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二年目

03.豊潤の秋3

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 結局一週間もすれば自然にロゼッタはジークフリートを受け入れられるようになった。
 ジークフリートの今の好みはロゼッタを座った姿勢で後ろから愛撫することだった。
 子を産んで一ヶ月、ロゼッタの胸はかなり大きい。
 後ろから揉むと乳房の重みがズシリと手に乗る。
 これほど良いものはない。
 めちゃくちゃに揉みしだきたい気分になるが、産後の胸は少しの刺激で痛いらしい。
 手のひらで乳肉の感触を楽しみながら、乳首をつまむ。

 ロゼッタの体がピクンと跳ね、
「あん……」
 と嬌声が上がる。
 淑やかなロゼッタがこんな声を出すのも久しぶりで、ジークフリートは驚喜した。
 なおも乳首をいじりながら、ついからかってしまう。
「いいのか?ロゼッタ」

「は、はい……」
 再開早々はぎこちなく距離を取ってきたロゼッタだったが、今は頬を赤らめておずおず頷くのが可愛らしい。
 産後の体はかつての処女なみに感じにくくなっていた。

 子育ての期間、大抵の動物が子供を守るため神経質になり、性欲はほとんどなくなる。
 これと同じ理屈で、子を守る母親の本能として、女であるより、子の母であるのを選択するらしい。
 だが辛抱強く触れて馴らしていくと、ロゼッタはおそるおそる警戒を緩め、ジークフリートの愛撫に応えるようになった。
 今も膣口に触れるとそこは少し熱を持ちぬかるんでいる。

「いやぁ」
 ロゼッタは恥ずかしがって体をくねらす。
 身じろぎすると胸がすごい。
 白くて丸い双丘がプルンと悩ましく揺れる。
 ゾクゾクするようないい光景だった。
「濡れてるな」
 囁かれる淫語に、ロゼッタは頬を紅潮させる。
「お、おっしゃらないで……」
 嘆願されるが、ますます嬲りたくなる。

「んっ……」
「指もこんなに上手に咥え込めるようになった」
 膣口に指を差し込んで、わざと見せつけるように掻き回す。
「ああ、駄目……」

 ロゼッタを恥じらわせた後、ジークフリートは非常に気分良く挿入した。
 本当は四つん這いで後ろから揺れる胸元が見たいが、大きいだけに乳房が揺すられる体位は苦痛らしい。
 今日は正常位を取った。
 膣は子を産んでゆるむどころか、少し狭く感じる。
 ご無沙汰だったからだ。
 そして産後の三ヶ月程度は濡れにくいらしい。

「あっ…あっ……あんっ」
 それでも数日かけて良くなってきたのか、ゆっくり動くとロゼッタが声を上げて喘ぐ。
「ああ、いいぞ、ロゼッタ」
 次第に膣から愛液が溢れて中が蠢く。
「ジークフリートさま……」
 夢見るような、それでいて淫らな表情はジークフリートをたまらなく高ぶらせた。
「愛しているよ、ロゼ」





 ***

 ランドルフを生んで二ヶ月。
 秋は駆け足で通り過ぎて行く。
 冬の支度に城は大わらわだった。
 グリューニング領の冬は厳しい。冬を越すのに必要な食料や燃料を秋の間に不備なく用意せねばならない。
 領内中の人々が報告だの陳情だのに押し寄せるのだ。
「すまないな、ロゼに負担をかけて」
 ジークフリートからそう労われるが、去年の方が大変だったとロゼッタは思う。

