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第三章
04.シュレヌ要塞①
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陛下にお話しすると、
「それもいいだろう。行ってらっしゃい。気を付けるんだよ、姫」
と南方行きはあっさり許可された。
私とジェローム様、それにアラン様にリーン君の四人は翌日には南へと旅立った。
ジェローム様とアラン様の竜はゲルボルグより人に慣れているので、私やリーン君を背中に乗せてくれるのだ。
ゲルボルグは王子以外は竜騎士も背中に乗せないと有名な竜らしいが、私のことは嫌がらないで乗せてくれる。
目指すのは、マルティアとの国境、最南端のシュレヌだ。
マルティア国と我が国は今は友好国だが、長い歴史の間には戦争もあった。
南方は最後に我が国となった地域で、元々は竜の国でもマルティアでもない別の国家だった。その国はマルティアと戦い、竜の国に援軍を頼み、最終的に竜の国に併合されるのを選んだ。
そんな経緯からマルティアと竜の国は実はあまり仲良くない。
マルティアとはほとんど貿易もなく、国境を巡る小競り合いも多いのだという。
「例の水竜様に矢を放った罰当たりはマルティアの第二王子なんだけど、第三王子はこの南部に進軍しようとしていたのよ」
とジェローム様は教えてくれた。
そんな南方シュレヌにはシュレヌ要塞と呼ばれる大きな要塞がある。
王子はそこを拠点としているらしい。
王都からシュレヌまで、竜なら三日の距離だが、私とリーン君がいるため、ゆっくり休み休み飛び、辿り着いたのは四日目の昼頃だった。
「えっ、兄さん?えっ、エルシー様?」
竜から降りた私達を出迎えたのは、王子ではなく、ジェローム様の弟のネイト様だ。
アビントン侯爵家は代々武家の名門と知られ、長兄様と次男のジェローム様はそれぞれ騎士と竜騎士をなさっているが、ネイト様は一族では変わり種で文官なのだ。
「あ、あんた、ここにいたの?」
ジェローム様の言葉にネイト様が口をへの字にする。
「ご挨拶だな。この1カ月はここで働き詰めだよ。兄さんこそ、何しに来たの?王太子殿下ならここにはいないよ」
「えっ、王子、いないんですか?」
「あっ、エルシー様、ご挨拶が遅れ、申し訳ありません。ご機嫌麗しゅう。今日もお美しい」
ネイト様は貴公子らしくお世辞と共にご挨拶下さるが、それより聞きたいことがあってうずうずした。
「はい、お久しぶりです、ネイト様もお元気そうで何よりです。あの、王子はここにいないんですか?」
ネイト様は頭を掻く。
「はい、一昨日、例の見回りで出て行かれたんですよ、北に向かわれるそうです」
「あれれ、入れ違いですか」
アラン様もやってきて話に加わる。
そういえば、竜の鳴き声がしない。竜達は互いの鳴き声で状態を確認し合うのだ。
「はい。見回り先が遠い北方なので十日は帰らないとおっしゃいました。帰り道で王都に立ち寄られ、妃殿下様とご一緒にお戻りの予定だとそれはそれは嬉しそうにおっしゃっておいででした。いやあ、僕、王子が笑うところ初めて見たよ、兄さん」
「そう?王子、エルシー様と一緒だと割とニヤニヤしてるわよ」
「えっ、どうしましょう」
王子、王都で私のこと迎えに行くつもりだったらしい。
大人しく待ってれば、会えたのか?
予想もしなかったことにうろたえる私だが、アラン様は動じてない。
「じきに戻られるってことですから、ここで待ちましょう」
「王子、怒りますかね」
「あ、多分、怒ります。カンカンですが、やっちゃまったことは仕方ないです」
強い。
アラン様は強すぎる。
そんなアラン様を尊敬の眼差しで見たのは私だけではない。その場にいた全員だ。
「いっ、一緒に怒られますから」
「あはは、それは心強いですよ」
「いや、本当に心強い。エルシー様がいらっしゃるなんて、なんたる幸運……天は僕らを見捨てなかったようだ」
何でか、ネイト様は大袈裟なことを言い大きくため息をつく。周りの方々も一斉に頷いた。
「えっと?」
「とにかく、中にお入り下さい、エルシー様。お疲れでなければ是非ご相談したいことがございます」
「それもいいだろう。行ってらっしゃい。気を付けるんだよ、姫」
と南方行きはあっさり許可された。
私とジェローム様、それにアラン様にリーン君の四人は翌日には南へと旅立った。
ジェローム様とアラン様の竜はゲルボルグより人に慣れているので、私やリーン君を背中に乗せてくれるのだ。
ゲルボルグは王子以外は竜騎士も背中に乗せないと有名な竜らしいが、私のことは嫌がらないで乗せてくれる。
目指すのは、マルティアとの国境、最南端のシュレヌだ。
マルティア国と我が国は今は友好国だが、長い歴史の間には戦争もあった。
南方は最後に我が国となった地域で、元々は竜の国でもマルティアでもない別の国家だった。その国はマルティアと戦い、竜の国に援軍を頼み、最終的に竜の国に併合されるのを選んだ。
そんな経緯からマルティアと竜の国は実はあまり仲良くない。
マルティアとはほとんど貿易もなく、国境を巡る小競り合いも多いのだという。
「例の水竜様に矢を放った罰当たりはマルティアの第二王子なんだけど、第三王子はこの南部に進軍しようとしていたのよ」
とジェローム様は教えてくれた。
そんな南方シュレヌにはシュレヌ要塞と呼ばれる大きな要塞がある。
王子はそこを拠点としているらしい。
王都からシュレヌまで、竜なら三日の距離だが、私とリーン君がいるため、ゆっくり休み休み飛び、辿り着いたのは四日目の昼頃だった。
「えっ、兄さん?えっ、エルシー様?」
竜から降りた私達を出迎えたのは、王子ではなく、ジェローム様の弟のネイト様だ。
アビントン侯爵家は代々武家の名門と知られ、長兄様と次男のジェローム様はそれぞれ騎士と竜騎士をなさっているが、ネイト様は一族では変わり種で文官なのだ。
「あ、あんた、ここにいたの?」
ジェローム様の言葉にネイト様が口をへの字にする。
「ご挨拶だな。この1カ月はここで働き詰めだよ。兄さんこそ、何しに来たの?王太子殿下ならここにはいないよ」
「えっ、王子、いないんですか?」
「あっ、エルシー様、ご挨拶が遅れ、申し訳ありません。ご機嫌麗しゅう。今日もお美しい」
ネイト様は貴公子らしくお世辞と共にご挨拶下さるが、それより聞きたいことがあってうずうずした。
「はい、お久しぶりです、ネイト様もお元気そうで何よりです。あの、王子はここにいないんですか?」
ネイト様は頭を掻く。
「はい、一昨日、例の見回りで出て行かれたんですよ、北に向かわれるそうです」
「あれれ、入れ違いですか」
アラン様もやってきて話に加わる。
そういえば、竜の鳴き声がしない。竜達は互いの鳴き声で状態を確認し合うのだ。
「はい。見回り先が遠い北方なので十日は帰らないとおっしゃいました。帰り道で王都に立ち寄られ、妃殿下様とご一緒にお戻りの予定だとそれはそれは嬉しそうにおっしゃっておいででした。いやあ、僕、王子が笑うところ初めて見たよ、兄さん」
「そう?王子、エルシー様と一緒だと割とニヤニヤしてるわよ」
「えっ、どうしましょう」
王子、王都で私のこと迎えに行くつもりだったらしい。
大人しく待ってれば、会えたのか?
予想もしなかったことにうろたえる私だが、アラン様は動じてない。
「じきに戻られるってことですから、ここで待ちましょう」
「王子、怒りますかね」
「あ、多分、怒ります。カンカンですが、やっちゃまったことは仕方ないです」
強い。
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そんなアラン様を尊敬の眼差しで見たのは私だけではない。その場にいた全員だ。
「いっ、一緒に怒られますから」
「あはは、それは心強いですよ」
「いや、本当に心強い。エルシー様がいらっしゃるなんて、なんたる幸運……天は僕らを見捨てなかったようだ」
何でか、ネイト様は大袈裟なことを言い大きくため息をつく。周りの方々も一斉に頷いた。
「えっと?」
「とにかく、中にお入り下さい、エルシー様。お疲れでなければ是非ご相談したいことがございます」
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