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二年目
08.冬の戯れ4
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暦の上では春が近づいているが、北のグリューニングではまだまだ寒い。
そんな頃にロゼッタは息子ランドルフの断乳を決めた。
ランドルフも五ヶ月になり、離乳食も始まり、乳母の乳も渋々だが飲んでいる。
元々三ヶ月でロゼッタは乳をやるのを止めるつもりだったが、ランドルフが喜んで乳を吸うのが可愛いので躊躇っていると、ジークフリートが背中を押してくれた。
「冬の間だけならロゼッタの無理ない範囲で続けたらどうだ?」
春になればロゼッタも本格的に伯爵夫人としての仕事に取りかからねばならない。
伯爵家の当主夫妻として子供はもう一人二人欲しい。
貴族の間では乳をやっている間は子を成さないという俗説があり、夫人自らが子に乳をやるのは好まれなかった。
既にジークフリートは次の子をせっつかれているが、ロゼッタの耳には入れないで守ってくれているのは知っていた。
断乳してすぐは乳が張ったり、ランドルフも乳を欲しがってロゼッタに抱かれる度に乳房をまさぐってきたりと大変だったが、一週間もすれば母子共に落ち着いた。
体調も戻ったそんなある日――。
ジークフリートとロゼッタの二人の晩餐の席で、グラスに黄金色の発泡酒が注がれた。
「えっ」
目を丸くするロゼッタに対面に座ったジークフリートが微笑む。
「林檎の発泡酒だ。これなら飲めるだろう」
じんわり胸が熱くなる。
「覚えていて下さったの?」
妊娠中と母乳をあげる間、飲酒は避けていた。
ロゼッタは元々酒はほとんど飲まなかったので、禁酒は苦ではない。
ただ、林檎の発泡酒や蜂蜜酒のような甘めの酒を飲むのは好きだとジークフリートに言ったことがある。
一年以上も前のことだ。
「ああ、久しぶりに君と酒が飲めるな」
「はい」
その日の食事は随分と美味しく感じた。
だが、たった一杯だったが酔いが回ったらしく、デザートの頃には食事中にもかかわらずうつらうつらしてしまう。
いつの間にかジークフリートが側に来てロゼッタを心配そうに覗き込んでいる。
「酔ったみたいだな」
「……申し訳ありません」
頭が痛いわけではないが、ふわふわとしてとにかく眠い。
「いや、久しぶりだからな。今、ベッドに連れて行ってやる」
そう言うと、ジークフリートは軽々ロゼッタを抱き上げた。
ジークフリートにベッドの上に横たえられ、あわてて侍女も来て服を脱がされ、ネグリジェに着替える。
「ごめんなさい」
「謝ることはない。眠れそうか?ゆっくり休みなさい」
ジークフリートはランドルフにするように優しげにロゼッタの額に口付ける。
「おやすみ、ロゼッタ」
ジークフリートの腕をロゼッタは強く引いた。
「いや…行かないで」
「どうした?気分でも悪いか?」
ロゼッタは子供のように首を振る。
「そうではなくて、添い寝して……」
酒のせいか、ロゼッタがおかしい。
普段は我が儘の一つも言わないが、添い寝して欲しいとねだられた。
酔っていて頬か赤くて目が潤んでいる。
実に色っぽかった。
「添い寝か?可愛いことを言うな、ロゼッタは」
滅多にない妻のおねだりだ。叶えてやりたい。
夜にしようと思っていた仕事はあるが、翌日に回しても問題ない。頭の中で素早く計算を弾いて、ジークフリートは今度はロゼッタの頬に口付けようと顔を近づけると、ロゼッタの両手で挟み込まれる。
そのまま、キスされた。
ロゼッタから唇を絡ませる。
歯を舌でなぞってペチョペチョと舌先だけで遊ぶように舐め合う。
セックスを誘いかける、甘いキスだった。
「行かないで……ジークフリート様」
「ロゼッタ、ここにいる」
ロゼッタの指先がジークフリートのシャツを脱がそうとする。
一つ一つシャツのボタンを外し、中に着ていた肌着ごしに抱きついた。
