12 / 33
光り物だらけで売れない道化師…しかし、大事にはされている
重傷者の正体
しおりを挟む「エリナ、どうだ?」
「…正直に言って危篤状態です。回復魔法を使おうにも、生命力が少なすぎて…」
悔しそうに、出力を弱めた回復魔法をかけ続けるエリナ。
…俺が見た限りでもかなりひどい…
よくここまで帰って来れたと褒めてやりたいくらいだ。
「今すぐに薬師どもに薬の用意を。後治療士達も呼んできな」
的確に職員達に指示を出すマスター。
ただの酔いどれマスターじゃないだけはある。
「…エリナ、正直に答えな。あんたの回復魔法で後どれくらい持つ?」
「…危険な状態まで考慮して良いなら…あと3時間ほど…」
「ちッ…時間がなさすぎるね…ほらあんた達!急ぎな!!!」
その言葉を聞いたマスターは、職員たちにはっぱをかける。
回復魔法は誤解されがちだが、傷を癒すのであって無かったことにはできない。
癒すために対象の生命力を用いて活性化させる…それが回復魔法だ。
もちろん生命力を使ったからといって寿命が縮んだりとかはない…普通ならな。
大抵の場合、生物は生命力に溢れていて、時間経過で回復する。
だからこそ、回復魔法は癒しの技で通っているわけだが…
もし、相手の生命力が少ない場合…回復魔法を使うべきではない。
生命力とは文字通り、命を生きさせるための力だ。
そんな力を限界を超えて消費なんてさせて仕舞えば命はない。
いくらエリナが聖女で、高位の回復魔法を行使できると言っても、対象者が弱りきってきたら使いたくても使えないのだ。
…今エリナがしているのは、生命力の消費を極端に抑え、何とか命の灯火を消さないようにしている延命措置…
聖女だからこそできる神がかった治療をしているのだ。
だが、それでも…もはや聖女が投げ出してしまうくらい危険な状態まで後3時間ときた。
マスターは生命力を高めようと薬師や治療士を集めているが…正直に言って助かる見込みは0に等しい。
「……ッ…」
とんでもない集中力を発揮して、回復魔法を発動し続けるエリナを前に、俺達は何も手が出せなかった。
そんな中…
「……あの娘って確かグラムんとこのメンバーじゃなかったか?」
ふとそんな声が聞こえてきた。
確かに、血まみれの怪我まみれでよくわからなかったが、よくよく見てみればグラムのパーティーにいた子だった。
グラムが良い槍使いの新人が入ったぜ!と喧嘩を売りにきたからよく覚えている。
……つまり…
…つまりだ…
…グラムのパーティーに何かあった?
…あいつらと最後に会ったのは…まさか…
「……」
「あっ、シャールっ。なにをっ…!?」
俺がいきなり女性冒険者の腕の服をめくりあげたりしたため、慌ててリメルダが止めようとするが、逆にリメルダが止まった。
「……しゃ…シャール…これは…」
「……」
リメルダが動きを止めたのも無理はない。
他の見えた面々も息を呑むのがつたわってきた。
「…極端に生命力を無くしてたのはこれのせいか…」
俺たちが見たのは、右腕の二の腕辺りの“壊死”。
しかも、さらに驚かされる。
生きているかのように禍々しく、ゆっくりとゆっくりと広がっていたからだ。
「…なんだい…こりゃぁ…」
ギルドマスターからの驚嘆の声。
「…マスターも見たことありませんか?」
「ないね。私が冒険者時代の時も見たことがない症状だよ」
…元Sランクパーティーで活躍していたギルドマスターが見たことないということは、新発見に等しい事象だ。
…おそらく原因は…
「おいッ!グラムの奴らは今どこにいるッ!?」
ギルドマスターが職員達に怒鳴りつけるように問いかけた。
「…わ…わかりません」
「俺も…」
職員達もお互いを見ながら、誰も知らないと言った。
「…グラムなら合いましたよ」
「何?」
「俺たちが、マルチポイズンスライムの調査に出かけた先の町の中で……」
「…どういう事だ…?。何故あいつらはあの町に…?」
「え…?」
0
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
追放シーフの成り上がり
白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。
前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。
これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。
ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。
ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに……
「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。
ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。
新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。
理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。
そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。
ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。
それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。
自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。
そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」?
戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。
闇ガチャ、異世界を席巻する
白井木蓮
ファンタジー
異世界に転移してしまった……どうせなら今までとは違う人生を送ってみようと思う。
寿司が好きだから寿司職人にでもなってみようか。
いや、せっかく剣と魔法の世界に来たんだ。
リアルガチャ屋でもやってみるか。
ガチャの商品は武器、防具、そして…………。
※小説家になろうでも投稿しております。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
愛すべき『蟲』と迷宮での日常
熟練紳士
ファンタジー
生まれ落ちた世界は、剣と魔法のファンタジー溢れる世界。だが、現実は非情で夢や希望など存在しないシビアな世界だった。そんな世界で第二の人生を楽しむ転生者レイアは、長い年月をかけて超一流の冒険者にまで上り詰める事に成功した。
冒険者として成功した影には、レイアの扱う魔法が大きく関係している。成功の秘訣は、世界でも4つしか確認されていない特別な属性の1つである『蟲』と冒険者である紳士淑女達との絆。そんな一流の紳士に仲間入りを果たしたレイアが迷宮と呼ばれるモンスターの巣窟で過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる