氷の狼と令嬢の政略結婚な1年

林優子

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一年目

13.歓びの冬、そしてエピローグ

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 グリューニングは既に雪が降り積もっていた。
 ロゼッタは一面の銀世界に見とれる。馬車は数日かけて雪化粧されたグリューニングを駆け抜ける。
 領主夫妻の帰還を喜び、沿道には大勢の人々が詰めかけた。
 ロゼッタが人々に手を振ると歓声が湧き上がる。
 何故だかとてもホッとする。
 当初こそよそよそしかったグリューニングの人々だが、ジークフリートがロゼッタを大切に扱う様を目の当たりにして自然とロゼッタを認めてくれた。
「故郷に戻った気がします」
 ロゼッタがそう言うと、ジークフリートは嬉しそうに笑った。
「そうか」

 領地に戻ったロゼッタは疲れからか戻って早々に寝付いた。
 すぐに侍医が呼ばれて診察を受けると、ロゼッタは身ごもっていた。
 城は歓びに包まれた。

 ジークフリートも喜んだ。
 ロゼッタにとって初めて迎える北国の冬に加えて身重の体だ。ジークフリートは慎重になったが、ロゼッタはつわりはあったが、思いのほか元気だった。
 それにグリューニングは確かに寒いが、城は温かく長い冬でも居心地が良いように作られている。
 ロゼッタは肌触りの良い毛織物をたっぷり着込んで散歩をしたり、赤ん坊の肌着を揃えたり、暖炉の側で膝掛けを編んだり、刺繍を刺した。
 雪に閉ざされた城は比較的仕事が少ない時期だ。
 そのためロゼッタはジークフリートとの時間をゆったりと過ごせた。

 寒さが緩むとジークフリートは忙しくなり城を留守にすることも増えたが、その代わりとばかりに親戚や、土豪と呼ばれるグリューニングの貴族階級の者々、近隣の町や村を任された代官達など多くの人がお祝いにやってきた。
 若い夫人達とも引き合わされた。
 結婚したばかりの女性やロゼッタと同じく身重であったりもう子を産んだ母親達など、同じ歳頃で境遇も同じ夫人達とロゼッタはすぐに打ち解けた。
 何よりジークフリートがいた。故郷から遠く離れたグリューニングでの出産だが、少しの不安もなかった。

 夏にロゼッタは元気な男の子を産んだ。
 銀髪に緑の瞳とジークフリートに良く似た子はギュンターの跡取り息子となった。

 二人にとって初めての子はジークフリートに密かな歓びを与えた。
 赤子は乳母が育てることになったが、赤子は乳母の乳よりロゼッタの母乳の方を良く飲んだ。
 ロゼッタの乳の出は良かったので、半年ほどはロゼッタが乳を与えて育てた。
 この間ジークフリートは子を産んで更に大きくなった妻の胸を味わえたのだ。

 北の辺境伯と令嬢の日々は互いに愛し愛されることにより、深い喜びに満ち溢れた。グリューニングの地はますます栄えたという。









 *****後書き*****

 なんかこう、最初は普通に「政略結婚したけど誤解があってのちにラブラブみたいな話」だったんですが、じれじれ部分を考えていて自分でイライラしました。
「さっさと押し倒せ!」と思いました。
 その後におっぱいから始まる愛として現在の形になりましたが、いざ書くとおっぱい教徒文体が難しく、あーでもないこーでもないと結構悩んだ話です。
 そのかい?あって、どうしょもねー話の割に意外と良い感じで終わった気がします。
 最後までお付き合いありがとうございます。
 そろそろ寒くなりましたね。皆様、どうぞ体調にはお気を付けて。
 2020.11
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