上 下
52 / 69
聖剣の行方

09.骸骨剣士→???戦

しおりを挟む
「ベルンハルトさん、複雑な家系ですね」
「まあ、王族ってそんなものじゃない?」
 アンはサラッとそう言った。

「お嬢さんも第三王子とは面倒なヤツに目を付けられたわね。王子であるなら王位を望むのは当たり前の話だけど、人を踏みつけにしてまですることかとは思うわぁ」
 というのが、アンの感想だ。

 そういえば、ベルンハルトも王子だが。
「ベルンハルトさんは?」
 とカチュアが聞くと、アンは興味なさそうに言った。
「さあ? アイツの話はいいわよ」


 昼食を食べ終えたので話を打ち切り、カチュア達は再びダンジョン探索を続ける。

「もうちょっとで三十二階ね」
「そうですね」

 カチュア達はあらかじめ三十一階のマップを手に入れている。
 三十階を過ぎるとマップなどの情報も無償提供されておらず、お金を出して買わないといけないのだが、あるのとないのとでは探索の難易度が大違いなので買っている。
 カチュア達はダンジョンを進みながら、そのマップを元に宝箱の位置や中身、ルートのちょっとした情報などを書き加えたオリジナルマップを作っている。
 ダンジョン内はまるで生き物のように変化するので、アップデートした情報は重宝される。
 きちんとしたマップを作れば、冒険の手がかりにもなるし、買ったマップの半額ぐらいで売れるのだ。

 マップによると、カチュア達は三十一階の最深部に到達していた。

 その時、カタカタカタと不気味な音がして、モンスターが現れた!

「骸骨剣士だ!」


 骸骨剣士はその名の示す通り、骸骨の姿をしており、剣から繰り出す斬撃は鋭く、骨だから素早く、骨なのに防御力に優れている。
 かなりの強敵だ。

 ここで骸骨剣士が出現するのは事前に仕入れた情報で分かっていた。
 ガンマチームはあわてず、戦闘を開始する。


 骸骨剣士は強敵だが、魔法攻撃を仕掛けてくれることはなく、それにローラの聖魔法『聖別』を施した武器が1.5倍の特攻効果を与える。
 準備は万端なので、落ち着いてやれば勝てる相手だ。

「硬いわねぇ」
「もうちょっとです!」

 リック、オーグ、アンの三人で、半分ほど骸骨剣士の体力を削り取った時。


「афтwегх;ы@бвкор:г!!!」

 骸骨騎士が耳をつんざくような叫び声を上げる。

 アンテッドやスケルトンなどのモンスターが唱える呪文だ。
 彼らは地下に住む暗黒神に祈りを捧げ、暗黒神がその邪悪な願いを聞き入れるとパワーアップされるという。

 だがその成功率はたった0.1パーセント。
 通常ならほとんど成功しないのだが。

「あれ?」

 ガンマチームの攻撃を受け、ぼろぼろに鳴った骸骨の体にどこからともなく現れた赤いツタが絡みつく。
 闇のモンスターの血管だ。
 次に肉をまとい、そして皮。骸骨剣士は人の体になっていく。
 だがそれ・・は全身から人間とは到底思えない、禍々しい瘴気を放っている!
 それに全身が真っ黒だ。

「受肉!」
「なんで?」
「成功率はほとんどないはずなのに!?」

 ガンマチームはあわてふためき、カチュアはひらめいた。

「はっ、そういえば今日は肉の日だったわ!」


 それは呪われた生を得る代わりに血肉を失ったスケルトンが暗黒神から再び肉体を与えられる、「じゅにく」と呼ばれるパワーアップの方法だ。

 毎週金曜日はダンジョンの肉の日。
 骸骨剣士はチラシの肉の日効果で受肉し、悪魔剣士にクラスチェンジした!





 ***

 悪魔剣士は五十階以上に出現する強敵だ。

 ガンマチームは呆然としたが、
「悪魔剣士の弱点は骸骨剣士と同じよ! あわてないで」
 アンは落ち着いて指示を飛ばす。

「骸骨剣士に比べて素早さはほんの少し低下。でも力は三倍にパワーアップしている。絶対に一刀も食らわないで! 脳天から真っ二つにされるわ」

「「はい!」」

 オーグとリックはアンの言葉に冷静さを取り戻し、気合いを入れ直す。


 悪魔剣士を見て、「うわー、怖い」と身震いするカチュアだったが、

「カチュア、コイツ、火に弱いの。援護して!」
 と声が掛かる。

「分かったわ!」
 カチュアもガンマチームの一員だ。
 戦闘に参加する。

 そうはいってもカチュアはあまり素早くない。悪魔剣士にはなるべく近寄らないようにしないといけない。
 カチュアは三十階ですごろく蛇の黒焼きを作りまくったおかげで、サブスキル『料理』がパワーアップしていた。
 新しく取得したのは、遠くから安全らくらくの炎放射……。


 カチュアは悪魔剣士から十分距離を取ったところで、ポチッとお玉のボタンを押し、叫んだ。

「遠火の強火!」

 悪魔剣士に炎のダメージ!

 悪魔剣士は怒ってカチュアの方に向かうが、
「おい、こっちだ」
 オーグ、リック、アンが三方から攻撃し、行かせない。

 悪魔剣士はよってたかって攻撃され、劣勢だ。


「もう一回、攻撃するわ。皆、離れてー!」
 その隙にカチュアの炎攻撃。

「呪われし闇の眷属の心臓を貫き、鼓動を止めよ!『光の矢』」
 そしてとどめにローラが光属性の魔法攻撃『光の矢』を放つ。

 ガンマチームは悪魔剣士を倒した!




「はー」

 戦闘後は皆疲れ果てて立ち上がれない。

 まだここにはモンスターがうようよしている。次のモンスターが襲ってくる前にすぐに撤退しなくては……。

 しかし。

「カタカタカタ」
 と音がして、やってきたのはまたもや骸骨剣士だ。

「……え?」

 骸骨剣士の目がピカッと光り、
「афтwегх;ы@бвкор:г!!!」

 骸骨剣士は禍々しい呪文を唱えて、悪魔剣士に変身する。

「うそでしょう!?」

 カチュア達は二体目の悪魔剣士戦に突入してしまった!
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月

りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。 1話だいたい1500字くらいを想定してます。 1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。 更新は不定期。 完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。 恋愛とファンタジーの中間のような話です。 主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?

藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。 目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。 前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。 前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない! そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...