「ジークフリート様……」
ロゼッタは幸せそうな、それでいて切なげにジークフリートの名を呼んだ。
「ロゼッタ?」
ロゼッタの手が次はズボンを脱がそうとする。
ベルトの金具が上手く外せない。格闘するロゼッタの手をジークフリートは掴んで止めた。
「止めなさい。手を怪我してしまう」
「でも」
金具を引っかけて怪我でもしたら可哀想だ。
ほっそりした指の感覚は、自分のそれとは違いすぎる。
華奢で白くて柔らかい。
ロゼッタは悲しげにうつむいた。
「捨てないで、ジークフリート様」
か細い声がジークフリートに訴える。
「捨てたりはしない」
ジークフリートはロゼッタを抱きしめた。
「捨てたりなどは決してしない」
「でもでも……」
とロゼッタは首を横に振る。
『本格的に酔っ払ってるな……』
ジークフリートは今にも泣きそうなロゼッタに困り果てている。だが、甘えられて嬉しくもあった。
大人しいロゼッタが感情を吐露するのは珍しい。
「捨てないで」
「当たり前だ。捨てたりはしない」
なおも絡んでくるロゼッタを抱きしめてジークフリートは金色の髪を撫でる。
「本当に?」
「こんなに可愛い妻を捨てる訳ないだろう」
「私、可愛い?」
「可愛い」
「本当に可愛い?」
「本当に本当に可愛い」
端から見れば馬鹿みたいな会話を繰り返して、ジークフリートは何となく幸せだった。
痴話喧嘩というのを父と母が大昔に繰り広げていたのを思い出した。
ロゼッタの胸は大きいが、細い体を抱きしめて、しみじみとした気分に浸った。
「ああ、結婚したんだな……」
たった二年前は存在すら知らなかった娘と結婚して子供が生まれた。
この娘とこの娘が生んでくれた子だけは、命を賭けて守ってやりたいと思う。
「私のこと、愛してる?」
ロゼッタはなおも聞いてくる。
「もちろん愛してる」
「本当に?」
「本当だ」
膝に半分乗っかっていたロゼッタをベッドに組み敷いて、キスした。
唇は合わせたまま、彼女を愛撫する。
ネグリジェの上から胸を揉み、尻を撫で回す。
長いキスの後で唇を離すと、ロゼッタは熱いため息を漏らした。
青い瞳が潤んで、頬は真っ赤だ。
「信じられないなら、証明して見せようか」
ロゼッタは頬を更に赤らめて、コクンと頷いた。
***
「ああぁん!」
酒のせいなのかロゼッタはかなり感じやすくなっていた。
いくらも愛撫しないうちに声を上げ始めた。
万事控えめなロゼッタはセックスの時も恥ずかしげに声を上げる。
「あん…あっんっ…んっ…あっ…そこっ!いいのいいのぉっ」
我慢して我慢してつい漏らしてしまうかすかな淫声も耳に心地よいが、存分鳴くロゼッタの嬌声は堪らなく魅力的だった。
「もう入れて、早くぅ」
とかなり積極的にねだられて、挿入してもめちゃくちゃに乱れた。
膣も大歓迎だった。
「やっ、イっちゃう…あっ、好きっ好きっ、ジークフリートさまぁ、好きっ」
「おっきいの。スゴい…あっ、きちゃう…だめぇっ…そこ…きもちいい……死んじゃう…」
ここまで来ると心配になってくる。
「本当に大丈夫か?頭痛がしたり、吐き気はないか?」
「やぁん、止めちゃ嫌っ」
「いや、大丈夫ならいいが……」
大丈夫そうなので続行したジークフリートは心ゆくまで楽しんだ。
***
ロゼッタが目を覚ましたのは、翌日の朝だった。
「う……」
小さく声を上げると喉が痛い。
そして何故か体中が痛い。
さらに裸だった。
身じろぎすると背中側から抱きしめられていた。ジークフリートだ。
ジークフリートはロゼッタより早く起きる。
こうして朝まで側に居るのは休日だけだが、今日は違うはず。
そもそも昨日の夕食の後から記憶がない。
いや、断片的に思い出してくる記憶にロゼッタは赤面を通り越して青ざめた。
そっと抱きしめられて、
「起きたのか?」
「ジー…」
夫の名を呼ぼうとしたが、出てくるのはかすれたしゃがれ声だ。
「無理に話すな」
唇に手を当てて止められる。
