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光り物だらけで売れない道化師…しかし、大事にはされている

ついにその姿を現した

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…で、1人になって自己嫌悪モードに入りたいってのに…


「…シャール…」


「…なんだよもう…リメルダの次はお前かぁ、エバンス?」


「…すまないね、色々と…」


その言葉にはいろんな意味が込められている事が理解できた。


「…適材適所ってやつだ…第一、今回は運が悪すぎた」


新種のモンスターに派遣ギルド職員の暴走…加えて特殊な進化による犠牲者が大多数…まだ命ある犠牲者が居ただけでも救いもんだわ。


「…すぐに戻って…と言いたいがどうかな?」


「…背負えるには背負えるだろうが……」


冒険者にとって、決断する事はすなわち生存度に直結する。


単純な例え話として、マグマに飛び込みますかなんて問いかけにはいと答える奴はいないだろう。


なぜなら、マグマに飛び込めば溶けて死ぬからだ。


決断した結果、命を失うなんて事はザラにあり得る。


現に、グラム達がいい例だ。


何度も言うが、グラム達はそれなりの実力を保持していた。


だが、それでも負けた。


いや、負けたなんて言葉じゃ表せないくらいぼろぼろだ。


…何かしらの決断を間違えたとしか思えない。


…話を戻そう、これ以上はグラム達本人からしか聞けないしな…


グラム達を助けるために来たのだから、彼らの治療に時間を割くのは間違っていない。


無理して動いた結果、助けられないなんてのは意味ないからな…場合にもよるが…


彼らの容体は酷い…だから、この場で治療すべきだとも思える。


だが、この場所は安全地帯じゃない。


一刻も早く、安全地帯に移動するのも正しい選択だとは思う。


…だが、それは躊躇われる。


グラム達の容体が酷いのもあるが……“件のモンスター”の姿も気配も全く感じないからだ。


「…エバンス」


「逆に僕が聞きたいよ…シャールの目に何か映らないかい?」


「…生憎、俺のピエロの目はモンスター追跡機能はないんでね…あくまで応用として生命力を見分けるために使っただけだ…本来なら、テイマーとかそこらへんの仕事だからな……ん?」


「…どうかしたかい?」


一緒にあたりを見回していたエバンスが俺の声に反応した。


「…いや…気になった事があってな…」


「気になった事…かい?」


エバンスが不思議そうに問いかけてきた。


「…気のせいだとは思うんだが……いや、なら別に…」


俺は気になった箇所を頭の中で並べていく。


「…些細なことでも重要な情報には変わりないよ」


「…いやぁな?…その……モンスターにやられたから死体があるのはおかしくはないんだが……その数が“多すぎないかなぁって”」


モンスターに負けたのだから死体があるのはおかしくないが…


数が多い。


死体も合わせて、見つけられた死体数で言えば、グラムパーティーの総数に近かった。


もちろん、他パーティーがどれだけ入ったかわからないから、捕食された分を差し引いたら案外数が合うかもしれないが…


気になったのはそこだ。


確かに、グラム達は強敵に挑む選択をして返り討ちにあった。


これは事実だ。


彼らは30人近くいたはずだ。


これも事実だ。


死んだ者は半数以上、さらには獣を誘う血の匂いが十分…つまり、モンスター達からすれば肉塊がそこらじゅうに転がっているに他ならない。


つまり、他の腹をすかせたモンスターが寄ってくる可能性が高い。


グルメなモンスターというならば多少は……グルメ?


「…エバンス…」


俺は小声でエバンスに話しかけた。


「んっ、どうかしたかい」


「…やばいことになったかもしれん」


その一言がきっかけなのか、一気に地面の影が大きくなった。


急いで上を振り向けば、そこには巨大な紫色のスライムがこちらを伺うように腐食していく木にまとわりついて居た。
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