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第375話 闇の獣人、勇者アレランの霊に修復された聖剣を渡してみる
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ドワーフもドラゴンもどちらもプライドが高い。今は仲良くやっていても、酒を巡って奪い合いになりかねない。
何故ならどっちも酒が大好きだからだ。実際に俺がドワーフの地下都市にある倉庫内に沢山入れておいた酒樽も一週間以内に飲み尽くされたようだしな。
俺が一番恐れるのが、ダンジョン内での喧嘩だ。特に宝箱の中身について口論になりやすい。
いや口論で済めばいい方だな。最悪の場合、冒険者同士で殺し合いになりかねない。
それが敵対するパーティの面々ならまだしも、同じ仲間に宝欲しさに裏切られて殺された、なんてこともコア・ブランチによると珍しくないそうだ。
さすがに最近では冒険者ギルドでの取り締まりがきつくなってきた為、仲間割れとかは起きないようになってきたのだが、それでも全く起きないわけじゃない。
それがレナリアーラ王国の王都ジェルロンドにあるダンジョン内でもそうなんだから、酒が絡むともともと気性が激しいドワーフとドラゴンだ。
たった一つの酒瓶を巡って、その酒を誰が飲んでいいのかについて言い争うことになる可能性は十分にある。
そういう危険性を奴隷達のリーダーのミアナを中心にして言い含めておいたので、彼女は真剣な顔で開かれた自在門を配下の奴隷達に命じて監視させることにした。
普通は自在門といえ、開かれた空間の上下の階層は見られない。
例えば地下1階の光景を見たいのなら、地下1階だけの光景しか見られない。
地下2階なら2階の扉を別に開かないといけないし、その分だけ監視要員が必要になる。
だがこの場合は俺は時空の精霊王に頼んで、一つの門を開くだけで地下1階から5階までの光景が見られるようにしてもらった。
幸いなことに、というべきか…。やはり強敵が多数揃っている北北西のダンジョンはほとんどドワーフが入っていないようで、逆に北東のダンジョンは人気があって、多くのドワーフが斧を構えてミスリル装備に身を固めた、特に優れた戦士を先頭にして、魔物達と戦っている。
「今の所は異常がないからって、監視を緩めるなよ? これからドラゴンと一緒に探索する可能性は高いんだからな。戦闘ではドラゴンの方が力が強いが、逆を言えば懐に入られたらおしまいなので、接近戦ではドワーフの方が有利だ。それぞれ得意分野が違うから、その事でも口論になるかもしれないので、注意して見張っておくようにな」
と、俺が命じると奴隷達は軍人のように敬礼した。
いや…おまえら奴隷なんだからさ。そんな軍人みたいな仕草しなくても。
まあこうして言っても仕方ないので俺は威厳たっぷりに頷くと、今度は闇の中の空間からアレランを封じた水晶玉を出して、霊魂実体化のアビリティをかけてやった。
相変わらず落ち込んでいて、亡霊というよりゾンビといった方が正しいかもしれない彼に、俺は聖剣を渡してみると、瞬時に目を輝かせて受け取って何度も修復された刃を見ていた。
俺は次の段階として、フレジョリーナを手招きしてアレランの前に立たせてやる。
「アレラン。あんたの聖剣を直したのはこの不死鳥のフレジョリーナだ。邪神との戦いでまた折られる可能性があるので、その剣には再生能力も付与された。これであんたも安心して今まで通り、邪悪な魔物とかの退治をできるから帝都の魔物退治に協力を…」
