34 / 119
34.国王陛下のお茶会②
しおりを挟む
アラン様の声に王妃様は柳眉を逆立てる。
「誤解?」
「グレン王太子殿下はこう、おっしゃいました。『一目会ったその時に激しい感情に揺さぶられ、腕に閉じ込め、逃がすまいと欲した。かぐわしい匂いに誘われ、情念のままに花を手折った所業は許されざることではあるが、そうすることしか出来ぬほど、花は可憐であった……』」
なんだ、それは?
誰の話だ?
唖然とアラン様を見上げたがアラン様はこちらには一瞥も寄越さず続ける。
「エルシー様はそんな王太子殿下の情熱にほだされて王太子殿下のお手を取られた。そんなエルシー様を心優しき天使であると王太子殿下はおっしゃいました」
確かに天使言ってたけど。
「愛のない結婚などとんでもない。王妃様、ご安心下さい。王太子殿下はエルシー様を深く愛しておいでです」
「…………」
王妃様は明らかにご機嫌を害した様子で何故だ?アランではなく、私をにらんだ。
アランはいつも通り陽気だ。
からかうように笑いながら私に言った。
「エルシー様もちゃんと申し上げないと。王太子殿下のこと『好き』って言ったじゃないですか」
今、言うのか?
「いいいっ、言いましたけど。陛下の御前ですよ!」
「陛下の御前ですから、申し上げるんですよ。バンバン子供産んで王国安定に務めると。王子産めるまで国防掛かってるから頑張るとおっしゃったじゃないですか。陛下もご安心なさるでしょう」
そうアラン様が言うと、急に陛下と王妃様は沈黙した。
「…………」
何だろう。気まずい空気が流れる。
失礼寄り発言だったからか?
アラン様よ、反省しろ。
その後で王妃様は「急に気分が悪くなった」と言い出し、お茶会はすぐに終わった。
「今度は私一人でグレンが居る時にそちらにお伺いしようと思う」
と国王陛下には謝られたような気がする。
「君は思っていた人と違う。グレンが惹かれたのが分かる……」
***
私は帰りの馬車の中でアラン様に尋ねた。
「アラン様、なんであんな嘘を?」
アラン様はにっこり私に笑いかける。
「少し脚色はしましたけど、別に嘘はついてませんよ。王妃様ってちょっと恋愛脳なんです。自分が愛されているって思いたいタイプ?」
随分辛辣なことをアラン様はサラリと言い放った。
「王子とエルシー様が超熱愛って言ったら絶対悔しがると思って」
「ご不興を買ったじゃないですかね、アラン様、大丈夫ですか?」
アラン様はいつも雑に呼び捨てている王子をわざとらしく王太子殿下と連呼した。
その度に王妃様がピクピクしていたのは見てしまった。
「大丈夫です。王妃様、逆恨みするタイプだからエルシー様のこと嫌いになっただけ」
「えっ、私?何故?そして大丈夫じゃないですよ、それ。私、大ピンチじゃないですか」
「大丈夫よ、王妃様は王子のお妃様になる子は誰だって嫌いだもの。元々ピンチなの、エルシー様」
と、ジェローム様が言った……。
「そんなの聞いてませんよ」
ジェローム様は少し考え込むように呟いた。
「それより、陛下、ちょっと変だったわね。最後、エルシー様に……」
「ああ、先輩もそう思いましたか。なんか狙ってる感じ?」
とアラン様も言った。
「えっ?そうでした?」
ジェローム様がじっと私を見る。
「この絶妙なダサさが男心をくすぐるのかしら」
失礼なことを言われた気がする。
「誤解?」
「グレン王太子殿下はこう、おっしゃいました。『一目会ったその時に激しい感情に揺さぶられ、腕に閉じ込め、逃がすまいと欲した。かぐわしい匂いに誘われ、情念のままに花を手折った所業は許されざることではあるが、そうすることしか出来ぬほど、花は可憐であった……』」
なんだ、それは?
誰の話だ?
唖然とアラン様を見上げたがアラン様はこちらには一瞥も寄越さず続ける。
「エルシー様はそんな王太子殿下の情熱にほだされて王太子殿下のお手を取られた。そんなエルシー様を心優しき天使であると王太子殿下はおっしゃいました」
確かに天使言ってたけど。
「愛のない結婚などとんでもない。王妃様、ご安心下さい。王太子殿下はエルシー様を深く愛しておいでです」
「…………」
王妃様は明らかにご機嫌を害した様子で何故だ?アランではなく、私をにらんだ。
アランはいつも通り陽気だ。
からかうように笑いながら私に言った。
「エルシー様もちゃんと申し上げないと。王太子殿下のこと『好き』って言ったじゃないですか」
今、言うのか?
