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48.夜会
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王宮の入り口に馬車が止まり、王子と私が馬車を降りると、辺りがざわめいた。
……王子に。
王子、めちゃくちゃ格好良かった。
「エルシー」
とお姫様にするみたいに王子は手を差し出して、エスコートしてくれる。
本来王家主催の宴に王子が招待客として入り口から入ってくるのはおかしいのだが、王子は通常の王族とは扱いが違うらしい。
一度入り口から入り、そのまま私と王子は専用の控え室に行く。
全ての招待客が大広間に集まり、陛下が入場なさる。
ゲルボルグが私のことを誘拐した事件があった後なので、大事をとって王妃様は今日は私と王子が帰ってから参加なさる手筈になった。
ご配慮はとてもありがたい。
私達の入場は、陛下がお言葉を述べられた後になる。
侍従の方が王子と私を呼びに来て、入場する。
「グレン王太子殿下とエルシー様でございます」
『おおおっ』
沢山の人々の視線が一斉に集まり、とても緊張したが、よく見ると知っている人もいる。
お父様、お母様、兄様、姉様と義兄様、その他お茶会でお目に掛かった方々。
それに隣に王子がいる。
見上げると王子は安心させるように頷いた。
王子は私に歩調を合わせてゆっくり歩いてくれた。
陛下の前に進み出て、王子が陛下にご挨拶した後、私のことを紹介する。
「妻のエルシーです」
「エルシーでございます」
と私も陛下に礼する。
陛下は一言、お言葉を返されることになっていた。
「よく来たね、可愛らしいご令嬢だ。弟をよろしく」とか適当なお世辞を交えてお返事下さる……はずだった。
「グレン、エルシー姫とお前はまだ結婚はしてないよ。妻と言うのはまだ早い。止めなさい」
……なんて言うのは聞いてない。
王子はキッと陛下をにらんだ。本気にらみしている。
「兄上、ですが、エルシーは既に私の妻です」
「エルシー姫は美しい。今宵の姫は花の妖精がこの王宮に迷い込んできたかのようだ。はやる気持ちは分かるが、正式な婚姻を果たすまでは兄としてけじめを付けて欲しいと思っている。エルシー姫と呼びなさい」
急に皆ひそひそし始めた。
……これって陛下は結婚に反対だと思われても仕方ない。
だが王子は何故かニヤッと不敵に微笑み、私の髪を乱し、後れ毛を掻き分けた。
今日の髪型は編み込みのハーフアップにしている。
「…………!」
陛下は、息を呑んだ。
「……エルシー、お目通りがすんだ。ダンスを踊ろう」
と王子は私の腰を抱いてさっさと壇上から降りる。
歩きながら額にキスして、かすめるように唇と唇を合わせる。
辺りがざわっとなった。
人前で恥ずかしいことするから頬が赤くなる。
「ぐっ、グレン様」
王子と私は一曲踊った。
踊りながら、私は王子に思わず聞いてしまった。
「陛下って私達の結婚反対なんですかね?」
王子はものすごく不機嫌そうに陛下に視線を投げる。
陛下、こっち見てる……。
「兄は本気でお前を手に入れるつもりなのだ」
「えっ」
「必ず守るから心配しなくていい。だが、エルシーは夜会が好きか?」
と王子は不安そうに顔を覗き込んでくる。
「はい、楽しいです。すごく綺麗にしてもらってグレン様格好いいから好きです。また来たいですね、一緒に」
「本当か?一緒が良いんだな」
「はい、一緒が良いです。グレン様の正装格好いいです」
王子はあまりこういう席にはこないらしい。
だから正装姿の王子はとても珍しく、さらに陛下にご挨拶するとすぐに帰るからダンスを踊る王子は初めて見るという人が多かった。
格好良くないところを知っていてもなお、すごく格好良く見えるのだから、格好いい王子しか知らない若い令嬢方は皆、ぽーっと王子に見惚れている。
「ではまた来よう」
と王子は朗らかに笑った。
またざわめきが起こる。
王子が笑うのは世間では珍しいらしい。
楽しかったから一曲の予定が二曲踊って、三曲目を踊ろうとしたら、「天使」と誰かがするっと流れるように私の手を取った。