 三週間かけて王都に行き、三週間滞在後、三週間かけてまたグリューニング領に戻ってきた。
 結婚して初めての社交シーズンで王に結婚の報告をせねばならなかったのだ。

 今年は、ロゼッタの出産を理由に夫婦は王都へは行かなかった。
 城でゆったりとはいかないが、無理ない範囲で過ごしている今の生活にロゼッタは満ち足りていた。
 夜間は乳母に任せて寝ているし、おしめもほとんど変えたことがない。
 ジークフリートや城の者達は自分を「献身的な母親」というが、一人で育児をしているわけではない。
 そう言うと、ジークフリートは首を横に振る。
「いや、君には他にギュンター夫人としての仕事がある。良くやってくれていると思う」
 ジークフリートの役に立てているのならこの上なく嬉しい。

 まだ妻になって間もないロゼッタは城の金銭周りや人事は任されていないが、城を『調える』のはもうロゼッタの仕事だ。
 花を飾ることや季節に合わせて庭を作り、模様替えをするのもロゼッタの役目だ。
 城を訪れる客人達のもてなし、昼や夜の食事のメニュー、宴もあればそれ用の余興や食事も考えねばならない。
 産後二ヶ月もして体調も戻ってきた。
 ランドルフの機嫌の良い時は共に客に挨拶もする。
 跡取り息子も誕生し、グリューニング城は華やいだ空気に包まれていた。



 その日は、グリューニング城の秋の恒例行事である収穫を祝う宴を開かれた。
 豚やキノコ、魚、秋の幸がたっぷりと振る舞われた晩餐会の後は、大広間で舞踏会となる。
 王都のような格式張ったダンスではなく、主に若い者達が手を取り踊り始める。
 他の者達はそれを眺めながら会話を楽しんだり、チェスやビリヤードのゲームを遊ぶ。

 男達はロゼッタの体を舐めるように見つめる。
 元から美貌は知られていたが、最近は人妻の色気も出て目を見張る程美しい。
 産後二ヶ月して母乳でランドルフを育てているロゼッタの体重はほとんど元に戻った。
 まだ少し肉付きはいいが、大抵の男は棒きれより出るところ出ている女の方が好きなのだ。
 胸はまだ大きいままだ。
 産後間もないこともあり、肌を隠したドレスだが、滑らかなサテンのドレスは品性を損なうことなく、ロゼッタの優美なラインを露わにした。
 ギュンターの当主の妻に手を出す者はいないが、ジークフリートは気が気でない。


 ロゼッタもまた気が気でない。
 ジークフリートはかなりモテる。
 本人は銀髪で緑の瞳が印象的な美貌の持ち主で、領土のグリューニングは大層栄えている。
 婚前は妻志望の娘達が、結婚後は愛人志望が押しかけている。
 当初ジークフリートが妻に迎えたロゼッタを歓迎していなかったことは広く知られている。
 ギュンター家に近い者達は、結局三日と経たずにジークフリートがロゼッタに陥落した様を目の当たりにしているが、そうでない者も少なくない。
 特にジークフリートに親しくない者達は夫婦が不仲であるという噂を信じていた。

 政略結婚で迎えた妻に男児を生ませたなら、次に愛妾を見繕うはず……と熱い眼差しがジークフリートに寄せられた。

 男爵を名乗る男が、着飾った若い娘を下心満載で紹介する姿を見ていると、ロゼッタは少し悲しくなる。
 相手をするジークフリートが素っ気ないので「少し」ですんでいるが。

 隣国との争いが絶えず、穀物の生産に限りがあったため貧しかったグリューニングだが、今では非常に栄えた地域となっていた。
 隣国との対立は収まり、巨大な交易圏を作り上げ、グリューニングは隣国とこの国を繋ぐ一大商業地帯と化していた。
 国境が落ち着いた近年では周辺で借金で首が回らなくなった貴族の返済を肩代わりするかわりに爵位と領土を貰い受けることもあった。

 借金で首が回らなくなった貴族というのは、どこもかつて貧しかったグリューニング領に高値で穀物を売りつけていた貴族達だ。
 せっせと農地開拓食糧増産に励み、彼らから買い付けなくて良くなった途端、あっという間に没落した。

