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第322話 闇の獣人、残りの箱を開けまくってみる

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 四つ目の宝箱…それは120cmほどの杖だった。鑑定してみると「ランダム・シェイプチェンジャー」と出ました。

 鑑定文によると、相手を生者・死者・精霊など種族に関係なく変化させることができる杖だそうだ。

 ただこれが特定の相手に変化させることができず、完全にランダムで変化させるので、スライムがドラゴンになったり、逆にキマイラがゴブリンになったりと、敵を強くも弱くもできるというギャンブル要素の濃い杖だ。

 一応魔法結晶が杖の先端にあって、この輝きが鈍くなると魔力をチャージしないといけなくなるらしい。

 そして五つ目の宝箱。これも念動力のアビリティで持ち上げると、一抱えはある箱になりました。

 それで中身はというと…これも短めの杖だが、特定の相手に変えることができる杖だった。

 その名も「パーフェクト・ヒューマンチェンジャー」だそうだ。

 どうもこの杖は魔王が部下の魔族をお仕置きする為に作った杖のようで、これで変化させられた魔族は人間になってしまい、長くても100年しか生きられない上に、脆弱な肉体に弱い魔力と魔族にとってはまさに耐え難い屈辱を味わうしかない。

 そう。この杖は相手がどんな怪物や化け物、精霊であっても「人間」に変えてしまうのだ。それ以外の種族には変えることはできない。

 しかもこの杖…よく見るといろんなボタンがついている。これは変身させる人間の設定を細かく決めることができるようだった。

 つまり髪の毛の色、瞳の色、体型・体重、性別、魔力、膂力などといった細かい特徴を自在に決めることができるのだ。

 もっとも一つの特徴を決めて相手を変化させるのに、結構な量の魔力を使うので全部のボタンを操作できるのなんて俺か魔王か邪神くらいだろう。

 だがこの杖…使い方によっては不老長寿にも使える。

 対象の人間が老化してきた場合は、若い人間の姿に変えてしまえば老ボケや、肉体の老化、劣化などから逃れられる。

 この杖は老人を青年に変えることもできるし、美男美女をブスや不細工に変えることもできるので、使い方によっては相手に希望や絶望を与えられる魔道具でもある。

 これなら生まれながらの奇形児とか、頭が二つある人間とかにも効きそうだな。これはかなり使えそうだから、後で破壊された事を考えて、ヒョドリンに食わせて増やしておくか。

 ちなみにこの杖は完全に術者の魔力のみに頼るタイプなので、ボタンが光らなければ押しても効果なし。

 試しに俺が杖をもってみたら、全部のボタンがうっすらと光ったので問題なく使えるようだった。

 これも他のお宝同様に、闇の中の空間に収納しておく。

 六つ目の宝箱…これもでかい箱になったので、開けてみると…なんと大きな鍋でした…。俺一人ならすっぽり入れるほどの深さとでかさの大鍋ですよ…。

 しかも中に仕切りが入っていて十字型になっており、四つの料理が入るようになっている。

 覇王竜の叡智で鑑定してみると、どうもこの鍋には入れた料理が少しでも残っていたら、魔力を注ぎながら鍋を撫でていると、スープなら少しだけしか残っていなくても、魔力の量によっては鍋の八分までスープを復元させることができる。

 で、この仕切りを見ると一度に四つまでの料理を復元できるらしい。

 つまりこっちの十字型の右上の空間はカレーで、左上はチャーハン、右下がラーメン、左下がみそ汁といった感じだな。

 しかもこの鍋には永久化の効果も付与されているので、鍋に入れた料理とかが腐ることはない。

 つまり最大で四種類の料理を増やせるのか。それも一度に。

 うーん…俺にはヒョドリンがいるからなあ。でも街とか村が邪神の攻撃で食糧難になったらまずいので、やっぱり増やしておくか。

 畑とか荒らされたり、瘴気で畑が一時的に死ぬことは十分になるので、その間は食糧難になるからな。

 これも後で鍋を500個ほど増やしておくか。あんまり増やしすぎて長く使わせると誰も働かなくなるから、期間限定の貸し与えという形にしないと、村や街の住人が仕事しなくなるのでその辺りは厳しくこの鍋を管理しないと。

 七つ目の宝箱…これは、融合効果のある宝石だった。

 しかもこの宝石は修復機能を発揮させる宝石で、対象のアイテムや武器、防具、道具、家具、船舶などに押し当てて念じていると、宝石は対象の物質に溶け込んでいって劣化を防いで自然に修復させる機能が付くのだという。

 さらにこの宝石に魔力を込めていると、より早く自己修復できるのだという。

 最大で七色に光るまで魔力を込めると、邪神の本気を出した攻撃でない限りは傷一つつかない物質になるそうだ。

 これはいいなー。覇王竜の装備シリーズも俺の陰嚢と肉棒のセットを冥王様からもらった草刈り鎌で切り落としては、また次の瞬間に生えた陰嚢と肉棒を、それぞれ10本ずつ備えて進化させているけど、この宝石は融合させて対象の鎧や兜、盾、家具、船などを自然に回復させるのだから手入れとかしなくて済むので助かるね。

