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16.救護院イベント
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お出かけの準備をしていると、お姉様から声を掛けられました。
「エリリン、今日も救護院行くの?」
「はい、行きます」
救護院は王都にある一番大きな病院です。
今日は無料で怪我や病気の治療が受けられる月に一度の日ですので、いつもよりたくさん人が来る予定です。
お姉様は一緒に出掛ける準備をしていたクルトに言いました。
「クルト、今日、あのぶりっ子イモ女が病院に来ます。くれぐれも注意しなさい」
「えっ、そんな大事なことは前もって教えてくださいよ、ジョゼフィーヌお嬢様」
クルトがびっくりしてます。
私も驚きました。
「だってワタクシも今思い出したんだもの、しょうがないじゃない」
お姉様は開き直ってます。
「お姉様、アンナさんが病院に?」
「そうよ、あのぶりっ子、『私、皆を助けたくてぇ』とか言って救護院に定期的に通ってたわ。そういえばこのくらいの時期からよ。『なんて心優しいんだ、アンナ……』とか男は感動してたわ」
「うーん、でも手伝ってくれるならいいかなと思います」
「まあ、そうですね。でも、あっ、今日はフレドリック殿下も救護院に慰問に来るとかおっしゃってませんでしたか?」
「あっ、そうでしたね」
「波乱の予感ですよ、エリザベートお嬢様」
「ようこそおいで下さいました。エリザベート様、クルト君」
救護院では私達は専用の部屋に案内されます。
たくさん魔力を使うと髪と目の色が変わってしまいます。まだ私が聖女なのは内緒なので、それを隠すためです。
「あっ」
「やっぱり……」
別室に入る直前、私とクルトは見てしまいました。
アンナさんです。
今日はボランティアで回復魔法を使える人も参加出来るんです。本当は国家資格がいるんです。
私とクルトは持ってますよ。
アンナさん達が大きな声で話しているので、つい聞こえてしました。溌剌はいいのですが、病院では少し控えて貰いたいです。
「私、皆を助けたくてぇ」
側に三人男の子がいて、
「なんて心優しいんだ、アンナ……」
って言ってます。
『ジョゼフィーヌお姉様が言ってた通りです』
『あの男子の方はうちのクラスメイトの高位貴族のご子息ですよ』
さて私達は治療にためにここに来てます。邪念は消して、仕事に入りましょう。
重傷や重病の人を中心にクルトと一緒に治していきます。
***
「ふう」
「あ、僕もう駄目です。魔力切れ寸前です」
クルトはフラフラしてます。椅子に座り込んでしまいました。
「お疲れ様です、クルト」
「エリザベートお嬢様は?」
「もうちょっとだけ……」
既に髪の毛はピンク色ですし、ちょっと疲れたなーと思いますが、患者さんはまだまだいますから弱音は吐いていられません。
「リーザ」
と呼ばれて振り返ると、患者さんではなく、フレドリック殿下です。
「フレドリック様」
「慰問が終わったから急いで来たんだ」
フレドリック殿下は怪我した騎士団のお見舞いだそうです。
フレドリック殿下はじっと私を見つめています。
なんでしょう。
やがて、少し怒った声で言いました。
「リーザ、髪……」
「あ、ピンクになっちゃってますよね」
「また、リーザは無理するから」
「すみません」
心配してくれているみたいです。
フレドリック殿下は同行していた人々を数人だけ残して後は下がらせてしまいました。人払いです。
「あのね、上手く行くか分からないんだが、手を出して……」
「はい?」
分からないけど、手を出します。
フレドリック殿下は手と手を絡ませるように繋ぎました。
こっ、これは、恋人繋ぎです!
「いくよ……」
そう言うと、フレドリック殿下は目を閉じました。
「あっ……」
手から何か温かいものが、入って来ます。魔力です。
全身にじんわりと元気がみなぎる感じです。魔力を蘇ってきました。
「はぁ、上手くいった」
満足そうに息をつくフレドリック殿下の髪の毛が黒く染まっています。瞳も夜の空のように黒くなってます。
「フレドリック様、今のは?」
「闇魔法と光魔法は表裏一体。私の闇魔法の生命吸収とリーザの光属性の生命寄与は本質的には同じ能力なのだそうだ」
「はい」
ちょっと難しいですね。
「私もリーザにしてあげられることがないかと思って、訓練していたんだ」
これは逆位置《リバース》という難しい魔法技術らしいです。
聖女に覚醒した私は普通の人よりはるかに高い魔力を持っていますが、同じく黒騎士に覚醒したフレドリック殿下は私の倍以上の魔力があるそうです。
その魔力を分けてくれたのです。
「えっ……ありがとうございます!」
「うん、上手くいって良かったよ。あと闇魔法は麻酔や意識レベルを下げるのは得意なんだ。役に立つかな?」
「あ、それも助かります」
「クルトにも生命寄与しようか?」
というフレドリック殿下の申し出に、
「いえ、殿下と恋人繋ぎはちょっと……遠慮します」
とクルトは引き気味に辞退しました。
「私だって本当はリーザ以外は嫌だぞ」
「僕はさっき魔力ポーションを飲みましたから回復次第、頑張ります」
魔力ポーションはじわじわ魔力を回復するポーションで、効くのにはちょっと時間が掛かるんです。
フレドリック殿下も手伝ってくれて、今日はサクサク終わりました。
「よろしけれは公爵邸にお立ち寄り頂けませんか?クルトが作ったチェリーパイがあります」
「クルトが作ったパイか……」
あまり気乗りしなそうなご様子のフレドリック殿下にクルトが言います。
「そんなこと言っていいんですか?チェリーのコンポートはエリザベートお嬢様のお手製ですよ」
「それを先に言ってくれ。もちろんうかがうよ、リーザ」
どうやらフレドリック殿下もいらして頂けるようです。お茶の時間が楽しみです。
別室から出て馬車に乗ろうとすると、見覚えのあるピンクの髪の子がいます。ちょうどアンナさんも帰るようです。
「ああっ、フレドリック様、いらっしゃったんですかぁ?」
アンナさんは駆け寄ってきて。
「あっ、光魔法を使いすぎちゃって、私……」
フラリと倒れそうになりました。
「大丈夫ですかな、お嬢さん」
熊のデュモンド卿がさっとアンナさんを抱きとめてくれました。
紳士です。
「アンナ嬢、今めっちゃいいスピードで走ってきましたね」
「うっ、うん、そうでしたね」
「エリリン、今日も救護院行くの?」
「はい、行きます」
救護院は王都にある一番大きな病院です。
今日は無料で怪我や病気の治療が受けられる月に一度の日ですので、いつもよりたくさん人が来る予定です。
お姉様は一緒に出掛ける準備をしていたクルトに言いました。
「クルト、今日、あのぶりっ子イモ女が病院に来ます。くれぐれも注意しなさい」
「えっ、そんな大事なことは前もって教えてくださいよ、ジョゼフィーヌお嬢様」
クルトがびっくりしてます。
私も驚きました。
「だってワタクシも今思い出したんだもの、しょうがないじゃない」
お姉様は開き直ってます。
「お姉様、アンナさんが病院に?」
「そうよ、あのぶりっ子、『私、皆を助けたくてぇ』とか言って救護院に定期的に通ってたわ。そういえばこのくらいの時期からよ。『なんて心優しいんだ、アンナ……』とか男は感動してたわ」
「うーん、でも手伝ってくれるならいいかなと思います」
「まあ、そうですね。でも、あっ、今日はフレドリック殿下も救護院に慰問に来るとかおっしゃってませんでしたか?」
「あっ、そうでしたね」
「波乱の予感ですよ、エリザベートお嬢様」
「ようこそおいで下さいました。エリザベート様、クルト君」
救護院では私達は専用の部屋に案内されます。
たくさん魔力を使うと髪と目の色が変わってしまいます。まだ私が聖女なのは内緒なので、それを隠すためです。
「あっ」
「やっぱり……」
別室に入る直前、私とクルトは見てしまいました。
アンナさんです。
今日はボランティアで回復魔法を使える人も参加出来るんです。本当は国家資格がいるんです。
私とクルトは持ってますよ。
アンナさん達が大きな声で話しているので、つい聞こえてしました。溌剌はいいのですが、病院では少し控えて貰いたいです。
「私、皆を助けたくてぇ」
側に三人男の子がいて、
「なんて心優しいんだ、アンナ……」
って言ってます。
『ジョゼフィーヌお姉様が言ってた通りです』
『あの男子の方はうちのクラスメイトの高位貴族のご子息ですよ』
さて私達は治療にためにここに来てます。邪念は消して、仕事に入りましょう。
重傷や重病の人を中心にクルトと一緒に治していきます。
***
「ふう」
「あ、僕もう駄目です。魔力切れ寸前です」
クルトはフラフラしてます。椅子に座り込んでしまいました。
「お疲れ様です、クルト」
「エリザベートお嬢様は?」
「もうちょっとだけ……」
既に髪の毛はピンク色ですし、ちょっと疲れたなーと思いますが、患者さんはまだまだいますから弱音は吐いていられません。
「リーザ」
と呼ばれて振り返ると、患者さんではなく、フレドリック殿下です。
「フレドリック様」
「慰問が終わったから急いで来たんだ」
フレドリック殿下は怪我した騎士団のお見舞いだそうです。
フレドリック殿下はじっと私を見つめています。
なんでしょう。
やがて、少し怒った声で言いました。
「リーザ、髪……」
「あ、ピンクになっちゃってますよね」
「また、リーザは無理するから」
「すみません」
心配してくれているみたいです。
フレドリック殿下は同行していた人々を数人だけ残して後は下がらせてしまいました。人払いです。
「あのね、上手く行くか分からないんだが、手を出して……」
「はい?」
分からないけど、手を出します。
フレドリック殿下は手と手を絡ませるように繋ぎました。
こっ、これは、恋人繋ぎです!
「いくよ……」
そう言うと、フレドリック殿下は目を閉じました。
「あっ……」
手から何か温かいものが、入って来ます。魔力です。
全身にじんわりと元気がみなぎる感じです。魔力を蘇ってきました。
「はぁ、上手くいった」
満足そうに息をつくフレドリック殿下の髪の毛が黒く染まっています。瞳も夜の空のように黒くなってます。
「フレドリック様、今のは?」
「闇魔法と光魔法は表裏一体。私の闇魔法の生命吸収とリーザの光属性の生命寄与は本質的には同じ能力なのだそうだ」
「はい」
ちょっと難しいですね。
「私もリーザにしてあげられることがないかと思って、訓練していたんだ」
これは逆位置《リバース》という難しい魔法技術らしいです。
聖女に覚醒した私は普通の人よりはるかに高い魔力を持っていますが、同じく黒騎士に覚醒したフレドリック殿下は私の倍以上の魔力があるそうです。
その魔力を分けてくれたのです。
「えっ……ありがとうございます!」
「うん、上手くいって良かったよ。あと闇魔法は麻酔や意識レベルを下げるのは得意なんだ。役に立つかな?」
「あ、それも助かります」
「クルトにも生命寄与しようか?」
というフレドリック殿下の申し出に、
「いえ、殿下と恋人繋ぎはちょっと……遠慮します」
とクルトは引き気味に辞退しました。
「私だって本当はリーザ以外は嫌だぞ」
「僕はさっき魔力ポーションを飲みましたから回復次第、頑張ります」
魔力ポーションはじわじわ魔力を回復するポーションで、効くのにはちょっと時間が掛かるんです。
フレドリック殿下も手伝ってくれて、今日はサクサク終わりました。
「よろしけれは公爵邸にお立ち寄り頂けませんか?クルトが作ったチェリーパイがあります」
「クルトが作ったパイか……」
あまり気乗りしなそうなご様子のフレドリック殿下にクルトが言います。
「そんなこと言っていいんですか?チェリーのコンポートはエリザベートお嬢様のお手製ですよ」
「それを先に言ってくれ。もちろんうかがうよ、リーザ」
どうやらフレドリック殿下もいらして頂けるようです。お茶の時間が楽しみです。
別室から出て馬車に乗ろうとすると、見覚えのあるピンクの髪の子がいます。ちょうどアンナさんも帰るようです。
「ああっ、フレドリック様、いらっしゃったんですかぁ?」
アンナさんは駆け寄ってきて。
「あっ、光魔法を使いすぎちゃって、私……」
フラリと倒れそうになりました。
「大丈夫ですかな、お嬢さん」
熊のデュモンド卿がさっとアンナさんを抱きとめてくれました。
紳士です。
「アンナ嬢、今めっちゃいいスピードで走ってきましたね」
「うっ、うん、そうでしたね」
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