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光り物だらけで売れない道化師…しかし、大事にはされている
情報収集
しおりを挟む「…あっ、どうせならもっとエバンスを目立たせるような内容考えればよかった…どうせ、あいつ俺の功績にならないからって渋ってるだろうし…もったいないことしたなぁ…」
「…私は勿体無いの定義を疑うわよぉ~……毎回そうだけどぉ…いいのかしらだ?」
「ん?」
「だから、あなたの功績の話よぉ」
「あー…いいんだよ、そんなもんは適した奴が貰うもんだし」
「…それなら貴方じゃないのよぉ」
マリーナは不満げに告げる。
…まぁ皆んな優しいから言いたいことはわかるけど…
「いやでもさ、結果として人の役に立つなら何でも構わないんだよ、俺は」
「…無欲も体に毒」
「なんだよ、リメルダ。誰かからの期待を浴びないのは体に悪いって言いたいのか?。おあいにくさまだっての…俺は道化師だからねぇ~、のらりくらりと場を回すのがお仕事なんだよ…そこに期待だのは関係ないって感じだな」
「……はぁ……シャールさんの無欲さはもはや私でも回復できません…」
「…難病扱い酷くない?……それに、エバンスはいずれ“王”様になるんだからよ…数多くの功績があってもいいだろ」
そう、エバンスはまさに勇者であり王子なのだ。
今は、勇者という立場と修行という理由で冒険者なんかやってるが…いずれは俺達の遥か上にいく存在だ。
もちろん、他にも王位継承権を持ってる王族はいるから、無条件にはいかないだろうが…
こうやって冒険者をしながら功績稼ぎができるなら正直楽勝だろう。
なんせ、すでに数千もの実績を上げてるからな。
だが、念には念を入れて…な?
「…エバンスのことは理解しているけれどぉ…もぅ他の候補者じゃ相手にならないくらいじゃない…そろそろ貴方が目立ち出しても問題ないと思うけれどぉ?」
「そういった油断は大敵だってな……正直、エバンスが王になるのはもはや決定事項に近い。長年の功績に加えて才色兼備…性格が良いときてからの勇者様ときた。むしろ、あいつ以外に王という存在に値する奴がいるのかって話だ。……でもな、何事にも確実な事はない。エバンス以外が王になる確率はかなり低いが0じゃない。むしろ、僅かな隙間を築こうと隙をうかがってるだろうよ」
「…否定できないわねぇ…」
醜い争いに関しては何やら思うところがあるのか、はぁと深いため息をはくマリーナ。
「だから1つでも多くあいつの手柄にしてやるのさ。それが…まぁなんだ…俺という存在を認めてくれてることへの礼って奴だ」
「…言いたい事はわかったわぁ…でも、またエバンス荒れるわよぉ?」
「……そんときはまぁ…任せるわ」
エバンスは感情を爆発させて怒るタイプじゃない。
常にニコニコニコニコ笑みを浮かべながら静かに不満ですオーラを出しまくるんだ…あいつ…
「…何とかなだめる方法をかんがえないとなぁ…って、言ってる間に到着だな」
足を止めれば、俺たちは目的地を見上げた。
そこは鍛冶屋。
しかもこの街の中で1番信頼を置ける鍛冶屋だ。
「おやっさーん。お疲れー」
「ん…おぅ!?勇者んとこの道化坊主じゃねーか!!」
中にいた厳ついおっさんが元気よく答える。
「それに魔女に聖女に守り手まで来るなんてなぁ…これは珍しいこともあったもんだっ」
「そう言われると確かに…基本エバンスと来るか俺1人だけだし……そもそもリメルダはともかく、マリーナとエリナは金属系の武具は必要としてないからなぁ」
「…私としては、多少なりともつけて頂きたいが…」
リメルダが不満そうにつぶやく。
「…あ…あははっ……すみません…ひ弱で…」
「あんなのつけてたら動きにくいし、重くて魔法に集中できないわぁ…ゴツゴツしたのは苦手なのよぉ」
エリナはそもそも体が小さいため、力も弱い。
だから軽装備の胸当てすら重たいとなってしまうほどだからつけるにつけられない。
マリーナに関しては魔法を言い訳にしているが、そもそも着たくないだけだ。
「がはははっ!!いいじゃねーかっ、武具ってのは使い手にあったものかどうかが重要だからよぉ!!」
「…へぇ…」
俺はマリーナが小さくそう漏らすのを聞き逃さなかった。
珍しいな…
あの言い方は興味を示した時の言い方だ。
しかも好意的な…
滅多に他人に興味を示さないマリーナが興味を引くなんてそうそう見れる光景じゃない。
…エバンスのやつ、この事を知ったら羨ましがるだろうなぁ…
なんて思いながら、俺は本題に入った。
「すまんね、大所帯で来ちまって…実は相談…後頼みがあってな」
「ぁぁ?俺に相談と頼みだぁ?」
不思議そうに首を傾げる親方にマルチポイズンスライムについて話をした。
「…てな感じなんだよ」
「…なるほどな……」
話を聞いた親方は腕を組みながらこたえる。
「…十中八九、道化坊主の考えは正しいと思えるぜ。実際の判断材料がないから何とも言えないけどよ…」
「…やっぱり、マルチポイズンスライムの毒は…」
「かなり強力な溶解液なんだろうな…だが、効力の減少が早い…なんともまぁ、厄介な相手に進化したなぁ…」
おやっさんは頭をかく。
「…シャールよ。聞いても良いか?」
「ん?、何だよリメルダ」
「…何故この人に意見を聞きにきたのだ?。倒すための武具を探すためか?」
「え?…ぁぁ~、リメルダは知らなかったのか?」
「…何が知らないのぉ?」
「マリーナ…それにエリナもかぁ……」
「普通はこういう反応が正解だと思うぜ?、普通武具屋の店主に、武具の相談はあれどモンスターの相談なんか来ねーよ」
「えー……まじかよ…」
「むしろ、坊主の変な勘の方が異常なんだよ…」
「…むむむ…すまん、シャールっ。説明をっ」
「…あー…えーとだな…簡単にまとめれば、モンスターの特徴について詳しいから聞いてるんだよ」
「まぁ…それはそうなんでしょうけれど…それなら学者とかじゃないのぉ?」
「いやいや、あんな現場どころか実物すら触らない…しかも部屋から出ないような堅物と話しても仕方ないって…」
「…ひでぇ言いようだなぁ…間違っちゃいないが…」
「事実を述べてるだけだっての。おやっさん達は毎日のようにモンスターの素材を使って武器作ったり、どんな作りにしたら有効的か、攻撃を防ぐならどうしたらいいいとか考えながら作ってるんだぜ?」
「…言われてみれば…確かに」
「確かにお堅い知識なら学者どもの方が上だが、冒険者よりの考えならおやっさん達の方が信頼が置けるんだよ…少なくとも俺はな」
「がはっはっはっは!学者より上ってか!こりゃぁ予想外だぜっ!」
機嫌良く笑うおやっさん。
「まぁでも俺の考えなだけだからな?」
「いいってもんよっ。1人にでもそう思われてるってだけでも心地がいいもんだっ!…とと、話を戻すか……でもよぉ。そんな、悩むものかぁ?。……毒や溶岩とかを飛ばしてくるモンスターへの対処法なんざ、すでに決まったようなもんだろ?」
「…まぁ…念には念を入れてってな。もしやるなら、マリーナの魔法が主体になるからね」
近寄れない…今回みたいな毒を飛ばす攻撃手段の相手に対しての対抗策は簡単だ。
遠距離で攻撃する。
それだけだ。
近寄れないんだから当たり前の結論とも言える。
俺たちの場合、遠距離攻撃が可能なのは魔女であるマリーナだ。
マリーナには魔法で攻撃、俺たちはマリーナに攻撃が届かないように防御を行う形になる。
ある意味、危ないのは俺たちの方かもしれないが…まぁそれは置いておこう。
まだ他に問題もあるからな。
「…おやっさん…現物が無い状態で聞くのもあれなんだが…魔法のみでいけるかね?」
「……何とも言えねぇなぁ…」
苦い顔をしながら答えるおやっさん。
ポイズンスライムは弱いモンスターだが、魔法が効きづらいという長所もあったりする。
もちろん、魔女の魔法を耐えれるとかじゃ無いし、ちゃんと練習して技術を磨いた魔法使いなら問題ない範囲の耐性だ。
だが、今回は予想外な進化を遂げている。
…もしかしたら、その耐性も強化されたんじゃないかと考えているわけだ。
「…マリーナや皆はどう思う?」
「…そうねぇ…いくら進化したと言っても、私の魔法が効かないなんて事はないとは思うわぁ……」
「…私も同意見です。マリーナさんの魔法は強力ですから」
「……私もお嬢と魔女殿と同意見…だが、懸念はある」
「…完全耐性…か?」
小さく頷くリメルダ。
特定の事象に対する完全な耐性。
マグマタートスに火の魔法などが効かないように、魔法自体が効かないモンスターもいたりする。
元々、強くは無いとは言え、魔法に対して耐性があったのだから、能力が進化し、獲得していたとしてもおかしくはない。
「…でもありえるのかしらぁ…?」
「スライム種の進化は舐めねー方がいいぜ、魔女の姉ちゃん。1段階の進化でも、他と比べたら伸び幅が半端ないのが多いからな……まぁもともと貧弱だからってのもあるが……出来ればスライムの一部…は贅沢か…溶解液の一滴や二滴ありゃぁなぁ……」
おやっさんはさらにため息を吐いた。
言いたいことがわからないでも無い。
結局、俺たちは机上の空論でしか話していないのだから…そりゃ、実物が欲しくなるとこだ。
「流石にへたに手を出して返り討ちに遭いたくなかったからなぁ…」
「いや、それも正しい判断だ。ポイズンスライムは攻撃する時、その体から弱い毒液の塊を飛ばすから、マルチポイズンスライムも飛ばしてくるだろうしな…しかもかなり凶悪な毒をな…むしろ、今の状態じゃ採取すら厳しいかもなぁ…」
「…流石に採取は…ん?」
「ん?」
俺はある事に気がついた。
「あれ…でも確かに…」
「おいおい…どうしたんだよ、道化坊主?」
俺は記憶を探り続けるが、全く見当たらない。
本来ならば、あるはずだったものだから…
だから、みんなにも問いかけてみた。
「…なぁ皆…覚えてたらでいいんだが…」
「何かしら?」
「………“ポイズンスライムの毒液”…見かけたか?」
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