 ジークフリートがそういう貴族達を厚遇するはずはなく、一応当代には貴族の面目を与えるかわりに、次代は取り上げると約束が交わされている爵位だ。

「ロゼッタ様」
 そうした貴族の妻子が、ねちっとした口調でロゼッタにすり寄ってくる。
 お目当てはもちろんジークフリートなのだが、ジークフリートは近くで従兄弟や叔父、友人達に囲まれ話に興じている。
 ジークフリートの目にとまるには、側に居るロゼッタに話しかけて場を持たせるしかない。

「侯爵家のお嬢様なら王都でお暮らしの方が気候が合うのではありません?」
「そうですわ。ご後継様もお生みになったのですし、もう奥方様は大手を振って王都に戻れますわ」
「奥方様は王都ではあの王太子様とお噂があったとか」
「まあ、素敵。さすがに侯爵家のご令嬢は違いますわねぇ」
「他にも王都でお会いしたい方もいらっしゃるでしょう。一度むこうにお戻りになっては?」


『何だかこういうの久しぶりね』
 妊娠中にジークフリートがロゼッタに引き合わせた夫人達は、皆彼女に好意的な女性達だった。今は良き友人だ。
 悪意から遠ざかって久しいロゼッタだが、この程度のイヤミはどうということもない。王都の社交界は元よりそうした場所だった。
 だが身持ちが悪い女という噂は、訂正しないといけない。

 ロゼッタが口を開こうとした時だった。
「ロゼッタは王都には帰さないぞ」
 ひょいと首を突っ込んできたジークフリートが言った。
「えっ」
 彼は男同士熱心に話し込んでいたので、女達の会話を聞いている素振りもなかった。
 ロゼッタも女達も驚いて声を上げた。

「きゃっ」
 ロゼッタはジークフリートに強く肩を抱き寄せられ、ジークフリートに抱きつくような恰好になった。
 思わず小さな悲鳴が出る。

「あいにくだが、王都に行くのは早くて来年だ。ロゼッタのお父上にもそれで話を付けた」
 ジークフリートは『行く』をわざわざ強調してみせた。
「どういう意味だ、ジークフリート」
 ジークフリートと話をしていた叔父も驚いたらしく聞いてくる。
「どういう意味も里帰りはさせないし、忙しいのでご機嫌伺いにも行かないと言うと侯爵の方から孫に会いたいと申し出があったのですよ。社交のシーズンが終わった冬に来るつもりらしい」

「宰相閣下を呼びつけたのか」
 従兄弟の一人が呆れた様子で言った。
「呼びつけたわけじゃない。向こうが来ると言うから了承したまでだ。もちろん歓迎はする。ランドルフの祖父母だ」
 ジークフリートは涼しい声で言い返す。

「心の狭い婿だな」
「ロゼッタは美しい上に気立てまでいいんだぞ。逃すつもりはない」
 そう言うとジークフリートはロゼッタをしっかり抱きしめ直した挙げ句、こめかみに口付けした。

 秋の収穫祭は無礼講と決まっている。
 城も例外ではなく、宴もたけなわとなった今は見つめ合ったり手を取り合ったりする若い男女の姿は散見した。
 ジークフリートがロゼッタを抱きしめるのを見て、見物人がどっと沸いた。

「おいおいのろけるな、ロゼッタ様はお困りだぞ」
 従兄弟がたしなめる。
 ロゼッタの頬は真っ赤だ。

「いやいや確かにロゼッタは逃しちゃいかんぞ。結婚しないとさんざん駄々をこねていたギュンターの総領が片づいたばかりでなく、跡取り息子もお生み下さった。ロゼッタ様々だ」
 ジークフリートの叔父がそう言って杯を上げる。

「奥方様に乾杯」
「乾杯」
 ジークフリートも給仕から受け取った杯を上げる。
「グリューニングに」
「乾杯」
 祝杯をぶつけ合うと共に大広間に笑い声が響き渡った。
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