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光り物だらけで売れない道化師…しかし、大事にはされている
とりあえず、抜けたいです…
しおりを挟む全ての始まりは断言できる…絶対あの時だ。
「僕らのパーティーに入ってくれないか?」
まさかの上位“クラス”パーティーからのお誘いがあった時だ。
俺はその誘いを迷うことなく…
「はいっ!お願いします!!」
すぐに返事をしてしまった。
いや、わかるよっ!?
誰だって憧れるもんねっ、上位クラスのパーティー!
だっているだけでお得過ぎるもん!
上位クラスの能力は下位クラスとは比べ物にならないくらい向上するから、別に自分が弱くても良いわけだからね!
…まぁ俺もさぁ…必死に追いつこうとしたよ?
上位クラスといっても、なったからすぐに強くなるわけじゃない。
あくまで、成長する過程での伸び代が凄いだけだしね。
他の有名なパーティーにも、上位クラスの中に下位クラスは普通にいるし…
俺だってやれると思ったんですよ…
……で、まぁ…その…色々頑張っては見たものの……
今後このパーティーが次の段階にスムーズに進むためにも、俺の精神的負担に関しても、無理だという結論にたどり着きました。
…なぜかって?
……ちょうど仲間達が会話するところだから説明するわ…
「…今日も、皆無事に生還できてよかった…」
ほっと一息安堵の息を吐く美形すぎるイケメン…
はい、我等のパーティーリーダーにして最上位クラスの“勇者”様です。
しょっぱなから勇者様登場だよ…
「本当によかったですねぇ…怪我がないことは良いことです」
ふわふわぁとした雰囲気を出しながら、頷く金髪の女性…
こちらも最上位クラスの“聖女”様…
「んんっ…エリナは心配しすぎよー。私らがどれだけ高レベルなパーティーか理解してるでしょ?」
もはや服なのそれ…?ていういかがわしいローブを着ている彼女…
勇者や聖女に比べれば、ランクは下だがそれでもかなり上位にあたる“魔女”様…
「……エリナ殿とマリーナ殿の言葉はどちらも正しい…」
頑丈そうな玉鋼の鎧を身につけ、小さく頷くクール美人…
特殊クラスの“盾の担い手”…
勇者や聖女とは、また別のベクトルでレアなクラス…
滅多にお目にかかれないらしく、大体1万人に1人ぐらい?の確率らしい…
彼女の場合は、盾を扱う事に特化した特殊クラスで、盾をまるで体の一部のように扱うことができ、多少の重量による影響もあるみたいだけど…身体より大きな盾でも苦無く扱うことが出来るらしい。
…一緒のパーティーになってから、彼女が防衛した際、一度も破られたことはないのが彼女の鉄壁さを表しているだろう…
…いや、凄すぎませんか?
こんな歴史に名を残すようなパーティーですよっ?
御伽話に出てきそうな憧れクラスの集団ですよ?
…そんな中にいる俺といえば…
「……やっぱあのパーティーすげーよな」
「今日もレッドドラゴンを狩ったらしいぞっ…」
「まじかよッ…!…レッドドラゴンっていえば、王国騎士団すら危険視する凶暴なやつらじゃねーかっ」
「本当に凄いよねぇっ…」
「……本当…何であの中に道化師が混ざってるか全くわかんねーな…」
あっ、その道化師って言うのが俺です。
クラスには、戦闘用と非戦闘用の2つに分けられる。
簡単に言えばサポート職だ。
“道化師”は、下位クラスのサポート職になるんだが…
…これまた完全に酷くてなぁ…
鍛冶士とか錬金術師、地図士とかならまだチームサポートできてるように思えるんだけど…
道化師は特色が違いすぎる…
何てったって、芸をする職業だからな…
「本当、何であんな無能職業がチームにいるんだろうな…」
「…ただ、寄生してるだけなんじゃ?」
「うわぁっ…それって最低じゃんっ…」
「たまにいるぜーそういう奴…大した力もないくせに威張り散らかしたり、甘い蜜にあやかろうとする奴…」
…何だかどんどん非難の眼差しでこちらを見ている気もするけど…
いいぞっ、もっと言ってくれ!
…あっ、別にマゾとかじゃないよ?
正直、俺が不釣り合いなのは重々承知してるからね…
抜ける方がパーティーにとって一番の最善策なのは理解してるんだけど…“とある事情”のせいで抜けるに抜けれないし…
…単純に俺への悪評が増えれば、こいつらも俺を追い出すだろうと言う算段が…
「…君達…僕らの大切なメンバーを貶すっていうのはどういう了見かな?」
「…ぁ…ぇ…?」
…あー…ウチのリーダー様が笑顔のまま突撃しちゃったよぉ…
…そうですよねぇ…こうなりますよねぇ…
「…お説教が必要なようですねぇ…」
「待ちなさい、エリナ。ちょうど触媒が足らなかったのよ。こんな奴らでも低ランクぐらいの材料になるでしょ」
やめたげなさい、声も出せないくらいにびびって縮こまってるじゃないか。
とりあえず、魔力を抑えてね?
こっちも近寄れないから…ねっ?
「…気にする事はない」
俺に対して、盾の担い手…リメルダが一言…
たぶん、俺に対して陰口なんて気にするなって意味と、彼らの処遇に対して気にするなって意味があるんだろうけど…
「…いや、そうはいかんでしょ…あれ、まじでやりかねないし…」
俺は、懐から縄をだせばスキルを発動させながら三人に向かって投げる。
…よしっ、つれた。
「…ごめんね~ウチのリーダー達が迷惑かけて~。とりあえず、口は災いの元だからまじで気をつけてねっ。あっ!居ない場所なら隙に言ってくれていいからさっ!」
詰められてた彼らは、顔を硬らせながら、ただただコクコクと首を振っていた。
…できるだけ、声色を優しくして話しかけたんだけどこれかぁ……そりゃぁ神がかった魔力やら威圧やらをもろに受けたんだし…たぶん凄い怖かったんだろうなぁ…かわいそうに…
「何で止めるんだいっシャールっ!」
「いや、そりゃ止めるでしょ」
「仲間のことを馬鹿にされたのですっ、お説教は大事だと思います!」
「相手がビビり散らすほどのお話はお説教には当たりません」
「…もうちょっとキツくてもいいんだけど…縛り方が甘くないかしら?」
「…一体何を言っているのか理解できないし、したくないけど…とりあえず落ち着いて…ね?」
俺は3人をなだめながら深くため息を吐いた。
……凄い仲間意識が高い…いや、高すぎるパーティーなんだよ…うん…
…これがやめるにやめられない理由なんだけどね…
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