向かい合わせに抱き直されて、緑色の瞳に覗き込まれた。
「頭は痛くないか?気分は悪くないか?ああ、頷くだけでいい」
そう言われてロゼッタは首を縦にする。
「大丈夫か?」
もう一度頷く。
「昨日は少し酔ったみたいだな。飲ませてすまなかった」
「…………」
(ジークフリート様のせいではありません、お気になさらないで)
謝られてしまったロゼッタは大きく首を横に振る。
「いや、謝るのはそれだけじゃなくて……」
とジークフリートが赤面する。
「無理をさせてすまなかった」
「……」
(いえ、それもお気になさらないで)
記憶を思い出せば、誘ったのはロゼッタだ。
「き、気持ち良かった」
「……」
(そんな、恥ずかしいです)
「今日は無理をしないでゆっくり休んで欲しい。多分疲れたのもあるだろう。君が頑張るからつい甘えてしまっているところもあると思う。愛しているよ」
愛しているよ。
その言葉の後、ちゅっと額に口付けられて、ロゼッタはじわじわとせり上がるような喜びを感じた。
ジークフリートからいたわられて、認められている。
そして欲しかった愛の言葉を囁かれてロゼッタは思わず涙ぐんだ。
ジークフリートはそれを見て眉をひそめる。
「ロゼッタ?大丈夫か」
ロゼッタはジークフリートの手を取ってその手のひらにゆっくりと一文字ずつ書いた。
その文字をジークフリートが読み上げる。
「わ、た、し、も、あ、い、し、て、い、ま、す」
ジークフリートがロゼッタを抱きしめる。
「……ああ、ロゼッタ」
ロゼッタもジークフリートの背に腕を回して彼を抱きしめた。
北の冬は長い。だがじきにグリューニングに麗しの春がやってくる。
そんなある日のことだった。
**********
後書きです。
おっぱいな上に二年目は産後プレイと極めてニッチな作品になりました。
母乳プレイから断乳まで……。文字にすると本当にどうかな?って感じ。
そんな話に最後までお付き合い、どうもありがとうございます。お気に入りも感想も本当にどうもありがとうございました。
後一話番外編があって終了です。
そんな頃にロゼッタは息子ランドルフの断乳を決めた。
ランドルフも五ヶ月になり、離乳食も始まり、乳母の乳も渋々だが飲んでいる。
元々三ヶ月でロゼッタは乳をやるのを止めるつもりだったが、ランドルフが喜んで乳を吸うのが可愛いので躊躇っていると、ジークフリートが背中を押してくれた。
「冬の間だけならロゼッタの無理ない範囲で続けたらどうだ?」
春になればロゼッタも本格的に伯爵夫人としての仕事に取りかからねばならない。
伯爵家の当主夫妻として子供はもう一人二人欲しい。
貴族の間では乳をやっている間は子を成さないという俗説があり、夫人自らが子に乳をやるのは好まれなかった。
既にジークフリートは次の子をせっつかれているが、ロゼッタの耳には入れないで守ってくれているのは知っていた。
断乳してすぐは乳が張ったり、ランドルフも乳を欲しがってロゼッタに抱かれる度に乳房をまさぐってきたりと大変だったが、一週間もすれば母子共に落ち着いた。
体調も戻ったそんなある日――。
ジークフリートとロゼッタの二人の晩餐の席で、グラスに黄金色の発泡酒が注がれた。
「えっ」
目を丸くするロゼッタに対面に座ったジークフリートが微笑む。
「林檎の発泡酒だ。これなら飲めるだろう」
じんわり胸が熱くなる。
「覚えていて下さったの?」
妊娠中と母乳をあげる間、飲酒は避けていた。
ロゼッタは元々酒はほとんど飲まなかったので、禁酒は苦ではない。
ただ、林檎の発泡酒や蜂蜜酒のような甘めの酒を飲むのは好きだとジークフリートに言ったことがある。
一年以上も前のことだ。
「ああ、久しぶりに君と酒が飲めるな」
「はい」
その日の食事は随分と美味しく感じた。
だが、たった一杯だったが酔いが回ったらしく、デザートの頃には食事中にもかかわらずうつらうつらしてしまう。
いつの間にかジークフリートが側に来てロゼッタを心配そうに覗き込んでいる。
「酔ったみたいだな」
「……申し訳ありません」
頭が痛いわけではないが、ふわふわとしてとにかく眠い。
「いや、久しぶりだからな。今、ベッドに連れて行ってやる」
そう言うと、ジークフリートは軽々ロゼッタを抱き上げた。
ジークフリートにベッドの上に横たえられ、あわてて侍女も来て服を脱がされ、ネグリジェに着替える。
「ごめんなさい」
「謝ることはない。眠れそうか?ゆっくり休みなさい」
ジークフリートはランドルフにするように優しげにロゼッタの額に口付ける。
「おやすみ、ロゼッタ」
ジークフリートの腕をロゼッタは強く引いた。
「いや…行かないで」
「どうした?気分でも悪いか?」
ロゼッタは子供のように首を振る。
「そうではなくて、添い寝して……」
酒のせいか、ロゼッタがおかしい。
普段は我が儘の一つも言わないが、添い寝して欲しいとねだられた。
酔っていて頬か赤くて目が潤んでいる。
実に色っぽかった。
「添い寝か?可愛いことを言うな、ロゼッタは」
滅多にない妻のおねだりだ。叶えてやりたい。
夜にしようと思っていた仕事はあるが、翌日に回しても問題ない。頭の中で素早く計算を弾いて、ジークフリートは今度はロゼッタの頬に口付けようと顔を近づけると、ロゼッタの両手で挟み込まれる。
そのまま、キスされた。
ロゼッタから唇を絡ませる。
歯を舌でなぞってペチョペチョと舌先だけで遊ぶように舐め合う。
セックスを誘いかける、甘いキスだった。
「行かないで……ジークフリート様」
「ロゼッタ、ここにいる」
ロゼッタの指先がジークフリートのシャツを脱がそうとする。
一つ一つシャツのボタンを外し、中に着ていた肌着ごしに抱きついた。
「ジークフリート様……」
ロゼッタは幸せそうな、それでいて切なげにジークフリートの名を呼んだ。
「ロゼッタ?」
ロゼッタの手が次はズボンを脱がそうとする。
ベルトの金具が上手く外せない。格闘するロゼッタの手をジークフリートは掴んで止めた。
「止めなさい。手を怪我してしまう」
「でも」
金具を引っかけて怪我でもしたら可哀想だ。
ほっそりした指の感覚は、自分のそれとは違いすぎる。
華奢で白くて柔らかい。
ロゼッタは悲しげにうつむいた。
「捨てないで、ジークフリート様」
か細い声がジークフリートに訴える。
「捨てたりはしない」
ジークフリートはロゼッタを抱きしめた。
「捨てたりなどは決してしない」
「でもでも……」
とロゼッタは首を横に振る。
『本格的に酔っ払ってるな……』
ジークフリートは今にも泣きそうなロゼッタに困り果てている。だが、甘えられて嬉しくもあった。
大人しいロゼッタが感情を吐露するのは珍しい。
「捨てないで」
「当たり前だ。捨てたりはしない」
なおも絡んでくるロゼッタを抱きしめてジークフリートは金色の髪を撫でる。
「本当に?」
「こんなに可愛い妻を捨てる訳ないだろう」
「私、可愛い?」
「可愛い」
「本当に可愛い?」
「本当に本当に可愛い」
端から見れば馬鹿みたいな会話を繰り返して、ジークフリートは何となく幸せだった。
痴話喧嘩というのを父と母が大昔に繰り広げていたのを思い出した。
ロゼッタの胸は大きいが、細い体を抱きしめて、しみじみとした気分に浸った。
「ああ、結婚したんだな……」
たった二年前は存在すら知らなかった娘と結婚して子供が生まれた。
この娘とこの娘が生んでくれた子だけは、命を賭けて守ってやりたいと思う。
「私のこと、愛してる?」
ロゼッタはなおも聞いてくる。
「もちろん愛してる」
「本当に?」
「本当だ」
膝に半分乗っかっていたロゼッタをベッドに組み敷いて、キスした。
唇は合わせたまま、彼女を愛撫する。
ネグリジェの上から胸を揉み、尻を撫で回す。
長いキスの後で唇を離すと、ロゼッタは熱いため息を漏らした。
青い瞳が潤んで、頬は真っ赤だ。
「信じられないなら、証明して見せようか」