「ふっ…つまりこれで晴れてお前を斬ることができるようになったというわけだな!? ならば今度こそ死ね! 聖人とは名ばかりの変態・淫行獣人めぇ!!」
と、聖剣を相も変わらず絵に描いたようなまっすぐに振り下ろしてくるアレラン。
いや…そんなサディスティックな笑顔を浮かべながら剣を振り降ろしてきても、今の俺、覇王竜の装備シリーズをフル装備で身に着けているから、そんな敵意まんまんの斬撃なんて結界が起動して弾かれちゃうんですけどね。
というか俺の全身から立ち込める「気」が強まっていることに気づかないのかな? それでよく勇者を名乗れたなと思っていると、フレジョリーナが丸い全身を活かして、ジャンプしたかと思うと全身をボールにしてアレランを弾き飛ばした。
床の上に落ちたアレランを、額に青筋を浮かべたアルロンとロンドウェルがミスリル装備に身を固めた状態で、さすがに剣は抜かないが、殴る蹴るの制裁を実体化したアレランに加えていく。
「おどきなさい! 私の御主人様に危害を加えようとした罪、万死に値しますわ!」
と、ミリーヤも額に青筋を浮かべながら、黒い羽でできた扇子を一閃した。
素早く飛び退いたアルロン達と入れ替わりに、黒い光を放つ羽根が5本ほどアレランに命中し、爆発した。
それからは城から様子を見に来ていたルルドンの火炎放射、サンデラルの雷のブレス、アンデッドの専門家のララフォンのエネルギーでできた巨大な拳によるパンチがアレランに炸裂した。
だが聖剣が完全修復された上に、フレジョリーナの一滴だけとはいえ、上位の不死鳥の血によって再生能力が付与されたのだ。この程度ではアレランの魂が消滅するはずがなかった。
そこへ無表情でアンデッド・ナイトにして元・騎士団長のゼイレンの斬撃が聖剣ごとアレランを吹っ飛ばした。
さらにグレーターリッチのバルシェリクの魔力を込めたガイコツがアレランを羽交い絞めにした。
ほぼ同時にミラルカ王子の魔力を込めた漆黒の煙に見える闇の波動をまとったレイピアが、回避できないアレランにもろに刺さった。
「オラにも殴らせろぉぉぉ!!」
と、シュープリームオークのデオロンが両手を組んだ怒りの一撃が骸骨ごとアレランを吹き飛ばし、骸骨を粉砕してしまった。
吹き飛んだアレランを今度はドラフォールさんの口から吐いたブレスが直撃して、壁に叩きつけてしまう。
そこへヒョドリンの茂らせた葉っぱが刃物のような輝きを帯びると、数十枚もの葉っぱが勝手に外れて、アレランへと殺到していった。
それは単に鋭利な葉っぱじゃなくて当たると爆発するタイプの葉のようだった。
「あ、あの…もういいから。お前らもうちょっと落ち着いて、な?」
「そうじゃのー。こやつにも悪党退治という仕事があるし、権力に憑かれたアホな宗教関係者を殺して、宗教組織を拡大させないという意味では役に立つからのー」
最後にアナントスが召喚した蛇によって束縛されたアレランだが、さんざん攻撃されたせいか、もう抵抗したり罵声を浴びせる気力もないらしい。
「全く…今まで勇者という者に何名か会ったことはありますが、ここまでアホな勇者は見た事ありませんわ! もうこんなアホ勇者、帝都に巣食う魔物の退治には採用できませんわね!!」
と、嫌悪の色を隠さないで睨むフレジョリーナ。頭の上に白い光を放っている目を三角にして、倒れ伏すアレランを睨む三羽のヒナもうんうんと頷いている…ってあいつらが発している光の波動と魔力の濃さって…サン・フレアじゃねーか! 何でヒナ鳥がそんな光属性の究極魔法を使えるわけ!?
