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幼き聖女について

お説教と2人のちょっとした馴れ初め

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「……」


「…ッ…」


俺たちは2人揃ってシスターエボラに土下座中…


もはや、体に染み付いているレベルだ。


「…はぁ…ルドラ王…それからミランダさん。おふたりが扱っている案件は国政の大事な内容であり、緊急度の高いものもあることは理解しております…」


「…はい…」


「ですが、体を壊してまで作業をされては此方も気が気でなりませんっ。特にルドラ王っ、貴方は一国の主人なのですからっ…!」


それを言われると痛いっ…


「…わ…わかってはおる……しかしだな、やはりどうしても無理をせねばならない時もあるのだ…」


「…でしたら、人員を増やすなり、簡単な内容のものならば臣下に任せるなどやりようはあるでしょう?」


「……出来る限り割り振ってコレだからな……人員を増やすとしても……それなりに信頼が置けて能力がある者でないと…」


「…あー……ミランダさんレベルとかになると、厳しそうですね…」


ユーリも想像したのか苦笑いを浮かべた。


シスターエボラも、何も言わないが頭を抱えている…


…正直、こればかりは本当にどうしようもない…


俺の補佐を主にミランダにして持っているわけだが……何も見た目が綺麗だからとかで選んだわけじゃない。


ちゃんとミランダ自身の能力…


そして、重要な情報を安心してまかせられる信頼があるかで選んだ結果だ。


…王が扱う資料の大半は国家機密の内容…


国防費や今後の政策、他国との取り決めなど様々だ…


そのどれか1つでも漏れればどうなるか…


…想像にたやすいだろう。


だからこそ、容易に人員を増やす事ができんのだ…


「…そういった人材の育成も、今後必要ですね…」


シスターエボラが呟く。


すぐに準備できるものじゃないと理解できたのだろう。


「…育成に関しては色々と考えてはおるのだが…信頼がおけるかが中々にな…」


信頼できると言っても、トップレベルで信頼できなければ意味はない。


ミランダの他にも、国内にはそれなりに能力と信頼を兼ね備えた人材は数多くいるが…


やはり、国の重要機密を任せられるかと言われれば不安が残ってしまう…


「……大臣達が残ってくださっていれば…」


「…それは言わん約束だろう…」


「…えっ…?……そういえば、あまり大臣にあたる方々を見た覚えが……そもそも宰相とか見た覚えが……」


ユーリは思い出したかのように呟いた。


…うむ……やはり気がついてしまうよなぁ…


「……ユーリには言っておらんかったな………あー…そのだなぁ……先代の王に行っていったのだ…」


「…はい?」


「…だからその…先代の王が辞める際…つまり俺が王になると決まった時に、ほとんどの優秀な人材がいなくなったのだ…」


「…は…はぁぁぁぁぁぁぁああああ!?」


悲鳴に近いユーリの驚きの声が響く。


ここがどこなのかを思い出したのか、慌てて口を手で塞ぐが、その目は驚きの色で染まっていた。


「…彼らは皆、国ではなく先代の王に惹かれて集まった者達だったからな…まぁ、仕方ないといえば仕方ないのだが…」


「…し…仕方ないってっ…いやいやいやいやっ、いくら何でもっ」


「…まぁ…ユーリさんの驚きは間違っていませんわ……普通の国なら、王が交代するから大半の人材がいなくなるなど普通ありませんから…」


「…あの時はびっくりしましたねぇ……辞めて旅に出ると言い出したかと思えば、次の日には軍隊が出ていくような有様でしたから…」


「…何人かは引き継ぎはしっかりすると残ってくれていたのだが…しばらくしたら旅立ってしまったし…」


「…もしかして……程よい人数が集まるまでおふたりは…」


「…あれはまさに地獄だったな…」


「…えぇ……あれを乗り越えれば7徹など可愛いものでした…」


「シスターエボラ…おふたりは既に重症患者です」



「…えぇ、重々承知しております…」


2人からの何とも言えない哀れみの視線が辛い…


「……そういえば……多忙な時期に出会ったのだったな…」


「……ぁぁ…私ですか?」


ミランダがハッとした表情で答える。


「お主以外おらぬだろう……」


「…あっ…おふたりの馴れ初めですか?」


「…な…馴れ初め…///」


「ははっ…そんな甘いものではない………例えるならそう……苦味だけしかないチョコだ」


「…本当に否定できないですね……初めてお会いした時…こんな仕事に疲れた王がいるのかと目を疑いましたから…」


「…ぬかせ……こちらとて、じゃじゃ馬令嬢が来たなと頭を悩ませたものだ……合うなりダメ出しばかりしよってからに…」


「…ぁ…あの時はまだ若くっ…///」


「…いや、まだ十分若いであろう………だがまぁ……今になって思えば、あれはアレで何とも言えんものがあるな…」


「…あの頃は、顔を合わせるたびに喧嘩されてましたからねぇ……城中に怒鳴り声が響いてしまうくらいに」


「…む…そんなことは…」


「ありましたよぉ……ですが不思議な事に、仕事をすれば息が合うんですから…こちらもどう扱ったら良いか迷いました」


「…ぉ…お恥ずかしい限りですっ…///」


「…ふふ……まぁでも、王も気分転換になってよかったのではないですか?」


「…ッ…!」


「…えっ?」


「…若くして王になられてから、気持ちを吐き出す場所がなかったですから……そういう意味では、同年代のミランダさんが現れてよかったのではないかと…」


「…ど…どうだかなっ…」


「…ミランダさんって、今も昔もルドラ王にとって必要な人だったんですね~」


「ッ…!?///ゆッ…ユーリさんッ!?///」


顔を真っ赤にしてミランダはユーリに詰め寄る。


そんな光景を微笑ましそうに眺めているシスターエボラをよそに…


「…ふむ…必要な人か…」


俺は1人で考えていた。


確かに、色々あったがミランダがいて良かったと思うことばかりだな…


つまり、そういう意味では…


「やはり、ミランダは理想の人物だな…」


「…ふぇッ…!?///」


場の空気が一瞬止まった。


「……あ…あわわわわっ…///」


何やら顔を赤くしたユーリがあわあわしだす。


ん…なぜ、ミランダとユーリは赤くなっておるのだ?


「…はぁ……よく見てください、ミランダさん。王のあの顔は、特に深い意味で言ったわけじゃないという表情ですよ」


シスターエボラの呆れ声を聞いて、2人がこちらを見てきた。


「……」


「……?」


「……まぁ…わかってはいましたけど…」


…何故、そんなにがっかりされなければならんのだ?


解せぬ…


「…とにかく、これ以上無理をなさらないで下さい。ミランダさんなら問題ないというつもりはありませんが、王である貴方が倒れたとあっては国内外ともに大変なことになるのですからっ!。ミランダさんも、気をつけてくださいねっ!」


「…う…うむ……肝に銘じておこ…おきます……」


「…はい…」


それから体調に関する注意事項を何点か説明された後、ようやく俺たちは解放された。
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