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光り物だらけで売れない道化師…しかし、大事にはされている

ようやく本気を出す道化師

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「…あらあらぁ…」


マリーナが興味深そうに言葉にした。


マルチポイズンスライムは凍って動かせない部分を切り捨てると、そのまま自分の中に溶かしながら飲み込んでいく。


「……いやいや……スライムだからマシだけどよ…あれって共食い…いや、自分喰いだよな?」


「まぁねぇ…」


「…でもどうやらちゃんと効果はあるみたいだね…」


ちゅぽんっと飲み込んで仕舞えば凍らされていた分の液体を操っていた。


使えなくなった部分を溶かして吸収…いや、戻したのか?


…いくら液体の塊みたいな存在といえど、限度があるだろっ…まじでっ…


「…でぇ、どんな状況かしらぁ?」


「あのスライムマジおっかない」


「そんなのぉ、見たら分かるじゃないのぉ」


「…無限ともいえる液体触手を媒体にした連鎖攻撃に加え、あの厄介な呪毒の液体鎧…さらには頭が良いみたいだ」


「…あらあらぁ…いつのまに魔王戦に挑んだのかしらねぇ」


「お前までそういうか……マリーナ、頼みたい事がある」


「…どれだけ、どのタイミングで凍らせたら良いかしらぁ?」


「話が早くて助かるよ…合図はする。凍らせるのは全体だ」


「…内部まで凍らないかもよぉ?」


「動きを止めてくれれば良い。あと、エバンス」


「…わかってる。あのコアに開けられた“穴”だね」


マルチポイズンスライムを相手に立ち回っている時に気が付いた。


奴のコアに、“槍の先端でできたような小さな穴”がある事を…


おそらく、クーナが付けた傷だ。


多分だが、彼女は奴の一瞬の隙をついて攻撃したんだろう。


腕ごとあの液体の中に…


だが、彼女の実力では小さな穴を開けるしかできず、逆に呪毒を喰らってしまったってところか…


これは予想でしかないが、もし事実なら運が良かったとも言える。


鉄ナイフを溶かすぐらいの液体だからな…


もしかしたら、コアを傷つけられたせいで溶かす力が上がったのかもしれないが…


…だが、俺たちからすれば救いの一手とも言える。


「マリーナは俺の合図で一気に全体を凍らせてくれ、エバンスはコアを貫ける一撃を…」


「…ん?……シャール…まさか君は」


「もちろん時間稼ぎだ」


「ッ…1番危険じゃないか!」


怒鳴りつけてくるエバンス。


まぁ…危険なのは仕方ないだろ?


やれる奴が俺しかいないんだからよ。


「はいはい、お説教は後で聞くからよ…てか他に案ないだろ?」


「ッ…」


図星だったのか苦い表情を浮かべるエバンス。


「…マリーナ、支援魔法は頼むぞ」


「…はいはぁい」


渋々といった感じでマリーナは俺に支援魔法をかける。


どうやら納得半分ってぐらいだな…


それでも彼女はしっかり魔法をかけてくれた。


魔女による支援魔法…しかも、魔女マリーナの支援魔法だ。


体が一気に羽のように軽くなる。


よしっ…かなり動けそうだ。


「これで良いかしらねぇ~。死んじゃやよ?」


翻訳すれば、死ぬなだな…こりゃ…


まぁ、死ぬつもりないよ?


死体にでもなったらゾンビにしてでも蘇らせられそうだし…


「まだ死ぬ気はないさ。それより、そっちも俺に気を取られたりしてタイミングミスんなよっ…とっ…」


それだけ言えば俺は飛び出した。


果たして何を考えていたのか。


いきなり凍らされた警戒からか、こちらをじーと見つめる(?)マルチポイズンスライムに向き合う。


「さて…またせたな、マルチポイズンスライム」


聞こえているか…そもそも伝わってるかわからないが、話しかける。


少なくとも、“話しかけられている”のはわかるだろう。


「今からは戦いは無しだ…といっても、お前は攻撃するだろうが……まぁ俺の曲芸を存分に味わってもらうからよ」


さて、道化師の本領発揮と行きますかッ…!
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