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王都に戻ると、カイン様は英雄扱いだった。
一週間後に戦勝記念のパーティーが行われるそうだ。
一応、側近の私にもお声が掛かっている。
正式発表はまだだが、カイン様の婚約者選びは大詰めとの噂だ。
何でもカイン様の婚約者の座を巡って令嬢同士、令嬢持ちの家同士の争いに発展しているので、王室側がさっさと婚約者を決めたがっている……らしい。
私は一週間の間、休暇を貰って、家で弟妹と遊んで過ごしていたので詳しくは知らない。
カイン様に渡すアクセサリーは、王都に帰ってすぐ、職工街に出掛けて買った。
小さいけど綺麗で深い色合いの上質なエメラルドが一粒。シンプルなデザインのペンダントだ。
男の人が身に付けても邪魔にならないデザインで、うん、部下が上司に日頃の感謝をこめて贈ってもおかしくない?
おかしいよ、アクセサリーなんか普通贈らないよ。
お店のおじさんにも、
「お嬢ちゃん、恋人にか?」
って言われちゃったよ。
なんで贈るって言っちゃったからなー。
恥ずかしいから、自分では渡せず、王城でカイン様付きの騎士を捕まえて、渡して欲しいと押しつけちゃった。
「おいミロード、自分で渡せよ!俺を殺す気かー!」
という声を振り切ってお家に走る。
エリザベス・ミロード、十六歳です。
戦勝記念のパーティーは王室主催の格式あるパーティーなんだが、「着ていくドレスどうしましょう」と悩む必要はない。
私は魔法騎士として従軍したので女性騎士の儀礼用制服で良いのだ。
当日はパーティーの前にちょっと用があるということでカイン様に呼び出された。
王都に戻ってから、まだ一度もカイン様に会ってない。
一週間、お休み貰ったから登城してないし、呼び出しも……こない。
良く分からないが、カイン様は忙しいらしい。
お母さんネットワークでは、正式に王太子になるという噂もあるそうだ。
儀礼用制服を身に纏い、王城に登城する。
王城に着くと、謁見の間に通され、そこにはカイン様だけではなく、陛下と王妃様始め王族の方々、宰相などのお偉方に魔法省の長老方、主要な名家の貴族方とそうそうたるメンバーが勢揃いしている。
内心、ものすごく焦る。
『ちょっとじゃないですよ、カイン様』
末席にカイン様の側近達の姿もあり、少し、ホッとした。
「来たか、エリザベス・ミロード」
陛下は玉座からそう私にお声を発せられた。
「はっ」
時間通りなのだが、私は皆様をお待たせしてしまったようだ。
あわてて末席の末席に控えようとしたのだが、カイン様が私を呼んだ。
「ベス、こっちに来い」
「はっ、はい」
そしてカイン様は国王陛下の前に立つと、優美に一礼して言った。
「父上、これが私の婚約者のエリザベス・ミロードでございます」
「は?」
***
「あのー、カイン様?婚約者って一体……?」
「魔法解除」
とカイン様が私に向かって手を振ると、
「あっ!」
ドサドサと音を立てて付けていた付加能力アクセサリーが外れる。
エンチャントアクセサリーは固定化という魔法が掛けられていて、解除専門の魔法使いでないと外せないんだが、さすが賢者。一瞬で全部のアクセサリーが外れた。
私はあわてて跪き、アクセサリーをはめ直そうとするが、指が震えて上手くいかない。
「どっ、どどど、どうしましょう」
カイン様は私をなだめるように言う。
「必要ない。もう必要ないんだ」
「駄目、これがないと私……カイン様の運命の恋人役が出来ない」
「もういいんだ。必要ない」
と彼は私を抱きしめるようにして立ち上がらせる。
支えて貰わないとそのまま崩れ落ちてしまう気がした。
カイン様は、付加能力アクセサリーを必要ないと言った。
それってもう私のこと……この人は必要としないという意味だろうか。
「鑑定:運命の相手」
とカイン様が唱えると、魔法のスクリーンが出現して、私とカイン様の運命の相手が映し出される。
「えっ?」
そこに書かれていたのは、ランクSの文字と共に、お互いの名前だった。
「どっ、どういうこと?」
私のエンチャントアクセサリーは全て外れてしまった。
カイン様は元から付けてない。
だから、私達が運命の恋人状態にあるはずないのに……。
ないのに、私は、貴方を愛している。
一週間後に戦勝記念のパーティーが行われるそうだ。
一応、側近の私にもお声が掛かっている。
正式発表はまだだが、カイン様の婚約者選びは大詰めとの噂だ。
何でもカイン様の婚約者の座を巡って令嬢同士、令嬢持ちの家同士の争いに発展しているので、王室側がさっさと婚約者を決めたがっている……らしい。
私は一週間の間、休暇を貰って、家で弟妹と遊んで過ごしていたので詳しくは知らない。
カイン様に渡すアクセサリーは、王都に帰ってすぐ、職工街に出掛けて買った。
小さいけど綺麗で深い色合いの上質なエメラルドが一粒。シンプルなデザインのペンダントだ。
男の人が身に付けても邪魔にならないデザインで、うん、部下が上司に日頃の感謝をこめて贈ってもおかしくない?
