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1つ目の国内

第二の相談:若き村娘の悩み(相談編)

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「…」


昼間の穏やかな時間…


…いや、ほんと…こういう時間って大切だわ…


…先日から何故か騎士団長様が絡んでくるし…


…若くて綺麗なんだから、こんな30過ぎのオッサン相手にしなくても…ねぇ?


「…今日は来ないみたいだな…」


何かと理由をつけては毎日のように来ていた彼女だが、流石に騎士団長としての役目があるからな…


今頃、サボっていた分の仕事に追われているんだろう…





…いやいや、まさか…マジで騎士団に入れるために躍起になってるとか……





…うん、あまり考えないようにしよ…


“カランコロンっ…”


お客が来たらわかるようにと、テント入り口に取り付けたベルが鳴った。


「…ぁ…あの……相談屋であってますか…?」


「あぁ、あってるよ。ようこそ、無関係の相談屋へ」


入ってきたのはブロンドのおさげに眼鏡が特徴的、布の服を着た女の子だった。


見た目からして16ぐらいの年頃の村娘…





…そんな嫁入り前の娘さんが、こんなオッサンのテントに何のよう…いや、字面にするとかなりやばいな…これ…


…いやいや、そんな子がマジで此処に何のようですかね…?


「…えぇとっ…」


「…あー、大丈夫大丈夫…オッサン相手で嫌だろうが、ゆっくり話してくれたらいいから…てか、此処のことは知ってる?」


「はっ…はいッ…いつもミルクを配達してる酒場のマスターからっ…」


…この子も爺さん経由かぁ…世間は狭いなぁ…


いや、あの爺さんが顔が広いのかね?


「…あー…なら問題ないとは思うが…一応、変な身分による気遣いとかそんなんは一切なし…あくまで俺らは相談する側とされる側な…で、どしたの?」


「……じ…実はその………モウちゃん…家畜として飼ってる牛の事…その…相談が…」


「…」


…またえらく凄い相談がきたな…


いやまぁ…そういう場所なんだけど…





とりあえず、一言だけ言わせてくれ。


「…というか…そういった内容は専門店の方がいいんじゃないか?」


「…あっ…」


…どうやら、天然の子のようだ…


◇◇◇◇◇◇


そして、場所は変わり…


街から離れた牧場にて…


「…すみません…荷物まで運んでもらって…」


「ん…いやいや、気にしなくてもいい。おっさんが勝手にやってるだけだからさ」


俺は彼女の家まで、彼女の荷物を運んだ。


いやだって…持てるんだろうが、それなりの荷物を女の子が運んでたんだぞ?


見て見ぬ振りは出来ないだろ…


それに、騎士達がいるとはいえ、帰り道に野党に狙われないとも限らんしな…





…まぁ、さらに言えば…ちょっとめんどくさそうだと感じたから、此処に来たようなもんなんだが…


「…とりあえず、荷物は此処らでいいかい?」


「はっ、はい!」


「よいっ…しょっ……と」


運んできた荷台を家の隅に置く。


「…ふむ…」


周りを見渡してみると心地よい風が吹き、木々の良い匂いが漂っていた。


…うん、よく手入れされてるな…


「…っぇ…えっとっ…」


「あー…いやいや、こっちの事はいいから…早く、“病気で寝てる”お母さんの元に向かってあげなよ」


「えっ…はっ…はいっ!」


慌てた様子で走っていく…


…うん、見ていて理解したけど、慌ただしい子だなぁ…


…まぁ状況を説明するとだな…


彼女はリナ…この牧場で母親と2人で暮らしているらしい…


…いや、女2人でこの牧場をねぇ…


大規模ではないけどそれなりの広さはあるってのに…大したもんだわ…


お母さんはかなりのやり手かね?





…だが、厄介な事に…


そのお母さんが、今病気になって療養中…


…そして、さらに厄介な事に…飼育していた牛が動かなくなってしまったと…


お母さんの方も今は体力がないのか、少し休んだら様子を見るからとのこと…


いやいや…動けない程疲弊しているのに何いってんだと言いたいが…


まぁ…やれる人材がいないわけだからなぁ…


日頃から手伝いをしていたリナも、立て続けに起こった緊急事態に頭がこんがらがり…


何とかいつもの配達は終えるも、既にパニック状態…


色々と候補があった中から、何故か俺のテントに足を運んだらしい…


いや、下手に変なとこ行くよりは良いけどさ…


…とりあえず、今度酒場の爺さんに会ったら飯奢ってもらわねーとなぁ。





…さて、件の牛はどちらにいるのかねぇ…


「きゃぁぁぁぁぁあ!?」


「っ!?」


突然聞こえたリナの悲鳴に、俺は慌てて家の中に飛び込んだ。


不法侵入扱いとかはマジでやめてくださいねッ!
















「どうしたッ!?リッ」


「ふぇぇぇぇッ…!…りっ…林檎の中にむっ…虫がぁぁっ…っ…」


「……」


こちらの姿を見ると、涙目になりながら抱きついてきたリナ…





…いやまぁ…確かにびっくりしたんだろうが…ねぇ?


「おいおい……虫なんざ此処らなら見慣れてるだろ…確かに驚いたかもしれんがっ…てデカッ!!?」


落ち着かせようとして、俺が逆に驚かされた。


何故なら、林檎にすくっていた虫のサイズは道端の石ころ並みとちょっと嫌悪感を抱かずにはいられないサイズだったから…


いや、どんだけうまい林檎ならああなるんだッ!?


◇◇◇◇◇


「…ほい、お粥だ」


「ありがとうございますっ…」


うん、一つ分かった事がある。


リナは料理が…いや、料理の腕前があまり良くない…


材料のチョイスはいいんだが…


切り方とか、煮込み具合とか…





…ま…まぁあれだようんっ…母親と一緒に暮らしてるとなると任せっきりになるっていうしな?


…そういう事にしておこう…


「…はわわわわ…」


「…おい、よだれがすごいぞ?」


「はえッ!?///」


慌てて口を拭くリナ……


16歳ぐらいだと踏んでいたが……もっと幼いのか?


「…食べたいなら、食べればいい。多く作ったからな…ちょうどいいはずだ…ただし、お母さんに渡しに行ってからな?」


「はい!!」


「元気がいい事で……あと、例の牛は外か?」


「はい、外の牛舎に…ルートさんは食べないんですか?」


「ん…まぁ、此処まで来ておいて何言ってんだと言われそうだが……あんまり知らないオッサンが自宅内にいるのは嫌だろ?。絶世の美青年とかなら話は別なんだろうがなぁ……てなわけで、先に用事済ませてくるって話だ…あっ、大丈夫だと思うが、熱いからな?。運ぶときは注意するんだぞ」


とだけいうと俺は外の牛舎に向かった。


…やれやれ…だんだんとオッサン臭いことばかり言うようになってきたな…俺…
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