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一年目

11.饗宴の秋5

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 夜会用に美しく飾り立てられた女性は後の始末も一苦労だった。
 ギュンター家の上屋敷に戻ったロゼッタは侍女達数人がかりでドレスを脱がされ、風呂に入り化粧と結い上げた髪を洗う。
 男の場合はそれに比べるとかなり楽だ。
 風呂から上がり、部屋着に着替えると、ジークフリートの従兄が書斎で待ち構えていた。

「ジークフリート、王太子殿下がやらかしたらしいじゃないか。どう始末を付ける気だ?あの男、ロゼッタ様を愛人に欲しかったそうだな」
 従兄はギュンター家の従爵位を持っている。あの時、離れてはいたが大広間にいた。
「何を言われても私は今から領地に引っ込むから構わんが……」
「おいおい残された俺の身になれ」
「特段何事もなかろう。放っておけ」
 とジークフリートは言い切った。
 ジークフリートは人の機微にさとい方ではないが、不思議とこうした時、状況判断を見誤ることはない。

「何故?」
「王太子の馬鹿発言はいつものことなんじゃないのか。相当浮名を流していると聞いている」
「ああ」
 と従兄も認めた。
 帝王学を学び、そこまで愚かな男ではないが、見目も良く若い彼はちやほやされ過ぎている。さらに王太子は婚約者も作らず多くの令嬢が自分を巡って争うように仕向けたり、ジークフリート達にしたように騒ぎを起こして人々の関心を得るようなことをする。

「私もロゼッタも領地に戻る。なに、今日のことは遠からず忘れられるはずだ。リーネルト侯爵が火消しに動く」
「リーネルト侯爵というと、ロゼッタ様の父上か」
「ああ、ロゼッタが王太子の妾になっても所詮は妾。彼には利はない。ギュンター家の嫁でいる方が役に立つと踏むはずだ」
「なるほど」
「まあ私が良いサファイアを探していると商人らには伝えてくれ。妻の機嫌を取りたいようだとな」
 サファイアはロゼッタの瞳の色だ。

 従兄はジークフリートの顔色をうかがう。
「結婚は継続するのか?」
「当たり前だ。王都でお披露目までした。反対か?」
「いや、良い令夫人だ。確かにギュンターの奥方は彼女しかいない。賛成だが、女に関しては面倒事は大嫌いだったのに、趣旨替えしたんだな」
 従兄はしみじみ言った。

 その後二、三話をしていると侍従が呼びに来た。
「奥様がお部屋でお待ちです」
「ああ」
 ジークフリートはのろのろと立ち上がる。気が重いが、話さねばならないことがあった。





 ***

 ジークフリートが寝室に来た時、ひどく暗い表情だった。
 ベッドには上がらず、ジークフリートはベッドサイドの椅子に腰掛けるよう、ロゼッタを促した。ジークフリートも対面の椅子に座ったが、黙り込んでいる。
『やっぱりお怒りなのかしら』
 ロゼッタは椅子の上で、思わず身を固くする。
 だがジークフリートはロゼッタを緑の瞳で見つめると、優しく言った。
「愛している、ロゼッタ」
「ジークフリート様……」
 ロゼッタは手を伸ばしたが、ジークフリートはその手を握り返そうとはしない。

「愛してしまった。すまなかった」
 深い悔恨が込められた言葉にロゼッタは震えた。
「そんな……」
「君が私との結婚を嫌がっていたのは知っている」
「……!」
 ロゼッタは息を飲み込んだ。

「三年経って、綺麗な体のまま王都に戻してやるつもりだった。縁談も王太子は無理だが公爵家の息子くらいならギュンター家の力で用意出来る。だが、全部私が台無しにしてしまった」
「ジークフリート様……」
「すまなかった。ギュンター夫人はもう君しかいない。君がどんなにグリューニングと私を嫌い王都に戻りたくとも、私はあの地に君を閉じ込めるだろう。ひどい男だ。許してくれとは言わないが、まあ金はある程度ある。二人子供を生んでくれた後は、少しは自由もあげられるから王都で暮らしてくれても構わない」
 夫の子を二人生むというのは、貴族の夫人としての最低限の義務だ。
 それさえやり遂げれば、愛人を持っても良いというのは、王都の貴族なら誰でも知っている暗黙の了解だった。


 永遠ほど長く感じた沈黙の後、ロゼッタは言った。
「……ジークフリート様は私を愛しているの?」
 ジークフリートは躊躇うことなく頷いた。
「愛している」
 ロゼッタは立ち上がり、ジークフリートを見下ろした。
「私も……ジークフリート様を愛しております」
 ロゼッタは両手でジークフリートの頬を挟み、キスした。
「ロゼッタ」
 ロゼッタの瞳から涙が滑り落ちる。溢れて溢れて止まらない。
「愛してます。こんなに好きにさせておいて今更私を捨てたりしないで……!」



 二人はベッドで互いを抱きしめ合う。
 結婚してから夜ごとに繰り返されたいつもの、行為。
 だが、ジークフリートはじれったいほどぎこちなくロゼッタに触れた。
 初夜でもジークフリートはもっと大胆にロゼッタを求め、リードは巧みだった。逞しい腕に力強く抱きしめられ、ロゼッタはコロッと恋に落ちた。
 笑ってしまうほど単純だ。
 でもきっと、人を好きになるのに理由なんていらない。

 ロゼッタはベッドで上に乗っていたジークフリートをグッと体重を掛けて仰向けにするとジークフリートの上に乗った。
「ロゼッタ?」
 ジークフリートは不思議そうに、不安そうにロゼッタを見つめている。

『この男は私のもの』

 ロゼッタはジークフリートに顔を近づけ、キスする。ジークフリートがするように舌を彼の舌に絡め、口内を舐める。
 頬を撫で、首筋を撫でる。手は下に滑らせる。
 鎖骨を撫で、彼はいつもロゼッタの胸を揉むが、ジークフリートの胸囲は揉めそうになかったので撫でる。
 そしてジークフリートがするようにロゼッタはジークフリートの胸の頂きをしゃぶった。
「ロゼッタ」
 ジークフリートは驚いて声を上げる。
「気持ち良い?ジークフリート様」
 ジークフリートの乳首も硬くなっている。

「…………」
 ジークフリートは無言で横を向く。
 頬が赤い。
 ロゼッタはジークフリートの腹や太ももも撫でた。
『引き締まった綺麗な体。まるで彫像のよう』
 ジークフリートの体に触れる度、ジークフリートが少しずつ快感を得ているのが分かる。
 体温が高くなり、規則正しい呼吸が乱れ、心臓の鼓動が早くなる。ロゼッタの腹の奥がきゅっと疼いた。

「……!ロゼッタ!」
 ロゼッタは下着の中に手を入れて、ジークフリートのペニスに触れた。
 少し高ぶり始めたペニスが、ロゼッタは愛しかった。
「もっと大きくなって……。私で感じて……」
 手でしごくように撫でる。
 他の何処より反応はいい。ジークフリートはビクッと動いて、それまでロゼッタの様子を伺うように見つめていた瞳が、肉食の獰猛な獣のそれに変わっていく。
「ロゼッタ……」
「ジークフリート様……」
 ロゼッタはジークフリートの緑の瞳に魅入られる。
 ジークフリートの口元が楽しげに持ち上がり、
「ロゼッタは……」
 と言い掛けて彼は止めてしまう。

 ロゼッタは下着の中で大きくなりすぎてしごきづらくなったペニスをなおも撫でながら、ジークフリートの耳を甘噛みした。
「ジークフリート様、おっしゃって……」

 ジークフリートは「はあ」とため息つくと、言った。
「どこでそういうの覚えたんだ」
 ロゼッタは嬉しくなって抱きついた。
「ジークフリート様です!ジークフリート様が教えたのよ!」

 ジークフリートはロゼッタを抱きしめてキスする。
 力強いキスに身も心も蹂躙される。ロゼッタは夢心地でジークフリートにすがりついた。
 唇を離すとジークフリートは愛しげにロゼッタを見つめる。
「私か、なら仕方ないな。こんな淫蕩な娘では誰も引き取ってはくれまい。私で一生我慢するんだな」
 ロゼッタは目を輝かせて頷いた。
「はい!」








 **********

 ジークフリートのパンツは白のボクサーパンツです。
 中世にボクサーパンツあったの?あったみたいです。
 中世の絵画の中で、男性は謎の腰布、ボクサーパンツ、ブリーフなどはいてます。割とオシャレ。(色は白一色だけど)
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