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ポイ活

04.チームミッション、発動!

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「えっ、仲間イベント発動? チームミッション?」

「カチュアさん、『仲間イベント』に強く意識を集中してみてくれ。そうすればステータスボードが出てくるはずだ」
 とベルンハルトがカチュアに指示する。
「分かったわ」

 カチュアはベルンハルトの教えに従い、「仲間イベント、なかまいべんと……」と突然出てきた謎の言葉『仲間イベント』を頭に思い浮かべる。
 すると、ステータスボードが出現。

『仲間イベント 大きな使命を達成しようと皆の心が一つになった時、新たな力が生まれる』
 と書かれている。

 聖剣を取り戻す以外のモンスターを鎮めるもう一つの方法、ブラックドラゴン退治はCランクのガンマチームが達成出来るか分からない困難な目標だ。
 しかしブラックドラゴンを倒そうと決めた時、皆の心は一つになった。
 あの時、仲間イベントが発動していたらしい。

「どうしたんですか?」
「またなんかあったんですか?」
 カチュアとベルンハルトの周囲にガンマチームの皆が集まってくる。

 リックがなにげなくカチュアの手元をのぞき込んだ。
 そしてあわてふためいてチラシを指さす。
「この紙がチラシですか? お、俺、見えてます!」
「え、どうして?」
 続いて、オーグも言った。
「俺も見えてます。下の方だけですけど」

「おそらくチームミッションは僕らチーム全員が関わることだからだろう。皆も、自分のステータスボードを確認してみてくれ」
 とベルンハルトが皆に説明する。

「でもどうすれぱ……?」
 戸惑いながら、ローラが聞く。
 ステータスが記載される謎のボード、ステータスボードは鑑定の能力を持たないと本人ですら、新たなメッセージが現れた時以外は見ることが出来ないと駆け出しの冒険者は教わる。

 だがベルンハルトは首を横に振って否定した。
「本人のステータスなら、コツさえ掴めば閲覧可能だ。先ほどカチュアさんに説明した通り、ステータスを見たいと思いながら集中してみてくれ。メッセージには『チームミッション』と書かれているはずだ」

 ガンマチームはおのおの神妙に自分のステータスボードに集中する。

「あ、見えたわ」
 まず声を上げたのは先ほどから練習を重ねていたカチュア。
 カチュアのステータスボードには、

『チームミッションその1
 カチュアのミッション 傀儡を3体作ろう!』

 と書かれていた。
 その後に2/3というメッセージが続く。最初の数字は達成した数で、後の数字はミッションクリアに必要な総数なのだろう。
 傀儡っていうか、ぬいぐるみなら、二体作ったので、その分はクリアのようだ。
「もう一体、ぬいぐるみを修理すれば、私のミッションは完了になるのかしら?」


 続いてベルンハルトが言った。
「僕も見えた。僕はもうミッションをクリアしていたようだ」

 ベルンハルトのミッションは、『300体のモンスターを倒す』というもの。
 仲間イベントが発動してから、チームは既に数回ダンジョン探索を行っている。
 今日も彼はストーンゴーレムを倒しまくったので、ミッションを達成したらしい。

「俺も同じミッションです」
 と言うのはオーグだ。
 オーグも百体以上、モンスターを倒しているのでじきに達成するだろう。

「俺のミッションは『300回、宝箱やドアを開ける』です」
 リックは盗賊職らしいミッションだ。
 今日は古城マップだったので、宝箱も鍵付きのドアも多かった。
 すでにリックも百回に到達している。

「私はもう少し掛かりそう」
 というのはローラだ。
 ローラのミッションは『300回、回復する』というもの。
 このところ、あまりチームメンバーが怪我をしないので、ローラの達成回数は二十六回ほど。
 だが休みの日には教会へ行き、回復魔法を掛けるボランティアを行っているローラなので、頑張れば達成出来そうだ。


「報酬の割に意外と簡単なミッションですね」
 とリックが呟く。
「その1というから、難易度は低く設定されているのだろう」
 ベルンハルトはそう説明した。


「…………」
 皆がわいわいと会話する中、アンだけが無言だった。

 ベテランのアンはベルンハルトにステータスボードの見方を教わらなくともミッションを見えているはずだが……?

 カチュアは声を掛ける。
「どうしたの? アン」
「なんで皆そんな簡単なミッションなの?」
 いつもつよつよのアンが涙目になっている。

 カチュアはあわてた。
「なに? どうしたの? なにかあったの?」
「あったも何もないわ! アタシのミッションは!」

『アンのミッション 3キロ痩せる』
 ……だった。

「「「「あー」」」」
 ベルンハルトをのぞくガンマチームは声を揃えた。

「無理よ、無理! 達成出来るわけないわ!」

「三キロぐらいすぐに絞れるだろう」
 ベルンハルトは空気読めないことを言い出した。

「人ごとだと思って!」

 アンは思い切りベルンハルトをにらんだ。





 ***

 その日のダンジョン探索を終えたガンマチームは、まず始めに冒険者ギルドに向かった。
 指名クエストで引き受けていた薬草の一種、強薬草が依頼の数揃ったのだ。

 強薬草はダンジョンロアの三十階以上に行くと比較的簡単に見つかる薬草なのだが、依頼されたのは千束と数が多かった。
 数回に分けて採取し、ようやく依頼の個数が集まったので、冒険者ギルドに預けにいく。
 クエストは依頼人に直接渡す場合と、冒険者ギルドの受付に預ける場合の二つのケースがあって、アイテムを自分の目で確認したいとギルド預かりをオッケーにしない依頼人はわりと多い。
 今回はどちらでもいいという条件なのでガンマチームは依頼人から信頼されているようだ。
 依頼人の名前は、ミネルヴァ・ガルファ。
 あのガルファ商会の商会長の娘さんだ。

「あの、ガンマチーム様」
 冒険者ギルドの建物内に入り、受付に向かおうとしたら、顔をケープで隠した女性とその連れに声を掛けられた。
 色合いをわざと地味にしているが、丁寧な仕立ての上品な服装だ。隣にいるのは騎士服姿が凜々しい女性だった。
「あ、もしかして」
 ミネルヴァはちらっとだけ顔を出して、「こんにちは、皆様」と挨拶してきた。
 その顔は以前に会った時とは違う人間の女性のものだ。


 立ち話も何なので皆揃って冒険者ギルドの談話室に入った。
「ちょうど良かった。依頼されたアイテムが揃ったところです」
 オーグはミネルヴァに強薬草の束を渡した。
「ありがとうこざいます」
 ミネルヴァは丁重に受け取る。

「ですがミネルヴァさんはどうして冒険者ギルドに?」
 ミネルヴァはお嬢様なのでこんなところに用はないはずだが……。

「ジェシカさんからガンマチーム様はいつもこの時間にお帰りだと聞いて、お目にかかれないかと思い来てみたのです」
 とミネルヴァはわざわざガンマチームに会いに来たようだ。
「ああ、そうなんですか」

「どうしても皆様にお礼が言いたくて……」

 そう言うと、ミネルヴァは感謝のこもった瞳でガンマチームを見つめた。
「ありがとうございまました。この通り、獣人化が解けました」
 と護衛の女性騎士共々頭を下げてきた。


「そんなのいいのに」
「うん」
「ご丁寧にどうもありがとうございます」
「気になってたんで会えて良かったです」
 と話し合い、和んだところでオークがミネルヴァに聞いた。
「ところでこんなにたくさんの強薬草をどうするつもりですか?」

「国境地帯で戦闘が多発しているようです。上級回復ポーションを千個作成し、現地に送ろうと思いまして」

「え、千個も?」
「す、すごい量ですね」
「大変なんじゃありませんか?」
「ええ、ですが、せっかく薬師の勉強をしましたので、少しでもお役に立ちたいのです」

 カチュアの夫、アランは今国境地帯にいる。
 カチュアは声を詰まらせながら、ミネルヴァに頭を下げた。
「ミネルヴァさん、どうもありがとう」


「失礼いたします」
 コンコンとノックの後、談話室に給仕の男性が入ってくる。

「お飲み物は何をご用意いたしましょう?」

「プロテインで」
「俺も」
「俺も」
「美味しい水」
「私、ロイヤルミルクティー、あ、ミネルヴァさん達も頼んで」
「ありがとうございます。私はダージリンティーを。あなたも同じものでいいかしら」
「はい、ありがとうございます」
 と皆が注文する。

 そして最後にアンが、
「アタシ、キャラメルフラペチーノ、ホイップクリーム追加で」
 と言った後、アンはハッとして、
「ううん、コーヒー、ブラックで」
 と言い直す。

 その姿はいつになく悲しそうだ。
 カチュアは思わず言った。
「アン、無理しなくていいのよ」
「でも、チームミッションが……」

 ミネルヴァは不思議そうに首をかしげた。

「チームミッション?」
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