ロゼッタは頬を更に赤らめて、コクンと頷いた。
***
「ああぁん!」
酒のせいなのかロゼッタはかなり感じやすくなっていた。
いくらも愛撫しないうちに声を上げ始めた。
万事控えめなロゼッタはセックスの時も恥ずかしげに声を上げる。
「あん…あっんっ…んっ…あっ…そこっ!いいのいいのぉっ」
我慢して我慢してつい漏らしてしまうかすかな淫声も耳に心地よいが、存分鳴くロゼッタの嬌声は堪らなく魅力的だった。
「もう入れて、早くぅ」
とかなり積極的にねだられて、挿入してもめちゃくちゃに乱れた。
膣も大歓迎だった。
「やっ、イっちゃう…あっ、好きっ好きっ、ジークフリートさまぁ、好きっ」
「おっきいの。スゴい…あっ、きちゃう…だめぇっ…そこ…きもちいい……死んじゃう…」
ここまで来ると心配になってくる。
「本当に大丈夫か?頭痛がしたり、吐き気はないか?」
「やぁん、止めちゃ嫌っ」
「いや、大丈夫ならいいが……」
大丈夫そうなので続行したジークフリートは心ゆくまで楽しんだ。
***
ロゼッタが目を覚ましたのは、翌日の朝だった。
「う……」
小さく声を上げると喉が痛い。
そして何故か体中が痛い。
さらに裸だった。
身じろぎすると背中側から抱きしめられていた。ジークフリートだ。
ジークフリートはロゼッタより早く起きる。
こうして朝まで側に居るのは休日だけだが、今日は違うはず。
そもそも昨日の夕食の後から記憶がない。
いや、断片的に思い出してくる記憶にロゼッタは赤面を通り越して青ざめた。
そっと抱きしめられて、
「起きたのか?」
「ジー…」
夫の名を呼ぼうとしたが、出てくるのはかすれたしゃがれ声だ。
「無理に話すな」
唇に手を当てて止められる。
向かい合わせに抱き直されて、緑色の瞳に覗き込まれた。
「頭は痛くないか?気分は悪くないか?ああ、頷くだけでいい」
そう言われてロゼッタは首を縦にする。
「大丈夫か?」
もう一度頷く。
「昨日は少し酔ったみたいだな。飲ませてすまなかった」
「…………」
(ジークフリート様のせいではありません、お気になさらないで)
謝られてしまったロゼッタは大きく首を横に振る。
「いや、謝るのはそれだけじゃなくて……」
とジークフリートが赤面する。
「無理をさせてすまなかった」
「……」
(いえ、それもお気になさらないで)
記憶を思い出せば、誘ったのはロゼッタだ。
「き、気持ち良かった」
「……」
(そんな、恥ずかしいです)
「今日は無理をしないでゆっくり休んで欲しい。多分疲れたのもあるだろう。君が頑張るからつい甘えてしまっているところもあると思う。愛しているよ」
愛しているよ。
その言葉の後、ちゅっと額に口付けられて、ロゼッタはじわじわとせり上がるような喜びを感じた。
ジークフリートからいたわられて、認められている。
そして欲しかった愛の言葉を囁かれてロゼッタは思わず涙ぐんだ。
ジークフリートはそれを見て眉をひそめる。
「ロゼッタ?大丈夫か」
ロゼッタはジークフリートの手を取ってその手のひらにゆっくりと一文字ずつ書いた。
その文字をジークフリートが読み上げる。
「わ、た、し、も、あ、い、し、て、い、ま、す」
ジークフリートがロゼッタを抱きしめる。
「……ああ、ロゼッタ」
ロゼッタもジークフリートの背に腕を回して彼を抱きしめた。
北の冬は長い。だがじきにグリューニングに麗しの春がやってくる。
そんなある日のことだった。
**********
後書きです。
おっぱいな上に二年目は産後プレイと極めてニッチな作品になりました。
母乳プレイから断乳まで……。文字にすると本当にどうかな?って感じ。
そんな話に最後までお付き合い、どうもありがとうございます。お気に入りも感想も本当にどうもありがとうございました。
後一話番外編があって終了です。
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