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19.願いが叶う時2※

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「私は厚顔無恥な男だが、さすがに七個も年下のあなたに伽を先導して欲しいとは思わんよ」
「さ、左様ですか……」
『よ、良かった……』
 その一言に安心して胸を撫で下ろせる。
 ……はずだが、アルバートとの距離が近すぎて心臓の鼓動はますます激しくなる。

 互いの息遣いが聞こえる距離に、ラキシスはどうしていいのか分からなくなる。
「ラキシス」
 アルバートはラキシスを抱き締め、キスする。
『あ……』
 唇が重なり合ったまま、アルバートはラキシスを抱き上げる。

『!』
 ラキシスが慌てふためいているうちに、アルバートはラキシスの体をそっとベッドに横たえた。

「ラキシス」
 そしてもう一度、アルバートはラキシスにキスする。
 何度も何度も角度を変えてキスされる。
「アルバート様……」
 ラキシスも上手くはないが、アルバートのキスに応じる。

 一応、悪女になれないかずっと本で読んで勉強していたのだ。
 その結果、分かったのは、悪女はとにかく積極的に行く。
 長い口付けを終えた時にはアルバートもラキシスも頬が真っ赤だった。

「ラキシス……」
 アルバートはラキシスのネグリジェを脱がしていく。
 壊れ物に触れるようなぎこちない手つきに、ラキシスはアルバートの愛情を感じる。
「アルバート様……」
 大切にされていると思う。
 だからこの人は、ラキシスをこの国から逃がそうとしたのだ。

 だが、それはラキシスの望みとは違う。
 ラキシスはアルバートを抱き締めた。
「最後まで、お側にいさせて下さい……」
 アルバートは大きく目を見張った後、微笑んだ。
「それが君の望みなら」


 互いに生まれたままの姿になり、ラキシスは銀色に輝く夫の腕の全体を初めて見た。
「…………」
 やはり怖くはない。
 ただ、不思議だと思う。
 そっとミスリル銀の腕に触れるとアルバートはビクッと体を震わせた。
「……痛いですか?」
「痛くはない。だがラキシスが不快なのではないか?」
「不快だとは思いません」
 散々恐ろしがられたせいか、アルバートの自己評価はかなり低い。
 ラキシスはアルバートの左手を取り、自分の頬に押し当てる。
「私を感じますか?」
「ああ、感じる。君はとても暖かい」

 抱き合い、アルバートはラキシスの体をまさぐる。
 ラキシスのあまり大きくない胸も彼は丹念に愛撫した。
 胸の先端をそっと舌で撫でられる。
「あっ……」
 今まで感じたことのない感覚にラキシスは翻弄される。


 体全体が熱を持ってくる。
 汗にまみれた体をアルバートは喜々として抱き締め、ラキシスの下腹部を撫でた。
「初めてだから、多分痛いと思う。少し、ほぐそう」
「は、はい」
 膣に指を入れられると痛い。
 思った以上に痛い。

 それまでのフワフワとした夢心地が吹き飛ぶくらい痛かったが、アルバートは楽しそうだ。
「少し、濡れてきた」
「そ、そうですか?」

「まだ痛いだろうが、そろそろいいか?」
「……はい?」
 ラキシスの上げた声は了承ではない。どちらかというと、疑問の声だ。

「いくぞ」
 ラキシスは目を閉じて破瓜の傷みに耐えた。
 痛い。大変に痛い。
 だがそれ以上に股を開くというかつてない体勢が恥ずかしい。
 ジンジンと鈍い痛みが体を貫く。
 それでもラキシスはやめて欲しいとは思わない。

「ラキシス」
「アルバート様……」
 アルバートの体が熱を帯びて、自分を強く抱き締めているのが嬉しかった。
 アルバートはいずれ戦場に行く。
 ……おそらくはもう帰ってこない。
 だが、今この瞬間だけは、二人は共にある。

 やがて二人は絶頂を迎えるが、射精の瞬間、アルバートはラキシスの膣から性器を抜いて精をラキシスの腹の上にこぼした。

「ラキシス、私は死の山脈で死ぬつもりだったが、考えを改めた」
「はい……」
 ラキシスはセックスの後でボーッとしている。
 言葉は耳に入ってくるものの、理解にはほど遠い。
「生きて帰ってきたいと思う。おそらくは死ぬ。だが、最後まで生を諦めず、戦おうと思う」
「……!」
 ラキシスはハッとアルバートを見つめた。
 青と銀の瞳がラキシスを見つめて微笑んでいる。

「もし生きていたら、君のところに帰ってきても良いだろうか?」
「はい!」
「また何処か体を欠損しているかもしれない。……更なる異形に成り果てているかも知れない。それでも?」
「はい、構いません。生きていてくれるなら私は……」
 ラキシスはアルバートにしがみついて泣いた。
 頬を濡らすのは喜びの涙だった。



 三日後、アルバート達は死の山脈に向けて出立した。
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