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幼き聖女について

何事も効率よく

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アーニャの話を聞き、俺はシスターエボラの元に向かった。


なんでも、シスターエボラが偶然、聖女と思わしき存在に気がついたとのこと。


…まさか、このタイミングで見つかるとは…


…いや、見つかるのは別に構わん…いずれそれらしい噂ぐらいは出ると考えていたからな…





…だがその…このタイミングで無い方が好ましじゃったのだが……言っても仕方ないな。


とりあえず、ミランダにも伝えるようアーニャに指示を出し、俺はシスターエボラが待つ場所へ向かった。


“ある者達”を連れて…


「…あのぉ」


「ん…どうした?」


「いや……その……こちらが申し上げるのも違うとは思うのですが……ついてきてよかったのですか?」


と、不安そうに…“ルキアーナ”のとこのちびっ子がそう聞いてきた。


「何か問題があるのか?」


「…え…いや、問題と言われましても…」


「…マーレ、この人はこういう人ですから」


ルキアーナはにっこり笑いながらちびっ子にそう話した。


…ふむ…マーレというのか…


「…ちび……いや、マーレよ」


「え…はっ…はいっ!?」


「…そうかたくならずとも良い……逆に聞くが、何かまずいことでもあるのか?」


「…それは…」


…なんだか複雑そうな表情を浮かべているな…





…ふむ…


大方、聖女が見つかったから来るかと誘ったのがまずかったか…


…まぁ、最初の段階で手伝う気などないと言ったばかりだからな…


「…確かに、俺は進んで聖女探しに協力するつもりはない…もし、無理矢理にでも連れていくというのであれば聖堂教会だろうが関係なく俺の持つ全てを向けるつもりだ」


と、俺がそう言った瞬間…


お互いの間に鋭い空気が発生する。


…まぁ、仕方なかろう。


いざとなれば戦争すると宣言しているようなものだからな…


だが、それはあくまで最終手段…


…俺だって、無駄な血を流すだけでしかない戦争などしたくないからな…


「貴方達、落ち着きなさい…何も、この王は初めから争うとは言ってませんよ」


とルキアーナは側近達に一声かけると、こちらを見てうなづいた。


……全く…勘がいい女だ。


「……勘違いさせたようで悪いが…そちらの主人が言うように、俺も戦争は望んでいない。武力行使の話もあくまで無理矢理ならばの話だ」


「…では、何故私たちを…」


「ん…そんな事決まっておるだろう」
















「もし、件の者が聖女に憧れているなら…なりたいと言う意志がるならば、お前達がいたほうが何かと都合が良いであろう?」


「…」


「…ふふっ」


従者達が唖然とする中、ルキアーナはおかしそうに小さく笑う。


「…おい、ルキアーナ。何故此奴らは唖然としておるのだ?」


「…さぁ…御身に問いかけてみるのが一番ですかね」


「…?」


…相変わらず、よくわからん事を…まぁ…昔からこうだからな…今更何かを言うつもりはないが…


◇◇◇◇◇◇◇


「…マーレ……あの王は一体…?」


唖然としていた従者の1人がマーレに問いかける。


「…わ…私もよくは……ですが……普通の王とは違うのかと…」


「…違うと言うのは…?」


「…私もよくわかってはおりませんが……少なくとも愚王ではないのかと……それも、ルキアーナ様がお認めになるくらいの…」


「……“平凡王”という言葉の本当の意味…そこが鍵というわけか…」


そう呟くと、従者達は静かに見守り、見定めようと行動に出るのだった。

◇◇◇◇◇◇◇


そうこうしている内に目的地である森の近くにある遊び場に到着した。


この場所は、修道院で面倒を見ている子供達を遊ばせるべく、シスターエボラが提案してきた政策の一つだ。


…やはり、修道院で面倒を見ているもの達は、普通の家庭で育った子供達とは精神的な構造が少し異なる…


…異分子扱いはするつもりはないが…何がきっかけで崩壊するかわからんからな…


……とにかく、子供らは遊ぶことが仕事の一つ…


…安心して遊べる場所がにというのは、王として恥でしかない…それだけだ。


そして、子供たちが遊んでいる場所とは少し離れた所で、シスターエボラが待っていた。


「…シスターエボラ」


「ルドラ王、お待ちしておりました…それに聖堂教会の皆様も、よくぞお越しくださいました」


「…お久しぶりです、シスターエボラ」


「…ルキアーノ様もお元気そうで何よりです」


「…様付けはやめてください、シスターエボラ。昔のようにルキアーノと」


「聖女様を呼び捨てなどできません」


「…ですが…」


「…ルキアーノよ。ここは其方が折れよ……シスターエボラに恩があるのはわかるが……シスターエボラにとっては、其方は所属する組織のトップであるのだぞ?」


「……そう…ですね…失礼いたしました」


「…いえ……ですが、一言だけ……本当に立派になりましたね」


「…っ…はいっ…」


シスターエボラのその一言で、沈んでいた表情に華が開く。


従者達も特にいうことはないのか、気にせず聞き流していた。


…マーレに至っては、複雑そうだが…その意図は、甘えてもいいのではと言い出すべきか迷っている表情だな…


そんなマーレを嗜めない様子から…どうやら、この従者達は話がわかる者たちのようだ。


…やれやれ…これならば、別にシスターエボラが砕けても良い気もするが…


…まぁ…線引きは大事だからな…仕方あるまい…





……早く終わらすとするか…


「…さて、そろそろ良いか?……先ほどアーニャより話を聞いた…見つかったとは本当か?」


早急に終わらし、お互いにとって自由な時間を用意すべく、俺は話を切り出した。


「はい」


「…して、その者はどこに…?」


「……こちらに…ですが、お静かにお願いいたします…」


「無論だ」


そう返すと、シスターエボラはゆっくり振り返り…


森の中に入っていく。


俺たちは黙ったまま、その後を追った。
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