王子がその人を金色の瞳でにらむ。
「兄上……!」
陛下だった。
……王子に。
王子、めちゃくちゃ格好良かった。
「エルシー」
とお姫様にするみたいに王子は手を差し出して、エスコートしてくれる。
本来王家主催の宴に王子が招待客として入り口から入ってくるのはおかしいのだが、王子は通常の王族とは扱いが違うらしい。
一度入り口から入り、そのまま私と王子は専用の控え室に行く。
全ての招待客が大広間に集まり、陛下が入場なさる。
ゲルボルグが私のことを誘拐した事件があった後なので、大事をとって王妃様は今日は私と王子が帰ってから参加なさる手筈になった。
ご配慮はとてもありがたい。
私達の入場は、陛下がお言葉を述べられた後になる。
侍従の方が王子と私を呼びに来て、入場する。
「グレン王太子殿下とエルシー様でございます」
『おおおっ』
沢山の人々の視線が一斉に集まり、とても緊張したが、よく見ると知っている人もいる。
お父様、お母様、兄様、姉様と義兄様、その他お茶会でお目に掛かった方々。
それに隣に王子がいる。
見上げると王子は安心させるように頷いた。
王子は私に歩調を合わせてゆっくり歩いてくれた。
陛下の前に進み出て、王子が陛下にご挨拶した後、私のことを紹介する。
「妻のエルシーです」
「エルシーでございます」
と私も陛下に礼する。
陛下は一言、お言葉を返されることになっていた。
「よく来たね、可愛らしいご令嬢だ。弟をよろしく」とか適当なお世辞を交えてお返事下さる……はずだった。
「グレン、エルシー姫とお前はまだ結婚はしてないよ。妻と言うのはまだ早い。止めなさい」
……なんて言うのは聞いてない。
王子はキッと陛下をにらんだ。本気にらみしている。
「兄上、ですが、エルシーは既に私の妻です」
「エルシー姫は美しい。今宵の姫は花の妖精がこの王宮に迷い込んできたかのようだ。はやる気持ちは分かるが、正式な婚姻を果たすまでは兄としてけじめを付けて欲しいと思っている。エルシー姫と呼びなさい」
急に皆ひそひそし始めた。
……これって陛下は結婚に反対だと思われても仕方ない。
だが王子は何故かニヤッと不敵に微笑み、私の髪を乱し、後れ毛を掻き分けた。
今日の髪型は編み込みのハーフアップにしている。
「…………!」
陛下は、息を呑んだ。
「……エルシー、お目通りがすんだ。ダンスを踊ろう」
と王子は私の腰を抱いてさっさと壇上から降りる。
歩きながら額にキスして、かすめるように唇と唇を合わせる。
辺りがざわっとなった。
人前で恥ずかしいことするから頬が赤くなる。
「ぐっ、グレン様」
王子と私は一曲踊った。
踊りながら、私は王子に思わず聞いてしまった。
「陛下って私達の結婚反対なんですかね?」
王子はものすごく不機嫌そうに陛下に視線を投げる。
陛下、こっち見てる……。
「兄は本気でお前を手に入れるつもりなのだ」
「えっ」
「必ず守るから心配しなくていい。だが、エルシーは夜会が好きか?」
と王子は不安そうに顔を覗き込んでくる。
「はい、楽しいです。すごく綺麗にしてもらってグレン様格好いいから好きです。また来たいですね、一緒に」
「本当か?一緒が良いんだな」
「はい、一緒が良いです。グレン様の正装格好いいです」
王子はあまりこういう席にはこないらしい。
だから正装姿の王子はとても珍しく、さらに陛下にご挨拶するとすぐに帰るからダンスを踊る王子は初めて見るという人が多かった。
格好良くないところを知っていてもなお、すごく格好良く見えるのだから、格好いい王子しか知らない若い令嬢方は皆、ぽーっと王子に見惚れている。
「ではまた来よう」
と王子は朗らかに笑った。
またざわめきが起こる。
王子が笑うのは世間では珍しいらしい。
楽しかったから一曲の予定が二曲踊って、三曲目を踊ろうとしたら、「天使」と誰かがするっと流れるように私の手を取った。
王子がその人を金色の瞳でにらむ。
「兄上……!」
陛下だった。
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