 うん、気に入ったこの宝石も後で増やしておかないとな。そして冒険者ギルドで寄付とかしたらきっと喜ばれるけど、逆を言えば鍛冶屋の仕事が減るから、本当に貴重なミスリル、オリハルコン、アダマンタイトなどの武具や防具だけ、という条件にして誓約書にサインさせないと駄目だな。

 そうでもしないと武具や防具の修復でお金を稼いでいる職人さん達の仕事を奪うことになってしまうからな。

 後は…何だこの八つ目の箱。何かシャルミリア局長(それも怒っている)に、かなり似た雰囲気を感じるな。

 それにやたらと小さい箱なのが不気味さに拍車をかけているよ。

 今までは宝箱から取り出したら本来の大きさの箱になるのに、これは一回り大きくなっただけだったからな。

 念の為にエネミーサーチやデンジャーサーチなどを箱にかけてみたが反応なし。

 そこで意を決して箱を開けてみたら何かの骨で出来た腕輪が入っていました。

 覇王竜の叡智で鑑定してみると…「レベルダウンのアビリティ付与の腕輪。本当に資格のある者が装備すると腕輪が砕けてそのアビリティが永久に資格ある者に付与される」

 と、あったのでこんな物騒なものを増やすわけにはいかないので早速装備。

 したら次の瞬間に右腕にはめた腕輪がパキーン! という音と共に砕けましたよ! すごくビックリした!

 あらかじめ鑑定文を読んでいたけどさ、装備するなり砕けるなんて反則だよ! 本当にビビったんだからな!

 それでこのアビリティを覇王竜の叡智で鑑定すると、やっぱり相手がアビリティ(異世界ではスキルとも言われているらしい)を悪用している連中を懲らしめる為に開発されたものなんだそうだ。

 レベルというとこの世界を含めた異世界の大半は魔物や敵を倒して強くなれるシステムの事だ。

 だが…世の中にはダンジョンに潜るのが面倒なあまりに山賊や盗賊といった犯罪者を殺しまくってお手軽にレベル上げをする連中がいる。

 それだけならあまり問題はない。山賊とか盗賊は大抵の場合は旅人とか旅の商人とか襲って殺して金品を奪っている連中のことだし。

 だが悪人を狩り尽くした場合はどうなるか?

 はい。もうおわかりかとは思うが、そういう場合は奴隷とか購入して事故に見せかけて(あるいは魔物に襲われたように見せかけて)殺しまくるんですな。あるいは冤罪着せたレベルの高い冒険者とかね。

 そういう連中は魔族にとっても厄介で、身体能力、魔力にも優れた彼等魔族を狙って襲い掛かってくるのだ。

 もしくは強力な魔物の棲家を狙って皆殺しにしようとする。その地域には魔物による食物連鎖があり、強力な魔物を殺しまくれば、弱小の魔物が溢れて生態系を乱すことになるのだが、彼等は暴虐無尽で己の欲望のままに殺し尽くしていく。

 さらに依頼の対象外の周辺地域に住んでいる住人達にもキマイラやマンティコア、フレイム・ベアなどの大型の魔物の遺体を見せて、守ってやったんだから金よこせと強盗まがいのことをする冒険者も過去にいたらしい。

 しかも強いから一個師団程度の軍では一筋縄ではいかない。そういう人間にとっても魔族にとっても有害な存在の名前だけの勇者パーティーという殺人鬼集団を何とかする為に生まれたのがこのレベルダウンのアビリティなんだそうだ。

 これはレベル上げを苦労してきた冒険者や兵士、戦士にとっては悪夢でしかない。

 だって今までのレベル上げの苦労による手間や資金と時間を全部、無にしてしまうんだからな。

 しかもこのレベルダウン…極めるとスキルレベル(俺の生まれた世界ではアビリティのレベル)さえも下げてしまうらしい。
 
 さらにスキルレベルを下げたまま上がらないように凍結させたり、スキルレベルを下げるのを極めたら、今度はスキルそのものを破壊して復活できなくなるようにしてしまえるということだ…。

 怖…い。いやー…あらかじめ永遠不変のアビリティをうんと上げて2万以上の神々の同意がないと俺のアビリティの変更とか削除とか、カットとかコピーとか破壊とかできないようにしておいてよかった。

 こういうのがあるからかなり前に俺のもっているアビリティの一切の変更をできなくしたんだけど、正解だったようだ。

 もちろん本当に悪人や悪魔でないと使えない。悪用なんてしたら罪と罰の女神ジランティス様にどんな目に遭わされるか…。
 
 九つ目の箱。これは不死鳥の腕輪だった。言ってみれば劣化版の覇王竜シリーズだな。

 もちろんこの腕輪を装備した所で発狂するわけじゃない。初代覇王竜のような光る精液を出せるわけじゃない。

 ただ…発狂しない代わりに…その、睡眠不要、飲食不要、入浴不要、排泄不要の四つの不要系のアビリティが付与されている上に状態異常無効化の機能もあるが、腕輪を外すと効果は消える。

