19 / 21
19.願いが叶う時2※
しおりを挟む
「私は厚顔無恥な男だが、さすがに七個も年下のあなたに伽を先導して欲しいとは思わんよ」
「さ、左様ですか……」
『よ、良かった……』
その一言に安心して胸を撫で下ろせる。
……はずだが、アルバートとの距離が近すぎて心臓の鼓動はますます激しくなる。
互いの息遣いが聞こえる距離に、ラキシスはどうしていいのか分からなくなる。
「ラキシス」
アルバートはラキシスを抱き締め、キスする。
『あ……』
唇が重なり合ったまま、アルバートはラキシスを抱き上げる。
『!』
ラキシスが慌てふためいているうちに、アルバートはラキシスの体をそっとベッドに横たえた。
「ラキシス」
そしてもう一度、アルバートはラキシスにキスする。
何度も何度も角度を変えてキスされる。
「アルバート様……」
ラキシスも上手くはないが、アルバートのキスに応じる。
一応、悪女になれないかずっと本で読んで勉強していたのだ。
その結果、分かったのは、悪女はとにかく積極的に行く。
長い口付けを終えた時にはアルバートもラキシスも頬が真っ赤だった。
「ラキシス……」
アルバートはラキシスのネグリジェを脱がしていく。
壊れ物に触れるようなぎこちない手つきに、ラキシスはアルバートの愛情を感じる。
「アルバート様……」
大切にされていると思う。
だからこの人は、ラキシスをこの国から逃がそうとしたのだ。
だが、それはラキシスの望みとは違う。
ラキシスはアルバートを抱き締めた。
「最後まで、お側にいさせて下さい……」
アルバートは大きく目を見張った後、微笑んだ。
「それが君の望みなら」
互いに生まれたままの姿になり、ラキシスは銀色に輝く夫の腕の全体を初めて見た。
「…………」
やはり怖くはない。
ただ、不思議だと思う。
そっとミスリル銀の腕に触れるとアルバートはビクッと体を震わせた。
「……痛いですか?」
「痛くはない。だがラキシスが不快なのではないか?」
「不快だとは思いません」
散々恐ろしがられたせいか、アルバートの自己評価はかなり低い。
ラキシスはアルバートの左手を取り、自分の頬に押し当てる。
「私を感じますか?」
「ああ、感じる。君はとても暖かい」
抱き合い、アルバートはラキシスの体をまさぐる。
ラキシスのあまり大きくない胸も彼は丹念に愛撫した。
胸の先端をそっと舌で撫でられる。
「あっ……」
今まで感じたことのない感覚にラキシスは翻弄される。
体全体が熱を持ってくる。
汗にまみれた体をアルバートは喜々として抱き締め、ラキシスの下腹部を撫でた。
「初めてだから、多分痛いと思う。少し、ほぐそう」
「は、はい」
膣に指を入れられると痛い。
思った以上に痛い。
それまでのフワフワとした夢心地が吹き飛ぶくらい痛かったが、アルバートは楽しそうだ。
「少し、濡れてきた」
「そ、そうですか?」
「まだ痛いだろうが、そろそろいいか?」
「……はい?」
ラキシスの上げた声は了承ではない。どちらかというと、疑問の声だ。
「いくぞ」
ラキシスは目を閉じて破瓜の傷みに耐えた。
痛い。大変に痛い。
だがそれ以上に股を開くというかつてない体勢が恥ずかしい。
ジンジンと鈍い痛みが体を貫く。
それでもラキシスはやめて欲しいとは思わない。
「ラキシス」
「アルバート様……」
アルバートの体が熱を帯びて、自分を強く抱き締めているのが嬉しかった。
アルバートはいずれ戦場に行く。
……おそらくはもう帰ってこない。
だが、今この瞬間だけは、二人は共にある。
やがて二人は絶頂を迎えるが、射精の瞬間、アルバートはラキシスの膣から性器を抜いて精をラキシスの腹の上にこぼした。
「ラキシス、私は死の山脈で死ぬつもりだったが、考えを改めた」
「はい……」
ラキシスはセックスの後でボーッとしている。
言葉は耳に入ってくるものの、理解にはほど遠い。
「生きて帰ってきたいと思う。おそらくは死ぬ。だが、最後まで生を諦めず、戦おうと思う」
「……!」
ラキシスはハッとアルバートを見つめた。
青と銀の瞳がラキシスを見つめて微笑んでいる。
「もし生きていたら、君のところに帰ってきても良いだろうか?」
「はい!」
「また何処か体を欠損しているかもしれない。……更なる異形に成り果てているかも知れない。それでも?」
「はい、構いません。生きていてくれるなら私は……」
ラキシスはアルバートにしがみついて泣いた。
頬を濡らすのは喜びの涙だった。
三日後、アルバート達は死の山脈に向けて出立した。
「さ、左様ですか……」
『よ、良かった……』
その一言に安心して胸を撫で下ろせる。
……はずだが、アルバートとの距離が近すぎて心臓の鼓動はますます激しくなる。
互いの息遣いが聞こえる距離に、ラキシスはどうしていいのか分からなくなる。
「ラキシス」
アルバートはラキシスを抱き締め、キスする。