おかしいよ、アクセサリーなんか普通贈らないよ。
お店のおじさんにも、
「お嬢ちゃん、恋人にか?」
って言われちゃったよ。
なんで贈るって言っちゃったからなー。
恥ずかしいから、自分では渡せず、王城でカイン様付きの騎士を捕まえて、渡して欲しいと押しつけちゃった。
「おいミロード、自分で渡せよ!俺を殺す気かー!」
という声を振り切ってお家に走る。
エリザベス・ミロード、十六歳です。
戦勝記念のパーティーは王室主催の格式あるパーティーなんだが、「着ていくドレスどうしましょう」と悩む必要はない。
私は魔法騎士として従軍したので女性騎士の儀礼用制服で良いのだ。
当日はパーティーの前にちょっと用があるということでカイン様に呼び出された。
王都に戻ってから、まだ一度もカイン様に会ってない。
一週間、お休み貰ったから登城してないし、呼び出しも……こない。
良く分からないが、カイン様は忙しいらしい。
お母さんネットワークでは、正式に王太子になるという噂もあるそうだ。
儀礼用制服を身に纏い、王城に登城する。
王城に着くと、謁見の間に通され、そこにはカイン様だけではなく、陛下と王妃様始め王族の方々、宰相などのお偉方に魔法省の長老方、主要な名家の貴族方とそうそうたるメンバーが勢揃いしている。
内心、ものすごく焦る。
『ちょっとじゃないですよ、カイン様』
末席にカイン様の側近達の姿もあり、少し、ホッとした。
「来たか、エリザベス・ミロード」
陛下は玉座からそう私にお声を発せられた。
「はっ」
時間通りなのだが、私は皆様をお待たせしてしまったようだ。
あわてて末席の末席に控えようとしたのだが、カイン様が私を呼んだ。
「ベス、こっちに来い」
「はっ、はい」
そしてカイン様は国王陛下の前に立つと、優美に一礼して言った。
「父上、これが私の婚約者のエリザベス・ミロードでございます」
「は?」
***
「あのー、カイン様?婚約者って一体……?」
「魔法解除」
とカイン様が私に向かって手を振ると、
「あっ!」
ドサドサと音を立てて付けていた付加能力アクセサリーが外れる。
エンチャントアクセサリーは固定化という魔法が掛けられていて、解除専門の魔法使いでないと外せないんだが、さすが賢者。一瞬で全部のアクセサリーが外れた。
私はあわてて跪き、アクセサリーをはめ直そうとするが、指が震えて上手くいかない。
「どっ、どどど、どうしましょう」
カイン様は私をなだめるように言う。
「必要ない。もう必要ないんだ」
「駄目、これがないと私……カイン様の運命の恋人役が出来ない」
「もういいんだ。必要ない」
と彼は私を抱きしめるようにして立ち上がらせる。
支えて貰わないとそのまま崩れ落ちてしまう気がした。
カイン様は、付加能力アクセサリーを必要ないと言った。
それってもう私のこと……この人は必要としないという意味だろうか。
「鑑定:運命の相手」
とカイン様が唱えると、魔法のスクリーンが出現して、私とカイン様の運命の相手が映し出される。
「えっ?」
そこに書かれていたのは、ランクSの文字と共に、お互いの名前だった。
「どっ、どういうこと?」
私のエンチャントアクセサリーは全て外れてしまった。
カイン様は元から付けてない。
だから、私達が運命の恋人状態にあるはずないのに……。
ないのに、私は、貴方を愛している。
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