「いいいっ、言いましたけど。陛下の御前ですよ!」
「陛下の御前ですから、申し上げるんですよ。バンバン子供産んで王国安定に務めると。王子産めるまで国防掛かってるから頑張るとおっしゃったじゃないですか。陛下もご安心なさるでしょう」
そうアラン様が言うと、急に陛下と王妃様は沈黙した。
「…………」
何だろう。気まずい空気が流れる。
失礼寄り発言だったからか?
アラン様よ、反省しろ。
その後で王妃様は「急に気分が悪くなった」と言い出し、お茶会はすぐに終わった。
「今度は私一人でグレンが居る時にそちらにお伺いしようと思う」
と国王陛下には謝られたような気がする。
「君は思っていた人と違う。グレンが惹かれたのが分かる……」
***
私は帰りの馬車の中でアラン様に尋ねた。
「アラン様、なんであんな嘘を?」
アラン様はにっこり私に笑いかける。
「少し脚色はしましたけど、別に嘘はついてませんよ。王妃様ってちょっと恋愛脳なんです。自分が愛されているって思いたいタイプ?」
随分辛辣なことをアラン様はサラリと言い放った。
「王子とエルシー様が超熱愛って言ったら絶対悔しがると思って」
「ご不興を買ったじゃないですかね、アラン様、大丈夫ですか?」
アラン様はいつも雑に呼び捨てている王子をわざとらしく王太子殿下と連呼した。
その度に王妃様がピクピクしていたのは見てしまった。
「大丈夫です。王妃様、逆恨みするタイプだからエルシー様のこと嫌いになっただけ」
「えっ、私?何故?そして大丈夫じゃないですよ、それ。私、大ピンチじゃないですか」
「大丈夫よ、王妃様は王子のお妃様になる子は誰だって嫌いだもの。元々ピンチなの、エルシー様」
と、ジェローム様が言った……。
「そんなの聞いてませんよ」
ジェローム様は少し考え込むように呟いた。
「それより、陛下、ちょっと変だったわね。最後、エルシー様に……」
「ああ、先輩もそう思いましたか。なんか狙ってる感じ?」
とアラン様も言った。
「えっ?そうでした?」
ジェローム様がじっと私を見る。
「この絶妙なダサさが男心をくすぐるのかしら」
失礼なことを言われた気がする。
14
お気に入りに追加
3,630
あなたにおすすめの小説
【R18】純情聖女と護衛騎士〜聖なるおっぱいで太くて硬いものを挟むお仕事です〜
河津ミネ
恋愛
フウリ(23)は『眠り姫』と呼ばれる、もうすぐ引退の決まっている聖女だ。
身体に現れた聖紋から聖水晶に癒しの力を与え続けて13年、そろそろ聖女としての力も衰えてきたので引退後は悠々自適の生活をする予定だ。
フウリ付きの聖騎士キース(18)とはもう8年の付き合いでお別れするのが少しさみしいな……と思いつつ日課のお昼寝をしていると、なんだか胸のあたりに違和感が。
目を開けるとキースがフウリの白く豊満なおっぱいを見つめながらあやしい動きをしていて――!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。
サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。
ゆちば
恋愛
ビリビリッ!
「む……、胸がぁぁぁッ!!」
「陛下、声がでかいです!」
◆
フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。
私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。
だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。
たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。
「【女体化の呪い】だ!」
勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?!
勢い強めの3万字ラブコメです。
全18話、5/5の昼には完結します。
他のサイトでも公開しています。
【R18】はじめてのかんきん〜聖女と勇者のワクドキ♡監禁生活〜
河津ミネ
恋愛
「コーヘイ、お願い……。私に監禁されて?」
聖女マリエルは勇者コーヘイにまたがりながら、震える声でつぶやいた。コーヘイが腕を上げればはめられた手枷の鎖がジャラリと嫌な音を立てる。
かつてこの世界に召喚された勇者コーヘイは、無事に魔王討伐を果たし、あとは元の世界に帰るだけのはずだったが――!?
「いや……いいけど、これ風呂とかどうすんの?」
「え! お風呂!? どうしよう……」
聖女と勇者の初めてのドキドキ監禁生活(?)がいま始まる!
異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました
空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」
――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。
今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって……
気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
竜王の花嫁
桜月雪兎
恋愛
伯爵家の訳あり令嬢であるアリシア。
百年大戦終結時の盟約によりアリシアは隣国に嫁ぐことになった。
そこは竜王が治めると云う半獣人・亜人の住むドラグーン大国。
相手はその竜王であるルドワード。
二人の行く末は?
ドタバタ結婚騒動物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる