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13.ヒロイン対策委員会
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「あー、ぶりっ子ねー。何もねぇところで転ぶのはあいつの手なのよ」
とお姉様はお土産のエッグタルトをもしゅもしゅと食べながら、言いました。
お夕食前の姉妹団らんの一時です。
「手ですか?」
とクルトもエッグタルトを食べながら聞きます。
急いで帰ってきたのでまだ温かいです。
「そうよ」
お姉様は椅子から立ち上がると、暖炉の前のちょっと広いスペースに移動します。そして、急に、
「きゃあ」
と女の子ぽく転びます。
スッと立ち上がり、手を差し出します。キリッとした声で、
「大丈夫ですか、お嬢さん」
すかさず今度はしゃがんで、うるうるした瞳で斜め上を見上げ、手を取るフリをします。
「はい、ありがとうございます。えいっ、光魔法」
さっと立ち上がり、ハッとした表情で、
「君、光属性魔法を使えるの?」
またしゃがんで、ポッと頬を赤らめて、
「すっ、少しだけですけど」
「……てなもんよ」といつものジョゼフィーヌお姉様に戻り椅子に座ります。
「ほえぇ」
「でもそれで男はコロッと行くのよ、コロッと」
フレドリック殿下もコロッとするのでしょうか。
「エリザベートお嬢様、大丈夫です。フレドリック殿下は引っかかりませんでした」
ちょっと泣きそうでしたが、クルトが励ましてくれます。
「はい、そうでした」
殿下はアンナさんとそんなお話はしてません。
「そーねー、殿下も変わったわねぇ。うちにワイロ寄越すくらいだから、エリリン一筋よねぇ」
「ワイロ、美味しいです」
エッグタルトはワイロだったようです。
「買収されちゃ駄目よ、クルト、あんたはちゃんとエリリンと殿下を見張りなさい。中等部卒業まではキスは一日一回一秒までよ」
「はい、もちろんです。お嬢様」
クルトは私のお目付役なのです。
「そういえば、男爵家にぶりっ子が引き取られるのはもうすぐね」
「そのようです。アンナ嬢が引き取られる男爵家はモルゲンというのですが、男爵は奥方と離縁したようです。アンナ嬢のお母上と男爵は最近頻繁に会っております。じきに正式な発表があるかと」
クルトは、いいえお父様はアンナさんのことを監視させているようです。クルトはスラスラと答えました。
「えっ、モルゲン男爵は離婚したのですか?」
お姉様はエッグタルトを食べ終わり、優雅な手つきで紅茶をお飲みです。
「…………」
「はい、奥方はお体が弱く、二人の間に子もありませんので、問題なく離婚が成立しました。ジョゼフィーヌお姉様の予言では奥方は死亡なさいましたが、大筋では変わりありません」
「では、アンナさんは、王立学園の高等部に入学するのですね……」
分かっていたことですが、私はブルッと体が震えてしまいます。一方、ジョゼフィーヌお姉様は落ち着き払っています。
「そうね」
「あのう、それなんですが、ジョゼフィーヌお嬢様」
「何よ」
「あの、クラウン公爵家の権力を持ってすれば、一男爵家の令嬢の入学を阻止するのは簡単です。公爵様に頼んでアンナ嬢を入学させなければいいんじゃないですか?」
ジョゼフィーヌお姉様はチロリと横目を使ってクルトを眺めます。
「あんた、意外と悪いこと思いつくわね」
「はあ……すみません」
そもそも災いの種を毟る戦法です。
「駄目よ。ぶりっ子イモ女はぶりっ子でイモ女だけど、まだ何もしてないの。王立学園に入ると入らないとでは将来が大きく変わってくるわ。やってもいない罪で人の人生を歪めてはいけません」
お姉様はキッパリと言いました。
「さすがジョゼフィーヌお姉様です」
「うーん、確かにそうですね。差し出がましいことを申し上げました」
「クルトの気持ちは良く分かるわ。ワタクシとエリリンのためにありがとう」
「は、いえ……」
「この世界はワタクシが経験した前世とは違ってきているわ。エリリンが聖女になって魔王はすでに封印され、フレドリック殿下はエリリンとラフラブです」
ら、ラフラブ。
照れちゃいます。
「それはそうですね」
クルトはうんうんと頷いてます。
「これでクラウン公爵家も多分安泰です。ですが、エリリン、クルト、良く聞きなさい」
「はい、お姉様」
「はい、お嬢様」
「アンナは恐ろしい子です。けっして油断してはいけませんよ……!」
ジョゼフィーヌお姉様がこうまでいうアンナさん、どんな人なのでしょう。
時は流れ、私は中等部二年生に進学、そしてお姉様とフレドリック殿下、クルトは中等部を卒業し、王立学園高等部に入学します。
とお姉様はお土産のエッグタルトをもしゅもしゅと食べながら、言いました。
お夕食前の姉妹団らんの一時です。
「手ですか?」
とクルトもエッグタルトを食べながら聞きます。
急いで帰ってきたのでまだ温かいです。
「そうよ」
お姉様は椅子から立ち上がると、暖炉の前のちょっと広いスペースに移動します。そして、急に、
「きゃあ」
と女の子ぽく転びます。
スッと立ち上がり、手を差し出します。キリッとした声で、
「大丈夫ですか、お嬢さん」
すかさず今度はしゃがんで、うるうるした瞳で斜め上を見上げ、手を取るフリをします。
「はい、ありがとうございます。えいっ、光魔法」
さっと立ち上がり、ハッとした表情で、
「君、光属性魔法を使えるの?」
またしゃがんで、ポッと頬を赤らめて、
「すっ、少しだけですけど」
「……てなもんよ」といつものジョゼフィーヌお姉様に戻り椅子に座ります。
「ほえぇ」
「でもそれで男はコロッと行くのよ、コロッと」
フレドリック殿下もコロッとするのでしょうか。
「エリザベートお嬢様、大丈夫です。フレドリック殿下は引っかかりませんでした」
ちょっと泣きそうでしたが、クルトが励ましてくれます。
「はい、そうでした」
殿下はアンナさんとそんなお話はしてません。
「そーねー、殿下も変わったわねぇ。うちにワイロ寄越すくらいだから、エリリン一筋よねぇ」
「ワイロ、美味しいです」
エッグタルトはワイロだったようです。
「買収されちゃ駄目よ、クルト、あんたはちゃんとエリリンと殿下を見張りなさい。中等部卒業まではキスは一日一回一秒までよ」
「はい、もちろんです。お嬢様」
クルトは私のお目付役なのです。
「そういえば、男爵家にぶりっ子が引き取られるのはもうすぐね」
「そのようです。アンナ嬢が引き取られる男爵家はモルゲンというのですが、男爵は奥方と離縁したようです。アンナ嬢のお母上と男爵は最近頻繁に会っております。じきに正式な発表があるかと」
クルトは、いいえお父様はアンナさんのことを監視させているようです。クルトはスラスラと答えました。
「えっ、モルゲン男爵は離婚したのですか?」
お姉様はエッグタルトを食べ終わり、優雅な手つきで紅茶をお飲みです。
「…………」
「はい、奥方はお体が弱く、二人の間に子もありませんので、問題なく離婚が成立しました。ジョゼフィーヌお姉様の予言では奥方は死亡なさいましたが、大筋では変わりありません」
「では、アンナさんは、王立学園の高等部に入学するのですね……」
分かっていたことですが、私はブルッと体が震えてしまいます。一方、ジョゼフィーヌお姉様は落ち着き払っています。
「そうね」
「あのう、それなんですが、ジョゼフィーヌお嬢様」
「何よ」
「あの、クラウン公爵家の権力を持ってすれば、一男爵家の令嬢の入学を阻止するのは簡単です。公爵様に頼んでアンナ嬢を入学させなければいいんじゃないですか?」
ジョゼフィーヌお姉様はチロリと横目を使ってクルトを眺めます。
「あんた、意外と悪いこと思いつくわね」
「はあ……すみません」
そもそも災いの種を毟る戦法です。
「駄目よ。ぶりっ子イモ女はぶりっ子でイモ女だけど、まだ何もしてないの。王立学園に入ると入らないとでは将来が大きく変わってくるわ。やってもいない罪で人の人生を歪めてはいけません」
お姉様はキッパリと言いました。
「さすがジョゼフィーヌお姉様です」
「うーん、確かにそうですね。差し出がましいことを申し上げました」
「クルトの気持ちは良く分かるわ。ワタクシとエリリンのためにありがとう」
「は、いえ……」
「この世界はワタクシが経験した前世とは違ってきているわ。エリリンが聖女になって魔王はすでに封印され、フレドリック殿下はエリリンとラフラブです」
ら、ラフラブ。
照れちゃいます。
「それはそうですね」
クルトはうんうんと頷いてます。
「これでクラウン公爵家も多分安泰です。ですが、エリリン、クルト、良く聞きなさい」
「はい、お姉様」
「はい、お嬢様」
「アンナは恐ろしい子です。けっして油断してはいけませんよ……!」
ジョゼフィーヌお姉様がこうまでいうアンナさん、どんな人なのでしょう。
時は流れ、私は中等部二年生に進学、そしてお姉様とフレドリック殿下、クルトは中等部を卒業し、王立学園高等部に入学します。
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