『あ……』
唇が重なり合ったまま、アルバートはラキシスを抱き上げる。
『!』
ラキシスが慌てふためいているうちに、アルバートはラキシスの体をそっとベッドに横たえた。
「ラキシス」
そしてもう一度、アルバートはラキシスにキスする。
何度も何度も角度を変えてキスされる。
「アルバート様……」
ラキシスも上手くはないが、アルバートのキスに応じる。
一応、悪女になれないかずっと本で読んで勉強していたのだ。
その結果、分かったのは、悪女はとにかく積極的に行く。
長い口付けを終えた時にはアルバートもラキシスも頬が真っ赤だった。
「ラキシス……」
アルバートはラキシスのネグリジェを脱がしていく。
壊れ物に触れるようなぎこちない手つきに、ラキシスはアルバートの愛情を感じる。
「アルバート様……」
大切にされていると思う。
だからこの人は、ラキシスをこの国から逃がそうとしたのだ。
だが、それはラキシスの望みとは違う。
ラキシスはアルバートを抱き締めた。
「最後まで、お側にいさせて下さい……」
アルバートは大きく目を見張った後、微笑んだ。
「それが君の望みなら」
互いに生まれたままの姿になり、ラキシスは銀色に輝く夫の腕の全体を初めて見た。
「…………」
やはり怖くはない。
ただ、不思議だと思う。
そっとミスリル銀の腕に触れるとアルバートはビクッと体を震わせた。
「……痛いですか?」
「痛くはない。だがラキシスが不快なのではないか?」
「不快だとは思いません」
散々恐ろしがられたせいか、アルバートの自己評価はかなり低い。
ラキシスはアルバートの左手を取り、自分の頬に押し当てる。
「私を感じますか?」
「ああ、感じる。君はとても暖かい」
抱き合い、アルバートはラキシスの体をまさぐる。
ラキシスのあまり大きくない胸も彼は丹念に愛撫した。
胸の先端をそっと舌で撫でられる。
「あっ……」
今まで感じたことのない感覚にラキシスは翻弄される。
体全体が熱を持ってくる。
汗にまみれた体をアルバートは喜々として抱き締め、ラキシスの下腹部を撫でた。
「初めてだから、多分痛いと思う。少し、ほぐそう」
「は、はい」
膣に指を入れられると痛い。
思った以上に痛い。
それまでのフワフワとした夢心地が吹き飛ぶくらい痛かったが、アルバートは楽しそうだ。
「少し、濡れてきた」
「そ、そうですか?」
「まだ痛いだろうが、そろそろいいか?」
「……はい?」
ラキシスの上げた声は了承ではない。どちらかというと、疑問の声だ。
「いくぞ」
ラキシスは目を閉じて破瓜の傷みに耐えた。
痛い。大変に痛い。
だがそれ以上に股を開くというかつてない体勢が恥ずかしい。
ジンジンと鈍い痛みが体を貫く。
それでもラキシスはやめて欲しいとは思わない。
「ラキシス」
「アルバート様……」
アルバートの体が熱を帯びて、自分を強く抱き締めているのが嬉しかった。
アルバートはいずれ戦場に行く。
……おそらくはもう帰ってこない。
だが、今この瞬間だけは、二人は共にある。
やがて二人は絶頂を迎えるが、射精の瞬間、アルバートはラキシスの膣から性器を抜いて精をラキシスの腹の上にこぼした。
「ラキシス、私は死の山脈で死ぬつもりだったが、考えを改めた」
「はい……」
ラキシスはセックスの後でボーッとしている。
言葉は耳に入ってくるものの、理解にはほど遠い。
「生きて帰ってきたいと思う。おそらくは死ぬ。だが、最後まで生を諦めず、戦おうと思う」
「……!」
ラキシスはハッとアルバートを見つめた。
青と銀の瞳がラキシスを見つめて微笑んでいる。
「もし生きていたら、君のところに帰ってきても良いだろうか?」
「はい!」
「また何処か体を欠損しているかもしれない。……更なる異形に成り果てているかも知れない。それでも?」
「はい、構いません。生きていてくれるなら私は……」
ラキシスはアルバートにしがみついて泣いた。
頬を濡らすのは喜びの涙だった。
三日後、アルバート達は死の山脈に向けて出立した。
26
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】思い込みの激しい方ですね
仲村 嘉高
恋愛
私の婚約者は、なぜか私を「貧乏人」と言います。
私は子爵家で、彼は伯爵家なので、爵位は彼の家の方が上ですが、商売だけに限れば、彼の家はうちの子会社的取引相手です。
家の方針で清廉な生活を心掛けているからでしょうか?
タウンハウスが小さいからでしょうか?
うちの領地のカントリーハウスを、彼は見た事ありません。
それどころか、「田舎なんて行ってもつまらない」と領地に来た事もありません。
この方、大丈夫なのでしょうか?
※HOT最高4位!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる