事ができる。……具体的にはなんだったかな……確か、作る際の手順とか、効率の良い日の通し方とか…そんなんがわかるようになるとか…」


「…お前さん、よく知ってるな……」


「変な経験だけはかなり多いもんで」


「…どんな経験だよ……だが、間違っちゃいねえ。鍛冶士として更なる高みを目指すなら誰もが欲しがるスキルってのはな…………嬢ちゃんにわかりやすく説明すんなら、鍛冶神の加護がありゃ、オリハルコンすら飴細工のように扱えるって感じだ」


「えッ!?、あのオリハルコンをッ!?」


「おうよ。何せ鍛冶の神様がサポートしてくれるんだからな…オリハルコンぐらい余裕で加工できら……まぁ、技術無く扱えるかは別だが…」


「…そんなに凄いスキルなのか…」


「鍛冶神の加護を持ってる職人がいるだけで、国としての価値が上がると言われてるし……現に、捜索部隊まで作ってる国もありますからねぇ」


「……そんな存在を…あの男は蔑ろにしたと言うのか……本当に…なんと言って詫びればっ…」


「…だから、嬢ちゃんが悪いわけじゃねえんだから詫びる必要はねぇ…」


「…しかし、現に娘さんは鍛治をやめる結果に…」


「…それも仕方ないってやつだ……あの子の精神だけでなく、専用の道具まで潰れたんだからな」


「…専用の道具…?。先ほどから話に出ているが…それはいったい…」


「あぁ~、代償ってやつだね」


「代償だと?…ルート殿、それはいったい…」


「…鍛冶神の加護は多大なる恩恵を与えてくれますがね、使い手にも高い技術を無理やり強要してくるんですよ……イメージとしちゃ、二人羽織みたいに後ろから神がこういうやり方だって去勢してくる感じかね……いわば、神の技術…並大抵の道具じゃ耐えられねーんですよ」


「壊れてしまうと言うことか…」


「伊達に神の加護じゃないって事。しかし、ちゃんと使えるならメリットしかないのさ……まぁ、ちゃんと使えるならね」


「…一つ疑問がある…鍛冶神の加護を扱うには耐えられる専用の道具が必要なのは理解できた…しかし、何故それが壊れたのだ?。神の力に耐えられるなら、人間の力では壊す事など…」


「そんなの簡単ですよぉ。神の力に耐えられるからといって、頑丈ってわけじゃないからさ」


「…え?」


「力加減、魔力の質、道具自体の構造……特殊な力に耐えられるように設計されてるものほど繊細って事だよ」


「………緻密な扱いが求められる道具か……力任せに叩いてしまったがために、壊れる結果に…」


「…流石にその時は殴り飛ばしてやったが…詫びの一つも無しな上に、あの子の作るもんなんざ大した事がないと後日言いふらしてやがった…簡単に壊れちまうような駄作だとな」


「わぁぁおっ…それはそれは…」


うわぁぁ…もはや最高クラスのクズじゃん…


どうりでお客がいなかったわけか…なるほどなるほど…


そりゃ、実力だけは本物とはいえ、騎士団長様がそう言ったんなら信じるやつは多いだろうし…








そんなのが騎士団長とか…選んだやつ見る目なさすぎ無いですかねぇ?


嬢ちゃんなんか、冷や汗をかきながら腹押さえてるし……


…嬢ちゃんには、かなり辛い現実だったな…


「て…店主殿っ……この度はなんとお詫びを申し上げて良いやらっ……せ…せめて、壊してしまった道具の弁償をっ…」


「…難しいだろうねぇ…」


「…えっ…?」


「材料が材料だけにねぇ…」


「…嬢ちゃんが気にする事はねぇ…賠償もしなくていい……ただ、今後…あの子みたいな子を出さないようにしてくれれば………」


「…て…店主殿っ…」


「…というわけでな…あんたらには悪いんだが…もう貴族やら騎士団やらとは関わり合いになりたく無いんだ…すまねぇ…」


「…」


深々と頭を下げる店主さんを前に俺たちは黙るしかなかった。



◇◇◇◇◇◇


「……」


「……さてさて…今日はもうお開きにしとくかい?」


件の鍛冶屋から出た後、マリーナ嬢ちゃんは一言も喋らなかった。


どうやらかなりこたえいるようだ。


…まぁ、そりゃぁあんな話を聞けばねぇ…


「…ルート殿……私はこれからどう償えばいいと思う…?」


「それを聞いてる時点でダメじゃ無いの?」


「うッ……」


「…はぁぁ……店主さんも言ってましたけど、嬢ちゃんが気にする必要はないですぜ?。まぁ、全くの無関係ってわけにもいきませんが……想いに応えるっていうんでしたら、ちゃんと報告をして早急に対策を打つべきでしょうね~」


「……そうだな…今日は付き合ってくれてありがとう……すぐに戻って報告し、2度とこんなことが起こらないようにしなければ…」


「…アドバイスじゃありませんが…鍛冶神の加護持ちに無礼を働いたなんて普通ならありえないと言っても過言じゃありやせん…そこらへん…上手く使ってみては?」


「ふふ…わかった。参考にさせてもらうよ…ではっ」


「帰り道お気をつけて~」


そうして、俺は嬢ちゃんも見送った。


やれやれ…


少しは元気が出たようで何よりですが…


…暴走しないか心配だねぇ…




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