 だが不死鳥の名を冠するだけあって、精力絶倫になっていくら射精しても肉棒は衰えないし、疲れない上に眠くもならないので、相手が大多数の軍勢とか締め切りが近づいている書類の仕事を何日も寝ないでやらないといけない限りは装備しない方がいい。

 もしくは未踏査の辺境の調査の為とかダンジョンに潜らないといけない時とか。毒蛇に噛まれた時に装備とかすれば毒は消えるので助かる。

 それに即死攻撃無効に、死んでも3回までなら自然蘇生可能とか強すぎだろ、これ。

 もっとも3回蘇生したら壊れちゃうようだけど、それでも便利すぎ。やっぱり最下層で出るお宝だけあるわ。

 でも壊れちゃうんならまたここに来て魔王退治しないといけないのはめんどいから、これも少し増やしておくかな。

 ただ悪用されないようにアナントスの前で誓約させないと。これは強すぎるから本当に選ばれた冒険者以外は与えられない。一時的にという条件でレンタルするしかないかも。

 十個目の宝箱。これは鍵が一個だけ入っていた。覇王竜の叡智で鑑定すると、「隠しボスキャラ20体の内の一体への挑戦権を示す鍵。もつだけで認められたことになる」

 と、出たので持って見たら鍵が光の粒子になって消えていった。これで俺が望めば隠しボスキャラへの部屋の扉がこのダンジョン内ならいつでも好きな時に出現して、その扉を開けることができるそうだ。

 その向こう側にはまた扉があって長い廊下になっていた。そして一番手前の右側の扉が光っていたが、今は覇王竜の装備シリーズも装着していないので、すぐに引き返しました。

 だって隠しボスって言葉を覇王竜の叡智で鑑定してみたら「地下2000階層にいるラスト・ボスの魔王に匹敵するかそれ以上の実力者達を示す言葉」と出たんだもん。

 いくら俺が強くなっていても、さすがに丸腰のまま挑むほど馬鹿じゃない。

 そりゃあ覇王竜の装備シリーズは外しても効果あるけどさ。いくらなんでも下着姿で戦いを挑むほどバトルジャンキーじゃないって。

 というわけで隠しボスは後回し。

 十一番目の宝箱。これはこのダンジョンの中をある程度進んで、一定の数の魔物を殺した者にのみ与えられるお宝で、スペシャル・ルームの一つに入れる権利を手にしたと証明するカードが入っていた。

 そのカードには金色に光る宝箱が描かれており、覇王竜の叡智で鑑定するとこのダンジョン内に21の隠し部屋があるのだという。中に何があるのかはランダムでお宝だけが置かれている時もあれば、魔物との戦闘や、他のダンジョンへの魔法陣、他の国への魔法陣が設置されている部屋もあるという。

 最後の十二番目の宝箱。中には黒い煙をボンボン出している、いかにも触ったら呪われそうな分厚い本が3冊も入っていた。

 いずれも禁呪・呪術・外道魔法の類いであって、魔族が好んで使いそうな…それこそ真っ当な人生を歩んでいる人には絶対に見せられないヤバイ術ばかりが載っていた。

 ただ救いがあったのは対象の体の一部を必要とする術が大半だったということだ。

 他に身代わりの人形とかの作り方とか、いろいろ細かく、しかも何通りもの方法があったし、精霊の支配の仕方とか亡霊の操縦法とか、いかにも呪術師や死霊術師が好みそうな内容で…ダークでヘビーなものばかりでした。

 こんなヤバくて殺しの方法ばかり載っている本、誰にも見せられねーよ! 

 だって対象を殺人鬼に変える呪法とか、同性愛好者にする呪法とか、呪いのアイテムの作り方とか、魔族を召喚して殺してその死体を材料にして上級ポーション作るとか、人間に興味をもたずに動物だけを愛して、恋敵と愛しい人を離す呪法とか…言って見れば人間のエゴというか欲望を叶える為なら手段は選ばない術者向けの本だが、こんな恐ろしい本は封印しておかないと。

 もちろん役に立つ情報もあったのかもしれないけど、三冊全部が黒い煙(おそらく瘴気)を発しているので、一冊を流し読み(それでも半分が限界だった)して後でじっくり読ませてもらおうかな。

 俺は瘴気を吸収できるし、覇王竜の装備シリーズは外していても効果あるのでこの程度の瘴気なら無問題。

 でも他の連中に触らせたら精神面で鬱とか狂暴化とかしそうなので、一応、増減効果300倍のリボンを両手足に装備してピュリファイの魔法を6000倍に増幅してかけたら、黒い煙が消滅した。

 それでも妙な存在感があるので、やっぱり危険だな。

 これでどうにか終わったな。最下層のラスト・ボスの宝だけあって、質も量もいろんな意味で最上級でした。

 でも調べ始めて一時間ちょっとしか経っていないのに、何だかすっごく疲れたな。

 とりあえず増やすものは後で増やすことにして、今までの宝は全部闇の中の空間に収納してから、俺はまたベッドに戻って寝ることにした。
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