まさかと思ってタラミレーナとミリーヤを睨むと、俺が思っていた通り、サン・フレアが込められた宝石をコア・ブランチに頼んで分けてもらい、あのヒナ鳥達に食わせたらしかった。
普通なら耐えきれずに体が消し飛びますけどね! 不死鳥だから耐えられたんだよ! というか俺の許可なしにそんな物騒な事するなよお前ら…。
彼女達によると何か攻撃魔法が使えないと、ヒナ鳥が本当に死ぬからと駄目元でサン・フレアを宿した宝石を食わせてみたら…一回食べたらサン・フレアを習得したと…。
何かもう頭痛くなってきたよ…。アレランは使えないから…こりゃ帝都の魔物を何とかする作戦、練り直さないといけないな。
俺はそのままアナントスにアレランを拘束するように頼んでから、城に戻って寝ることにしました…。
何故ならどっちも酒が大好きだからだ。実際に俺がドワーフの地下都市にある倉庫内に沢山入れておいた酒樽も一週間以内に飲み尽くされたようだしな。
俺が一番恐れるのが、ダンジョン内での喧嘩だ。特に宝箱の中身について口論になりやすい。
いや口論で済めばいい方だな。最悪の場合、冒険者同士で殺し合いになりかねない。
それが敵対するパーティの面々ならまだしも、同じ仲間に宝欲しさに裏切られて殺された、なんてこともコア・ブランチによると珍しくないそうだ。
さすがに最近では冒険者ギルドでの取り締まりがきつくなってきた為、仲間割れとかは起きないようになってきたのだが、それでも全く起きないわけじゃない。
それがレナリアーラ王国の王都ジェルロンドにあるダンジョン内でもそうなんだから、酒が絡むともともと気性が激しいドワーフとドラゴンだ。
たった一つの酒瓶を巡って、その酒を誰が飲んでいいのかについて言い争うことになる可能性は十分にある。
そういう危険性を奴隷達のリーダーのミアナを中心にして言い含めておいたので、彼女は真剣な顔で開かれた自在門を配下の奴隷達に命じて監視させることにした。
普通は自在門といえ、開かれた空間の上下の階層は見られない。
例えば地下1階の光景を見たいのなら、地下1階だけの光景しか見られない。
地下2階なら2階の扉を別に開かないといけないし、その分だけ監視要員が必要になる。
だがこの場合は俺は時空の精霊王に頼んで、一つの門を開くだけで地下1階から5階までの光景が見られるようにしてもらった。
幸いなことに、というべきか…。やはり強敵が多数揃っている北北西のダンジョンはほとんどドワーフが入っていないようで、逆に北東のダンジョンは人気があって、多くのドワーフが斧を構えてミスリル装備に身を固めた、特に優れた戦士を先頭にして、魔物達と戦っている。
「今の所は異常がないからって、監視を緩めるなよ? これからドラゴンと一緒に探索する可能性は高いんだからな。戦闘ではドラゴンの方が力が強いが、逆を言えば懐に入られたらおしまいなので、接近戦ではドワーフの方が有利だ。それぞれ得意分野が違うから、その事でも口論になるかもしれないので、注意して見張っておくようにな」
と、俺が命じると奴隷達は軍人のように敬礼した。
いや…おまえら奴隷なんだからさ。そんな軍人みたいな仕草しなくても。
まあこうして言っても仕方ないので俺は威厳たっぷりに頷くと、今度は闇の中の空間からアレランを封じた水晶玉を出して、霊魂実体化のアビリティをかけてやった。
相変わらず落ち込んでいて、亡霊というよりゾンビといった方が正しいかもしれない彼に、俺は聖剣を渡してみると、瞬時に目を輝かせて受け取って何度も修復された刃を見ていた。
俺は次の段階として、フレジョリーナを手招きしてアレランの前に立たせてやる。
「アレラン。あんたの聖剣を直したのはこの不死鳥のフレジョリーナだ。邪神との戦いでまた折られる可能性があるので、その剣には再生能力も付与された。これであんたも安心して今まで通り、邪悪な魔物とかの退治をできるから帝都の魔物退治に協力を…」
「ふっ…つまりこれで晴れてお前を斬ることができるようになったというわけだな!? ならば今度こそ死ね! 聖人とは名ばかりの変態・淫行獣人めぇ!!」
と、聖剣を相も変わらず絵に描いたようなまっすぐに振り下ろしてくるアレラン。
いや…そんなサディスティックな笑顔を浮かべながら剣を振り降ろしてきても、今の俺、覇王竜の装備シリーズをフル装備で身に着けているから、そんな敵意まんまんの斬撃なんて結界が起動して弾かれちゃうんですけどね。
というか俺の全身から立ち込める「気」が強まっていることに気づかないのかな? それでよく勇者を名乗れたなと思っていると、フレジョリーナが丸い全身を活かして、ジャンプしたかと思うと全身をボールにしてアレランを弾き飛ばした。
床の上に落ちたアレランを、額に青筋を浮かべたアルロンとロンドウェルがミスリル装備に身を固めた状態で、さすがに剣は抜かないが、殴る蹴るの制裁を実体化したアレランに加えていく。
「おどきなさい! 私の御主人様に危害を加えようとした罪、万死に値しますわ!」
と、ミリーヤも額に青筋を浮かべながら、黒い羽でできた扇子を一閃した。
素早く飛び退いたアルロン達と入れ替わりに、黒い光を放つ羽根が5本ほどアレランに命中し、爆発した。
それからは城から様子を見に来ていたルルドンの火炎放射、サンデラルの雷のブレス、アンデッドの専門家のララフォンのエネルギーでできた巨大な拳によるパンチがアレランに炸裂した。
だが聖剣が完全修復された上に、フレジョリーナの一滴だけとはいえ、上位の不死鳥の血によって再生能力が付与されたのだ。この程度ではアレランの魂が消滅するはずがなかった。
そこへ無表情でアンデッド・ナイトにして元・騎士団長のゼイレンの斬撃が聖剣ごとアレランを吹っ飛ばした。
さらにグレーターリッチのバルシェリクの魔力を込めたガイコツがアレランを羽交い絞めにした。
ほぼ同時にミラルカ王子の魔力を込めた漆黒の煙に見える闇の波動をまとったレイピアが、回避できないアレランにもろに刺さった。
「オラにも殴らせろぉぉぉ!!」
と、シュープリームオークのデオロンが両手を組んだ怒りの一撃が骸骨ごとアレランを吹き飛ばし、骸骨を粉砕してしまった。
吹き飛んだアレランを今度はドラフォールさんの口から吐いたブレスが直撃して、壁に叩きつけてしまう。
そこへヒョドリンの茂らせた葉っぱが刃物のような輝きを帯びると、数十枚もの葉っぱが勝手に外れて、アレランへと殺到していった。
それは単に鋭利な葉っぱじゃなくて当たると爆発するタイプの葉のようだった。
「あ、あの…もういいから。お前らもうちょっと落ち着いて、な?」
「そうじゃのー。こやつにも悪党退治という仕事があるし、権力に憑かれたアホな宗教関係者を殺して、宗教組織を拡大させないという意味では役に立つからのー」
最後にアナントスが召喚した蛇によって束縛されたアレランだが、さんざん攻撃されたせいか、もう抵抗したり罵声を浴びせる気力もないらしい。
「全く…今まで勇者という者に何名か会ったことはありますが、ここまでアホな勇者は見た事ありませんわ! もうこんなアホ勇者、帝都に巣食う魔物の退治には採用できませんわね!!」
と、嫌悪の色を隠さないで睨むフレジョリーナ。頭の上に白い光を放っている目を三角にして、倒れ伏すアレランを睨む三羽のヒナもうんうんと頷いている…ってあいつらが発している光の波動と魔力の濃さって…サン・フレアじゃねーか! 何でヒナ鳥がそんな光属性の究極魔法を使えるわけ!?
まさかと思ってタラミレーナとミリーヤを睨むと、俺が思っていた通り、サン・フレアが込められた宝石をコア・ブランチに頼んで分けてもらい、あのヒナ鳥達に食わせたらしかった。
普通なら耐えきれずに体が消し飛びますけどね! 不死鳥だから耐えられたんだよ! というか俺の許可なしにそんな物騒な事するなよお前ら…。
彼女達によると何か攻撃魔法が使えないと、ヒナ鳥が本当に死ぬからと駄目元でサン・フレアを宿した宝石を食わせてみたら…一回食べたらサン・フレアを習得したと…。
何かもう頭痛くなってきたよ…。アレランは使えないから…こりゃ帝都の魔物を何とかする作戦、練り直さないといけないな。
俺はそのままアナントスにアレランを拘束するように頼んでから、城に戻って寝ることにしました…。
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