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第373話 闇の獣人、ドワーフに聖剣修復を諦めさせる代わりに地竜、水竜を紹介する

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 俺はそれからアルロン、ロンドウェル(もちろん二人共、前回同様にミスリル装備)、フレジョリーナを伴って、自在門から臨時の会議室に入っていった。

 ノックをしなかったのは面倒だからじゃない。中からの喧々囂々とする議論…というより、ほとんど口論にしか聞こえない会議のせいでノックの音なんて掻き消されてしまうと思ったからだ。

 そのままドアを開けて出入り口の所で立ち止まる。ここまでは打合せ通りなので後ろの連中が俺にぶつかるということはない。

 「邪魔するぞ。いつまで経っても聖剣の修復が終わらないようだからな。こちらでも聖剣修復に何かいい方法はないかと思って、同時に調査をしていた。その結果、永遠と再生を司る不死鳥を眷属にする事ができた。…入れ。フレジョリーナ」

 俺が顎をしゃくって室内に入るように促すと、オレンジ色の一メートルほどの太った鳥が、チョコチョコと二足歩行で入ってきた。

 「はじめまして。定命者モータルの皆さん。私は不死鳥のフレジョリーナと申しますわ。いろいろあってラフィアス様の部下になりましたの。どうやら皆さんは聖剣を修復できても、また折られてはその都度修復することを恐れて再生能力を与えた方がいい。その為の材料はある程度揃っていますが、どれを使ったらいいのかについて悩んでいる…違いますか?」

 図星をさされて沈鬱な表情になり、無言で書類や鉱石が乗っているテーブルの上を見つめるドワーフ達。

 本来なら争いが起きた時の為に先に王様を訪ねて連れてくるべきだろうが、あいにくこの議論の場にゴルガン王がすでにいたんだから、仕方ない。

 まあ一度説明してから、この頭の固い職人達にまた説明するなんて面倒かつ二度手間になる事を避けられたんだから、時間の節約にはなったな。

 「久しぶりだな、ドワーフの諸君。一度勇者アレランのもっていた聖剣を修復するように依頼したが、未だに修復されていない様子。さすがに神々から与えられた聖剣の修復となると君達では荷が重いということで、俺としても無理難題を押し付けてしまったと少々反省し、今日は聖剣修復の適任者を連れてきた。

 それがここにいるフレジョリーナだ。彼女なら聖剣を修復できるばかりでなく、再生能力を与えることができるので、いつまでもここにいて無駄に体力と時間を議論に費やすこともなくなるし、アレランの剣も修復されるからな。

 …そんな訳でこの聖剣は渡してもらおう。…ではフレジョリーナ、すぐにこの剣を直し、再度折られた時の為に再生能力をもった武器に変えてやりなさい」

 事前の打ち合わせではミリーヤ、奴隷達のリーダーミアナが俺に恥をかかせることがないように、魔剣とか一度折ってから、修復して再生能力をもたせてみろ、とフレジョリーナに半信半疑の顔で言った。

 それも当然だったが、フレジョリーナはフン、と鼻で笑うと俺がダンジョン内で手に入れたマジック・ブレードを受け取るや否や、すぐにへし折って二つのパーツに分けてしまってから彼女の羽根を一本抜いてそれを折れた個所に挟む形で修復した。

 てっきり道具とか使うのかと思ったが、そんな事はなくて俺が魔剣をへし折って、再度二つに分かれた剣は、そのままゆっくりと動いて、互いに呼び合うようにして二つのパーツは宙に浮いてきれいにくっついてしまった。

 だから今回の聖剣の修復でも、彼女がマジック・ブレードを修復したように、何の心配もいらない。

 問題はドワーフ達の方だが、これも心配はない。時空の大精霊エレンソルやサンティラがドワーフ達を見張っているからだ。

 お陰でフレジョリーナは二つに分かれた聖剣を、空中に浮かべた。

 次に自分の羽根で傷つけた血の一滴を空中に浮かべた二つの片割れの接着剤として使うように、いとも簡単に、あっさりと修復してしまった。

 そして羽で空中の剣を無造作に掴むと、俺に渡す。

 俺は闇の魔力を込めた手で聖剣をへし折ったが、次の瞬間、二つに分かれた聖剣が宙に浮かんで磁石だっけ? 異世界市場で買ったオモチャの一つのように、お互いに呼応し、呼び合うようにしてすぐに元の聖剣に戻ってしまったのは俺も内心、ビックリだった。まさかここまで早く再生するとはね。

 一方、ドワーフ達の方は…予想通り、誰か親しい人でも亡くなったような感じで顔面蒼白だった。

 そりゃそうだろうな。修復だけならまだできたが、欲張って再生能力までもたせようとして議論にばかり時間を費やすからだよ。

 自業自得といえばそれまでだが、聖剣修復となるとかなりの難事だし、その記録も古くて解読に時間がかかったからな。

 その辺の努力は認めて、彼等の労をねぎらってやらないといけない。

 俺が指をパチン、と鳴らすと廊下にできた自在門が開かれて地竜代表のルペリオと長老達。水竜代表のアクリアと長老達がそれぞれ竜人の姿で純白のローブを着ながら廊下に現れた。

 合計して10人ほどか。それじゃーここは狭いから玉座の間に移動するかな。

 ここまでは大体予想通り。問題はドワーフと地竜、水竜が仲良くやっていけるか。それはこいつら次第だ。
 
 俺はエペラン、エレンソル、セレソロインといった時空の大精霊や時空魔法の達人のスライムに念話で指示を下してから、全員をドワーフ王ゴルガンがいつも座っている玉座の間に瞬間移動させた。

 ちなみにゴルガン王は玉座に座らせた形にしておいた。これならもう、面倒な事が起きてもドワーフとドラゴン両方に威厳をもって仲裁できるからな。

 幸いな事にドラゴンも誇り高い性格だし、ドワーフも過去に権力者に利用されそうになってこのゴルドニーア大陸に逃げてきた、結果的に地竜と水竜と似た者同士ということで、地竜、水竜の両方にはドワーフには優しく接するように言い含めてある。

 だけどなぁ…。一応ドワーフの連中にも俺が結界移動でこいつら全員を魔法で創造した都市の中に連れていって、幻影ではない事を確認させて、また元の地下都市まで結界移動で連れ帰ってから、俺が魔法で作った都市を吹き飛ばすという事を3回はやったから、俺の言う事には従うと思うんだが…。

 いくばくかの不安を胸に抱きながらも、俺は玉座の間に転移して目を丸くしている衛兵と王様、職人達に地竜の五名と水竜の五名を紹介していった。
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